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12 夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(5)
「大倉さんのお気遣いは嬉しいんですが、それはないですね……」
「気なんか遣ってないですよ。渋谷さんは美人だし、料理も上手だし、感じいいし、優しいし、ポジティブだし、そういう場所に行ったらモテるだろうと思っただけです」
苦笑いしていたカナコに、大倉が真面目な声で答える。
「あ、ありがとうございます、嬉しいです……。あの……、すみません、返事しちゃいますね」
「ええ、もちろんどうぞ。そういうのは早いほうがいいですからね」
急いでふたりに返信をしたカナコは、熱くなった頬を手で押さえる。
(いくら気を遣ってくれたからって、褒めすぎでしょ。ああもう、顔が熱い……!)
出会った時から、大倉は忖度することなく正直な気持ちを伝えてくる。
ということは、今のも気遣いにともなうお世辞というわけではない……と気づいたら、余計に面映ゆかった。
「そうだ、渋谷さん」
「あ、はい」
話題が変わりそうでホッとした。ここで気持ちの切り替えをすれば、もう大丈夫。そう思ったのに……。
「今日は社の人間やインフルエンサーが何人か来ると言いましたが、その人たちに渋谷さんのことを、俺の彼女だと紹介しますので、よろしくお願いします」
「わかりました。……って、ええっ!? か、彼女!?」
なんとなく返事をしてから気づき、大声を上げてしまった。
「俺、彼女いないんで。二年くらい」
「はっ、え、ええ、それはそうかなと思っていましたが……。いえ、彼女がいなさそうというのではなく、大倉さんは彼女がいたら私とこんなふうに出かけるような人じゃないと思っていて……」
今まで思っていたことを説明したかったのだが、あまりにもサラッと言われて、カナコのほうがあたふたしてしまう。
「俺、彼女がいてもいなくても、女性とアウトドア系で出かけることはないんですよ。仕事は別ですけど」
「え……」
「自分の領域に入られるのが、ちょっと……。彼女でも無理ですね」
カナコの頭にハテナがたくさん浮かぶ。
女性と一緒にアウトドア系で出かけたりしない? 彼女でも無理? では今までカナコと出かけていたのは、いったい……?
「あの……私、一応、女なんですが……」
「知ってますよ?」
何を言っているんだというふうに返事をされて、カナコの頭はますます混乱する。
「それなら、私とアウトドア系で出かけるのも無理ということでは……」
「無理じゃないですね。渋谷さんとはむしろ、一緒に出かけたいです」
即答する大倉の横顔は、いつも通り淡々としていた。ここでカナコは「そうか!」と、ひらめく。
「それは大倉さんと私が師弟関係だからですね。弟子に女性は関係ないという――」
「違うと思います」
カナコのひらめきは、言葉の途中できっぱりと否定された。
「違いますが……、なんなんでしょうね。俺にもわかりません」
「そうですか……」
本人にわからないと言われては、これ以上何も聞けない。
「ということで、今から練習です」
「なんの練習でしょう?」
「俺の彼女になってもらう練習です。イヤかもしれませんが、今日一日だけお願いできませんか?」
なぜそんなことを、と尋ねようと思ったが、やめた。大倉がここまで言うのなら相当な理由があるのだろう。
彼はいつもこうして、カナコを車に乗せて連れ出してくれる。
運転してもらう代わりにガソリン代や高速代を出させてくれと言っても「経費で落ちますから」と断られる。今日も同じだ。
そして普段からイヤな顔一つせずに、いつでもカナコの初心者な質問に答えてくれ、丁寧に教えてくれるのだ。
そんな彼に恩返しできる機会がきたのだから、喜んで受けるべきである。それが突拍子もない提案だったとしても。
「気なんか遣ってないですよ。渋谷さんは美人だし、料理も上手だし、感じいいし、優しいし、ポジティブだし、そういう場所に行ったらモテるだろうと思っただけです」
苦笑いしていたカナコに、大倉が真面目な声で答える。
「あ、ありがとうございます、嬉しいです……。あの……、すみません、返事しちゃいますね」
「ええ、もちろんどうぞ。そういうのは早いほうがいいですからね」
急いでふたりに返信をしたカナコは、熱くなった頬を手で押さえる。
(いくら気を遣ってくれたからって、褒めすぎでしょ。ああもう、顔が熱い……!)
出会った時から、大倉は忖度することなく正直な気持ちを伝えてくる。
ということは、今のも気遣いにともなうお世辞というわけではない……と気づいたら、余計に面映ゆかった。
「そうだ、渋谷さん」
「あ、はい」
話題が変わりそうでホッとした。ここで気持ちの切り替えをすれば、もう大丈夫。そう思ったのに……。
「今日は社の人間やインフルエンサーが何人か来ると言いましたが、その人たちに渋谷さんのことを、俺の彼女だと紹介しますので、よろしくお願いします」
「わかりました。……って、ええっ!? か、彼女!?」
なんとなく返事をしてから気づき、大声を上げてしまった。
「俺、彼女いないんで。二年くらい」
「はっ、え、ええ、それはそうかなと思っていましたが……。いえ、彼女がいなさそうというのではなく、大倉さんは彼女がいたら私とこんなふうに出かけるような人じゃないと思っていて……」
今まで思っていたことを説明したかったのだが、あまりにもサラッと言われて、カナコのほうがあたふたしてしまう。
「俺、彼女がいてもいなくても、女性とアウトドア系で出かけることはないんですよ。仕事は別ですけど」
「え……」
「自分の領域に入られるのが、ちょっと……。彼女でも無理ですね」
カナコの頭にハテナがたくさん浮かぶ。
女性と一緒にアウトドア系で出かけたりしない? 彼女でも無理? では今までカナコと出かけていたのは、いったい……?
「あの……私、一応、女なんですが……」
「知ってますよ?」
何を言っているんだというふうに返事をされて、カナコの頭はますます混乱する。
「それなら、私とアウトドア系で出かけるのも無理ということでは……」
「無理じゃないですね。渋谷さんとはむしろ、一緒に出かけたいです」
即答する大倉の横顔は、いつも通り淡々としていた。ここでカナコは「そうか!」と、ひらめく。
「それは大倉さんと私が師弟関係だからですね。弟子に女性は関係ないという――」
「違うと思います」
カナコのひらめきは、言葉の途中できっぱりと否定された。
「違いますが……、なんなんでしょうね。俺にもわかりません」
「そうですか……」
本人にわからないと言われては、これ以上何も聞けない。
「ということで、今から練習です」
「なんの練習でしょう?」
「俺の彼女になってもらう練習です。イヤかもしれませんが、今日一日だけお願いできませんか?」
なぜそんなことを、と尋ねようと思ったが、やめた。大倉がここまで言うのなら相当な理由があるのだろう。
彼はいつもこうして、カナコを車に乗せて連れ出してくれる。
運転してもらう代わりにガソリン代や高速代を出させてくれと言っても「経費で落ちますから」と断られる。今日も同じだ。
そして普段からイヤな顔一つせずに、いつでもカナコの初心者な質問に答えてくれ、丁寧に教えてくれるのだ。
そんな彼に恩返しできる機会がきたのだから、喜んで受けるべきである。それが突拍子もない提案だったとしても。
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