アラサー☆ピクニック ~婚活とソトメシと年下男子と~

葉嶋ナノハ

文字の大きさ
57 / 74

12 夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(9)

「……え」

「ええーーーっ!!!」

 他の社員からも驚きの声が上がるが、大倉は淡々と続けた。

「彼女連れはダメでしたっけ?」

「いやいやいや、いいに決まってるだろ! 彼女さんでしたか……! こちらこそよろしくお願いします……!」

 男性はカナコに深々とお辞儀をする。

「渋谷さん、よろしくお願いします! 大倉くんにこんな素敵な彼女さんがいたなんて~! 秘密主義者だと思ってたのにやるわねぇ」

 女性も満面の笑みでカナコに言った。周りの社員たちも、女性に同意してうなずいている。

「こちらこそよろしくお願いします。あの、良かったらこれ、皆さんでどうぞ」

 本当の彼女ではないのにここまで歓迎されて、カナコは心苦しく思いながら、笑顔で手土産を差し出した。

「いいんですか!? ありがとうございます!!」

「これ、食べてみたかったチーズだ!」

「このララスクも気になってたのよ! 可愛いんだよね! 渋谷さん、ありがとうございます!」

 全員、喜びのリアクションが大きく、カナコも嬉しい気持ちでいっぱいになった……のだが。

「嘘でしょ……、ナギサくんの彼女?」

「匂わせも一切なかったのに……信じられない」

 カナコのすぐ後ろから、先ほどのインフルエンサー女子たちの小声が届いた。

(いつの間に後ろに? こわ~……、いけど、本当は違うんですなんて言えないし……。というか、大倉さんに聞こえてないよね?)

 カナコより一歩前に出た大倉を見ると、たぶん聞こえていないようでホッとする。

「準備手伝いますよ。あとは何したらいいですか?」

「もうほとんど終わってるから大丈夫よ。というか、T社さんとB出版さんがほぼ準備して待っていてくださったから、助かっちゃったの」

「そうでしたか」

 今日はアウトドア食品メーカーとのコラボで、雑誌社も入っている。大倉が言った「撮影」は、雑誌に載せるためのものだろう。

「うん、だから彼女さんとゆっくりしてて」

 女性はカナコを見て、「ね?」と優しく笑った。

「ありがとうございます。じゃお言葉に甘えて、ちょっと挨拶回りしてきますね。俺が知らないギアがたくさんあったので、気になっちゃって」

「どうぞどうぞ。行ってらっしゃーい」

「行こう、カナコ」

「はい」

 まず、コラボをする食品メーカーと雑誌社に挨拶をしに行く。
 どちらも明るい人たちでノリも良く、大倉のことも知っているようだった。
 カナコにアウトドアで便利に使える食品を見せてくれ、たくさん食べましょうと言ってくれる。

「どれも美味しそうね」

「ああ。俺も普段から使わせてもらってるんだけど、今日は新商品の紹介がたくさんあるから楽しみなんだ。あとは社長からの差し入れで、極上の和牛が入ってる予定だよ」

「極上の和牛!?」

「ははっ、カナコの顔、輝きすぎ……!」

 大倉が声を上げて笑うと、そばにいた男性が驚いた顔で声をかけてくる。

「大倉くんが大笑いしてるの、初めて見ましたよ……!」

「え……、そうなんですか?」

「打ち合わせの時にみんなで盛り上がってても、クスッと笑うぐらいしか見たことないです」

 アウトドア食品メーカーの男性がスパイスの瓶を持ったまま、大倉を見て驚いていた。

「俺だって人間なんだから楽しければ笑いますよ。だから今、すごく楽しかったってことですね」

「ほうほう、なるほど。彼女さんの力はすごいなぁ……!」

「ですね」

 男性の言葉にニヤッと笑った大倉が、カナコを見下ろした。

「カナコといると楽しいから」

「あ、ありがとう。私も凪沙といると楽しいな」

「ありがと」

 笑った凪沙に手を取られ、ぎゅっと強く握られる。とたん、カナコの顔がかっと熱くなった。

(これは演技なんだから、いちいちドギマギしないの!)

「はいはい、ごちそうさま。彼女さん、美味しいの作るんで、たくさん食べてくださいね~」
感想 0

あなたにおすすめの小説

170センチの彼女がヒールを履かない理由 ―20年前のラークと、今の密会―

まさき
恋愛
二十年前、深夜のコンビニ事務所。 俺は、オーナーの娘である「彼女」に恋をしていた。 ​身長170センチ。いつも底の平らな靴を履き、ラークを吸う一歳上の彼女。 176センチある俺は、その「6センチの差」だけを自負に、彼女の隣に立っていた。 贈ったのは、色気のない「実用品」。 防犯カメラの死角で交わした、一度きりのキス。 ​「もう会うことはない」――そう思って街を出てから二十年。 ​再会した彼女の指には、指輪があった。 かつての憧れは、二十年の時を経て、誰にも言えない「不倫」という名の毒に変わる。 ​176センチの俺が、20年かけて170センチの彼女に溺れていく、背徳の再愛物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

幼なじみは今日も私を抱きしめたまま

由香
恋愛
主人公・美月の幼なじみ、陽斗は距離が近すぎる。 家では当たり前のように後ろから抱きしめてきて、 頬をすり寄せる。 学校では肩に顎を乗せ、退屈そうにほっぺをつつく。 「このほっぺ好き」 「意味わかんないんだけど…」 幼い頃からずっと一緒だったせいで、美月はこの距離に慣れてしまっていた。 けれど文化祭の日。 「美月、他の男に触らせないで」 幼なじみの静かな独占欲が、ついに本気を見せる。 これは―― 距離ゼロの幼なじみが、恋人になるまでの甘すぎる物語。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】見えてますよ!

ユユ
恋愛
“何故” 私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。 美少女でもなければ醜くもなく。 優秀でもなければ出来損ないでもなく。 高貴でも無ければ下位貴族でもない。 富豪でなければ貧乏でもない。 中の中。 自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。 唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。 そしてあの言葉が聞こえてくる。 見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。 私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。 ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。 ★注意★ ・閑話にはR18要素を含みます。  読まなくても大丈夫です。 ・作り話です。 ・合わない方はご退出願います。 ・完結しています。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!