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12 夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(10)
「ありがとうございます。いただきます」
カナコが挨拶をすると、大倉は「またのちほど」と言って手を握ったまま別の場所に向かったのだが……。
「ナギサくん、ちょっといいですか?」
「私も、連絡先の交換がしたくて――」
先ほどの女性インフルエンサーたちに囲まれた。
カナコが大倉の彼女だと知っても、積極的に大倉と連絡先を交換しようとしてきたが、彼はきっぱり拒否をする。
それどころか、男性のインフルエンサーたちにばかり声をかけ、カナコを彼女だと紹介して回った。
彼らはスペースを作り、それぞれコラボ商品を使った料理を披露する予定のようだ。
「このエアソファ、イカツイですね~。すごいカッコいいんですけど、ひとりで設置したんですか?」
「ああ、うん。電動ポンプ内蔵型なんだけど、瞬時に膨らむからそんなに大変じゃないんだ。大きいけどかなり軽くて――」
大倉は相手のギアに興味を持ち、さらに褒めまくるので、質問されたほうは気持ち良く答えていた。大倉はその話を楽しそうに聞いて、その場でSNSをフォローする。
こんな感じで、お互いの気になっているギアの話で盛り上がったり、初心者のカナコにオススメのピクニックレシピを男性たちに聞いたりと、女性たちの取り付く島もない様子を目の当たりにする。
(大倉さん、自分に正直なのもあるんだろうけど、変な噂を流されたくないんだろうな。それはそうよね)
若いのだからモテることに優越感を持って女性に接してもおかしくないのに、あえて近寄らせないようにしている。そんな大倉を、カナコは感心と尊敬の気持ちで見つめた。
「ん?」
「ううん、なんでも。凪沙って……いいね」
「え、それって――」
「じゃあそろそろ撮影始めまーす! いったんこちらに集まってくださーい」
大きな声が届き、会話はそこで途切れた。
大倉とともに撮影場所に戻る。全員が集まったところで、企画担当者の説明が始まった。
「今日はお集まりいただき、ありがとうございます。まだSANAさんがいらしてないんですが、もうすぐ到着するので先に始めてくださいと連絡が入りましたので、撮影を開始します」
「SANAさん妊婦だけどアクティブだよねぇ。旦那さんが一緒に来てくれるみたいだけど」
「旦那さんが来てくれるなら安心だね。奥さんの活動に協力的な旦那さん、羨ましい~」
女性たちが口々に「SANA」のことを言い始めたが……、有名なインフルエンサーなのだろうか。
(妊娠していてもここまで来たいくらい、アウトドアに熱心な女性なのね。その人がどういう活動をするのか、しっかり見て勉強しなくては)
彼女らが言うように、妻に協力的な夫は理想的だと思う。
(結婚となったら、やっぱり妻のやることに理解がある人がいいわよねぇ……)
元カレにすべてを否定され、婚活オフ会でもソロピクを否定されたカナコには、届かない夢のような気がしてきた。
(そういう女性になれるよう、旦那さんに対するSANAさんの様子も参考にさせてもらわないと)
「ではまず、うちの食品の紹介から撮影しますので、その間にみなさんは準備を始めていてください。飲み物は十分用意してありますので、熱中症には十分注意して――」
「すみませ~ん! 遅くなっちゃいましたぁ~~!」
女性の大きな声が届き、そこにいた全員がそちらを向いた。もちろん、大倉とカナコも。
「来た来た! SANAさん、ちょうど今始まったばかりだから、大丈夫ですよ~!」
大倉の先輩がそちらへ歩きながら声を掛ける。
「良かったぁ~。途中のサービスエリアでゆっくりしちゃって。つわりが終わったら、お腹空くのが早くてドーナツ食べてたんですよ。旦那くんも一緒だから調子に乗っちゃった」
「はじめまして! SANAの夫です、今日はお邪魔します!」
大倉の先輩と現われた夫婦の会話が続く。
カナコはその光景に、言葉を失った。
カナコが挨拶をすると、大倉は「またのちほど」と言って手を握ったまま別の場所に向かったのだが……。
「ナギサくん、ちょっといいですか?」
「私も、連絡先の交換がしたくて――」
先ほどの女性インフルエンサーたちに囲まれた。
カナコが大倉の彼女だと知っても、積極的に大倉と連絡先を交換しようとしてきたが、彼はきっぱり拒否をする。
それどころか、男性のインフルエンサーたちにばかり声をかけ、カナコを彼女だと紹介して回った。
彼らはスペースを作り、それぞれコラボ商品を使った料理を披露する予定のようだ。
「このエアソファ、イカツイですね~。すごいカッコいいんですけど、ひとりで設置したんですか?」
「ああ、うん。電動ポンプ内蔵型なんだけど、瞬時に膨らむからそんなに大変じゃないんだ。大きいけどかなり軽くて――」
大倉は相手のギアに興味を持ち、さらに褒めまくるので、質問されたほうは気持ち良く答えていた。大倉はその話を楽しそうに聞いて、その場でSNSをフォローする。
こんな感じで、お互いの気になっているギアの話で盛り上がったり、初心者のカナコにオススメのピクニックレシピを男性たちに聞いたりと、女性たちの取り付く島もない様子を目の当たりにする。
(大倉さん、自分に正直なのもあるんだろうけど、変な噂を流されたくないんだろうな。それはそうよね)
若いのだからモテることに優越感を持って女性に接してもおかしくないのに、あえて近寄らせないようにしている。そんな大倉を、カナコは感心と尊敬の気持ちで見つめた。
「ん?」
「ううん、なんでも。凪沙って……いいね」
「え、それって――」
「じゃあそろそろ撮影始めまーす! いったんこちらに集まってくださーい」
大きな声が届き、会話はそこで途切れた。
大倉とともに撮影場所に戻る。全員が集まったところで、企画担当者の説明が始まった。
「今日はお集まりいただき、ありがとうございます。まだSANAさんがいらしてないんですが、もうすぐ到着するので先に始めてくださいと連絡が入りましたので、撮影を開始します」
「SANAさん妊婦だけどアクティブだよねぇ。旦那さんが一緒に来てくれるみたいだけど」
「旦那さんが来てくれるなら安心だね。奥さんの活動に協力的な旦那さん、羨ましい~」
女性たちが口々に「SANA」のことを言い始めたが……、有名なインフルエンサーなのだろうか。
(妊娠していてもここまで来たいくらい、アウトドアに熱心な女性なのね。その人がどういう活動をするのか、しっかり見て勉強しなくては)
彼女らが言うように、妻に協力的な夫は理想的だと思う。
(結婚となったら、やっぱり妻のやることに理解がある人がいいわよねぇ……)
元カレにすべてを否定され、婚活オフ会でもソロピクを否定されたカナコには、届かない夢のような気がしてきた。
(そういう女性になれるよう、旦那さんに対するSANAさんの様子も参考にさせてもらわないと)
「ではまず、うちの食品の紹介から撮影しますので、その間にみなさんは準備を始めていてください。飲み物は十分用意してありますので、熱中症には十分注意して――」
「すみませ~ん! 遅くなっちゃいましたぁ~~!」
女性の大きな声が届き、そこにいた全員がそちらを向いた。もちろん、大倉とカナコも。
「来た来た! SANAさん、ちょうど今始まったばかりだから、大丈夫ですよ~!」
大倉の先輩がそちらへ歩きながら声を掛ける。
「良かったぁ~。途中のサービスエリアでゆっくりしちゃって。つわりが終わったら、お腹空くのが早くてドーナツ食べてたんですよ。旦那くんも一緒だから調子に乗っちゃった」
「はじめまして! SANAの夫です、今日はお邪魔します!」
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カナコはその光景に、言葉を失った。
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