よるのまちのメヌエット、植物園襲撃~

ふし文人

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第4章

まさかあの世ちゃうやんな、とうちは思った。

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 せせらぎの音がさっきよりも増してくる。まさかあの世ちゃうやんな、とうちは思った。でも月光が再び顔を出したおかげで、ここがこの世やと認識できた。山は山々としており、川は川々としており、うちはその中で静々と佇む動物の一人やった。もっと言うと、町々とした町子や。目をこらすと、人影が動く。うちは五右衛門を探した。何人かは倒れた音がした気がしたけど、月光とともに消え去った。
「五右衛門?」うちは口に出してみる。でも返事はない。もしかしてやられてしまったんやろうか。うちを守るために死んでしまったんやろうか。
「そんなはずない。」だって五右衛門はうちの守護霊やで、死ぬわけない。
「町子殿。」という声が聞こえた。うちが振り向くと暗闇の中、五右衛門は川の真ん中に立っていた。そして刀を川の中につけている。
「大丈夫?」とうちは聞いたけど、無敵の五右衛門は微笑むこともせずに立ち尽くしている。ちょっと格好いいぜ、とうちは思ってしまう。
「刀についた血を。」流してると、やけに冷静に言う五右衛門が愛おしかった。
「すごい強いんやね。」とうちは褒めるつもりで言った。でも五右衛門はニコリともせず、首を振った。
「拙者が強いのではござらん。この場所は聖地に近いゆえ。」と彼は言いかけて、やめた。なんで途中でやめるねん、聖地ってなんやねん。貴船神社のこと?とうちが聞こうとしたら、横で声がした。
「大丈夫ですか。」という女の声。
「ええ。」とうちは少しびっくりしながら答える。
「声が聞こえたもので。あたしは貴船の者です。」と彼女は言った。
「ああ、巫女さん。はぁ。」とうちはようやく安心して、大きなため息をついた。
「どうやら、霊的なものがざわめく夜のようです。」と巫女さんは詩的におっしゃる。
「あ、そうなんですね。」とうちは希望の光に向かって言った。
「そこのお侍さんも大変なようで。」と彼女が言った。
「やっぱり五右衛門のことが見えるんですか。」とうちが聞くと、彼女は首を振った。
「いえ、見えません。感じるのです。」と巫女さんは言った。まるでスターウォーズみたい、ってうちは思ったけどそれは言わんかった。
「あの、ここに来たのはこのお侍さんのことで。」とうちは言いかけて、五右衛門を呼ぼうとした。しかし五右衛門はその場所からすでに消えていた。あれ?
「あたしに警戒したのでしょう。姿をくらましましたね。」と巫女さんは言った。うちはうなずく。せせらぎには再び月光が反射して、山の動植物たちの眠りを妨げているようや。

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