よるのまちのメヌエット、植物園襲撃~

ふし文人

文字の大きさ
55 / 80
第4章

「月の中にすべて答えがある、ということです。」と女性は説明してくれる。

しおりを挟む

 月を読むとはどういうことやろ、とうちが考えてると、白い女性は立ち上がった。
「月の中にすべて答えがある、ということです。」と女性は説明してくれる。
「答え。」とうちはそれを反芻するように繰り返す。
「そう。特に過去との関係。」と女性は言って、うちの肩に手を置いた。
「過去。」うちは下から女性を見上げながら言う。
「ええ。」と彼女は言って、うちの手を取る。彼女と一緒に立ち上がって、うちは祭壇のようなところに連れて行かれる。そこではすでに先ほどの巫女さんが、何やら用意をしてはる。
「横たわってください。」と女性が言うので、うちはそれに従う。そういやお金とか払ってへんけどええんかな、とかいう雑念を払いながら。
「冷たい。」うちは思わず口走る。床暖房が効いてるわけなく、夜の山は思った以上に寒い。
「少し我慢して下さい。」と女性は言って、祈とうを始める。白い棒みたいなのを振って。うちは床に寝ころびながら、じっとしている。すると先ほどの巫女さんが、祭壇の上にするりと上がった。横目でそれを見ながら、うちは何をするんやろうと考える。そしたら巫女さんは、白い袴をごく自然に下に落とした。薄暗い中、月の光ではっきりと彼女の裸体が浮かぶ。そう、巫女さんは下に何も着てへん。つまりすっぽんぽんや。えーと内心ではすごく驚きながら、横では女性が祈とうしてはるし、何も言えへん。巫女さんはその祈とうに合わせるように、裸で踊り出した。結構寒いんちゃうの、とかうちは余計な心配をする。それよりその女性は細くてスリムで、うちが羨む美しい体をしてはる。胸はそんなにないけど、それがまた踊りをするには最適な体やったりする。普段から鍛えてはるんやろうなーとか考えていると、手元のリスが動き出した。
「あ、ちょっと。」と小声で言ったけど、リスはするするとうちの手を抜け出した。そして巫女さんの踊ってる祭壇のほうに行ってしまう。わーまずい。うちはどうかしようと思ったけど、動くわけにはいかへん。というより、動けへん。動こうにも。まるで金縛りにあったみたいに動けへんねん。ただ見ることはできる。リスは祭壇に上がると、巫女さんの踊る足元へと行った。どうなるんやろ、とうちが見てると、巫女さんはリスを手に取った。そしてリスを持ったまま、より激しく踊り出した。まるで夢みたいやとうちは思う。これは全部夢なんちゃうやろか。五右衛門もリスも、巫女さんも侍たちも、全部夢にちがいない。それやったらすべて説明がつく。夢オチや、そうに違いない。
「夢ではありません。」と突然、低い声で女性神主さんが言った。
「え?」と思わずうちは聞き返す。
「あのリスが、すべてを呼び込んでいます。」と女性はつぶやいた。
「リスが?」うちは動けないまま、向こうで裸の巫女さんに抱かれているリスを見る。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...