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第6章
うちらは京阪電車に乗って、のんびりと宇治に向かった。
しおりを挟むうちらは京阪電車に乗って、のんびりと宇治に向かった。
「ほんまええやん。」ゆっくり走る電車は中書島まで来る。
「向こうが宇治川でござるな。」五右衛門が悠長に言う。
「あれ、もしかして乗り換えかな。」うちが言うとともに、アナウンスが宇治線への乗り換えの案内をしてる。
「なんか言ってござる。」昼間にかかわらず侍の恰好やけど、誰も何も気づかへんのはさすが京都やわ。
「乗り換えや。」うちはリスと五右衛門を伴って、宇治線へと乗り換えた。そして列車はガタゴトと再び宇治川沿いを走っていく。
「よい眺めでござる。」などと、のんびり五右衛門さんは言ってはる。もうちょっとで戦いが始まるんやで。うちは気が気でない。
「ま、場所に着いたら五右衛門が戦ってくれるよな。」と頼りになるのはこの五右衛門だけやねんから、しっかりしておくれやす。
「なんの話しでござる?」と一向に戦闘モードにならへん五右衛門殿。そうこうしてる間に宇治駅に到着する。
「あれ、なんやろ。」何かが宇治川に浮いてる。
「どうやら女の子でございますな。」五右衛門は相変わらずの冷静さ。
「ちょっと、助けて。助けてあげなあかんやん。」流されていく女の子を追いながらうちは言う。
「拙者泳げないでござる。」と五右衛門はあっけらかんと言った。
「アホか。」そう言うが早いか、うちは宇治川に飛び込んだ。もちろんリスだけは地面に置いて。
「町子殿。」と五右衛門の声が後ろから聞こえてくる。
「待って、うちだって昔スイミング習ってたけど十級やから。」とはいえ、うちは必死にクロールする。
「ゆっくり、ゆっくり流れに身をまかせて。」という声がすぐそこから聞こえてくる。なんか懐かしい声?
「天狗さん。」うちは振り返るけど、そこにいたのは何と河童やった。
「はろー。」と外来語を口走りながら、河童はうちの横を流れてる。
「あの子、助けて。」うちは咄嗟に河童に頼んだ。
「これぞ河童の川流れ。」などと河童は言って、緑の皿をサラっと叩いた。
「服が重くて、沈むし。」うちは濡れて体が重くなるのを感じる。
「しっかり体を起こして。」河童なのか誰なのかの声がする。だけどうちは水知らずの水の中へと落ちていく。
「あかん。」そう口に出すのがやっとや。せっかく天狗や河童にも会えたのに。それが嬉しいのかもわからんけど、彼らに会ったことを後で静に報告しよう。静は何て言うやろ、笑うかな。そっか、さっき伏見稲荷やったから深草の実家に帰ったらよかった。なんで気づかんかったんやろ。そしたら静もお母さんもお父さんも、みんな達者でいるはずやのに。うちはなんで一人でこんなところに行こうなんて思ったんやろ。みんなの言うことちゃんと聞いていい子にしてたら、こんなひどい目にもあわんかったのに。花見を抜け出したりして、アホやった。ほんまにうちはアホやったわ。
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