勇者パーティーから追放された最弱の俺は、20年間引きこもりました。え? 今の俺? 最強武闘家となり、トーナメント連勝でワクワク爆進中ですが?

武志

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第27話 サユリ、謎の美少女武闘家。そしてミランダの正体は

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 ゲルドン杯格闘トーナメントの1回戦が、小体育館で続けられている。

 リング上では、俺の試合に続く、今日の第2試合が行われていた。

「どおりゃあーっ!」

 元気の良い気合一閃きあいいっせん、エルフ族のローフェンの試合だ。俺──ゼントは、ローフェンのセコンドとなり、リング下で彼の闘いぶりを見守っていた。

 シュバッ

「ぐへ」

 ローフェンの素早い横蹴りが、相手に当たった。

 相手はドワーフ族のマドール・グスターボ。

 身長は170センチ前後だが、体がまるで箱のように分厚い武闘家ぶとうかだ。

「のやろおお~!」

 グスターボは怒り狂って、猛獣もうじゅうのような声を上げる。グスターボの風貌ふうぼうも、ひげ面で猛獣もうじゅうのようだが……。

 不器用ながら、力強いハンマーパンチを、上から振り下ろしてくる。
 しかし、ローフェンはそれをかいくぐり──。

 ガスッ

 上段蹴り! グスターボを一発KOだ!

「見たかあっ! ゼントォッ!」

 ローフェンは、リング上からセコンドの俺を指差して、アピールする。ローフェンはリング下に下り立った後も、俺に言った。

「おい、俺の見事で華麗かれいなハイキックを見たかよ。な? すごかったろ?」
「わかったわかった」

 まったく、子どもかよ、こいつは……。
 俺は苦笑いした。しかし、ローフェンは強い。
 エルフ族は、魔法能力が素早い剣技が得意だとは聞いていた。しかしローフェンは格闘術で、華麗かれいで力強い蹴りを繰り出せるようだ。

「ゼントさん」

 ん? 後ろで女の子の声がしたな? 俺とローフェンは振り返った。

「私と一緒に帰りましょう」

 は?

 俺は目を丸くした。俺の後ろには、16歳くらいの女の子が立っていた。
 黒髪で前髪ぱっつん、ロングヘア……。

 うわっ……かわいい……。美少女だ!

 ん? この女の子、武闘ぶとうグローブを手にはめているぞ。何と、この子、武闘家ぶとうかか! トーナメント出場選手だ!

「ね、一緒に故郷に帰りましょう」

 女の子は、俺の手を握る。お、おわあああ~! 何だ? 夢か?

「おいおいおいおいおい!」

 ローフェンがすかさず、俺にツッコミを入れる。

「いつ、こんなかわいい女の子をナンパしたんだ! お前!」

 いや、ナンパなんてしている余裕ないぞ。お前じゃないんだから、ローフェン。

「そ、それより、君は誰?」

 俺は女の子に聞いた。

「サユリ……。サユリ・タナカと申します」
「サユリ……」

 俺はその名前を心の中で復唱ふくしょうした。何だか不思議な名前だ。懐かしいような、聞いたことがあるような、ないような。

「では、私は試合がありますので」

 サユリはそのまま、武闘ぶとうリングの方に行ってしまった。本当に、トーナメント出場選手だったのか!

 あのサユリって子、不思議なユニフォームを着ているなあ。
 白い民族衣装のような服。そして下にはズボンのような、スカートのような、幅広はばひろの不思議な黒いズボンを穿いている。

「あれは、はかまというものよ。東の果ての国、ジパンダルの民族衣装のようなものね」

 横から、ミランダさんが俺に話しかけてきた。試合、観ててくれたのか。
 でも、ジパンダル? どこかで聞いたな。
 サユリって子が言ってた「故郷」って、そのジパンダルって国のことなのか?

「おっ、おい。見ろ、あの女性」
「あの人……ミランダ・レーンじゃないのか?」

 ん? いつの間にか俺たちの周りに人だかりができている。
 さっきのサユリも気になるけど、何だか周囲が騒がしくなってしまったぞ?

 パシャパシャパシャ
 何と、雑誌記者たちも集まってきて、ミランダさんの魔導写真まどうしゃしんを撮り始めた!

「ミランダさん! どうして急に、表舞台に出られることにしたのですか?」
「あなたの『ミランダ武闘家ぶとうか養成所』、有望選手はいるんですか?」
「ミランダさん、インタビューさせてください! 何か一言!」

 雑誌記者たちは、ミランダさんに魔導収音機まどうしゅうおんき(注・マイクのような魔道具。言葉を記録する魔力が込められている)をつきつけている。
 どういうことだ? ミランダさんって、何者なんだ?

「ゼント! お前、今さら、何驚いた顔をしてんだよっ」

 ローフェンが俺に声をかけてきた。

「お、お前、まさか……。ミランダ先生が、女子武闘家ぶとうか唯一の、世界武闘ぶとう選手権三連覇の『ミランダ・レーン』って知らなかった……なんてことはないよな?」

 ん? ミランダ・レーン?
 俺が引きこもるちょっと前──20年前。
 伝説的強さをほこった、「ミランダ・レーン」という女子武闘家ぶとうかがいることは、もちろん知っていた。
 新聞には毎日、ミランダ・レーンの特集が組まれ、まさに国民的スターだったけど……。

「そ、そのミランダ・レーンが、ミランダさん……?」
「あったり前だろが! 国民的スターだぞ、ミランダ先生は!」
「マジか!」

 いや、全然気づかなかった。ミランダなんて、ありふれた名前だもんな。

「ゼント……トンマなヤツだな、おめぇは。一緒の村にいて、2ヶ月も気付かないなんて」

 ローフェンが額に手をやって呆れている。そのミランダさんは、雑誌記者たちに向かって、「今、いそがしいのよ」と笑って対応している。

 世界武闘ぶとう選手権三連覇──。ミランダさんに、「この人には絶対逆らえそうにない」と感じたのは、不思議じゃなかったってことか。

 

 さて──この後、俺たちは驚愕きょうがくの試合を観ることになる!

 それはさっきの美少女武闘家ぶとうか、サユリの試合だった──。
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