僕はレイジ。武闘家養成学校から追放された。その後、王国学生最強の武闘家となり、リアルファイトで爆勝連発、ドキドキ学園生活を送っています。

武志

文字の大きさ
12 / 41

第12話 レイジVSベクター①

しおりを挟む
 僕の対戦相手、ベクターは、僕のにくき叔父──ドーソン・ルーゼントの息子だった。
 彼はリング上で言った。

「僕はこの学院の寮にいて、父には最近、会っていないけどね。父が昨日の夜、珍しく魔導通信まどうつうしんで、僕に連絡をとってきたからさ。レイジ君、君、父と会ったんだって?」
「ベクター、君は、ドーソン叔父さんの息子だったのか!」
「そうだ。だが、母と父──ドーソン・ルーゼントは君と住む前に離婚しているからね。子どもの頃、君とはそんなに会うことはなかったな。ちなみに、母はエルフ族だ。僕は人間とエルフのハーフだよ」

 そういえば僕と子どもの頃、何回か叔父さんの息子と庭で会ったことがある。それがベクターか。そういえば、面影おもかげがあるような。
 ドーソン叔父さんには、おととい、散々悪態をつかれた。その息子、ベクター。どんな人間なのか、察しがつく。喋り方も嫌味ったらしい。

「君、僕の父さんを殴り倒したって?」

 や、やっぱり、知っていたか。──ベクターは話を続ける。

「信じられないなあ。父さんは全国武闘ぶとう大会で八位入賞者だ。年は取ったが、体重があるから、まだまだ強いはずなんだけどね。……だが、僕は父と違って、甘くないよ。君をギタギタに叩きのめす! ウフフフ」

 やっぱりな。ベクターはドーソン叔父さんと同類だ。

 カーン!

 試合のゴングが鳴った。鳴らしたのは例によって、ルイーズ学院長。待ってくれ、心の準備が……!

「レイジ!」

 セコンドについてくれたアリサが叫んだ。

「ベクターは蹴りの名手よ! 彼には特殊な連続攻撃があるから、気を付けて!」
「特殊な……連続攻撃?」

 僕がどんな技だ、と考えていると、ベクターはいきなり襲い掛かってきた。
 スッと片足立ちになったかと思うと、鋭い横蹴りが飛んできた。一発、二発、三発、四発! 連発だ。
 僕はすべて片手で叩き落した。

 今度はベクターの右中段蹴り! これは左あばら骨を狙う攻撃だ。僕はギリギリのところでかわした。とにかく彼の蹴りは素早い。ケビンの五倍のスピードがあるだろう。確かに、エースリートのランキング一位の生徒だけはある。

「レイジ君」

 ベクターはものすごく恐ろしい目で僕をにらみつけた。

「君のような貧弱な少年が……僕の蹴りを全部かわす? ありえない!」

 ベクターは、今度は左下段蹴りを放ってくる。

「計算上ありえない!」

 ガッ

 僕の足元で音がした。僕の体が宙に浮かぶ。そうか、なるほど。これは太ももを蹴る下段蹴りではなく、足首をって、僕を転ばせる技術! ケビンも使ってきた技だ。
 僕は宙を舞い、背中からリング床に落ちた。しかし、たいした痛みはない。

「連続攻撃が来る!」

 アリサの声がした。

 ベクターは狙っていた。僕が倒れた時に、上からパンチを顔に落とす! しかし、それは僕も読んでいた。彼の振り下ろすパンチをよけ、素早く立ち上がる。
 
「な、なにいいい~!」

 ベクターは、審判席のルイーズ学院長の方を振り返り、叫んだ。

「学院長! 彼はダウンしたでしょう! 背中から倒れたんだから!」

「レイジがダウンしたって?」と、観客──生徒たちは騒然となった。
 生徒たちの誰もが、ルイーズ学院長の判断を待った。ルイーズ学院長はちょっと考えてから、首を横に振った。そして魔導拡声器まどうかくせいきに向かって言った。

『ダウンとはみなしません! レイジはダメージを負っていない。試合続行!』

 ドオオオッ! 場内は大盛り上がりだ。

「ちくしょおおおおっ……クソ野郎がああっ!」

 ベクターは試合前の冷静な顔とはうって変わって、鬼のような形相ぎょうそうだ。汗もかいている。僕は逆に、自分が汗一つかいていないのが分かっていた。
 とても冷静だった。

「ん? あ、うう?」

 ベクターは素早く僕の方に向かってきたが、足がもつれた。そしてよろよろとひざをついてしまった。

『ダウン! 1、2、3……』

 何だ、何が起こった? と観客は騒然となっている。ベクターはロープをつかんで必死に立ち上がる。そして足を押さえながら、リングの中央にフラフラと戻った。
 彼は僕に言った。

「レイジ君、お前、何てヤツだ……。僕の蹴りを避けているフリをして、僕のふくらはぎに蹴りを叩き込んでいたんだから」

 その通り。僕は彼の横蹴りを避けつつ、彼の軸足じくあしに蹴りを叩き込んでいた。つまり、ふくらはぎに蹴りを放っていた。細かい地味な蹴り技だが、筋肉が断裂する恐れのある、危険な技だ。カーフキックとも呼ばれている。
 足首りを受けたのも、彼を油断させるため。

 ベクターは自分の足に気合を入れるようにパシパシ叩いて、ニヤリと笑った。

「そうかい、ようやく理解した。君は僕の計算の上をいっている。しかし、これならどうだろう?」

 彼は物凄いスピードで、左中段蹴りを僕の右腕に叩き込んできた。僕は避けたが、なるほど、防御する腕自体を破壊する手段に切り替えてきたわけだ。
 しかし、軸足じくあしを痛めているベクターの蹴りは、もうそれほど速くはない!

 すると彼は突如、その足を宙にかかげた。
 かかと落としが来る! 蹴り技が得意な選手が、最も華麗にせることのできる技だ!

「ダメね。レイジの勝ちよ」

 ルイーズ学院長の声が、僕の耳に入った。その通り! 僕は彼のナタのように振り下ろす足技を避け、右に一歩前に出た。

 もらった。

 僕の拳は、ベクターの耳の後ろ──急所を直撃した。

 ──手ごたえがあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...