5 / 7
5
しおりを挟む
自分の荒い息で目を覚ました。頭痛いし、背中も痛いし、なんか目も痛い。寒気がするからってクーラーを切ったのが悪かった。ものすごく暑い。リモコンがある場所まで歩くのが怠くて我慢していたせいで気持ち悪くなる。それで、余計に立てなくなっているのだから、どうしようもない。
スマホを裏返すと11:00と出た。外が明るいから午前中か。グループチャットに送ったはずのメッセージに対する返信の通知がない。誰か僕が風邪をひいてるって先生に言ってくれただろうか。無断欠席になっていたらどうしよう。
コンコン、とドアがノックされる音がした。昼間だから鍵はかかっていないはずだ。どうぞ、と返事をしたが思ったよりも声量が出なかった。案の定聞こえなかったのか中々入ってこない。もう一度声を張り上げると、ようやくドアが開いた。
「晴くん、大丈夫そ……?」
「え、結弦さん?」
一瞬、驚きでそれまで感じていた不快感が吹っ飛んだ。予想外すぎるその人物は、お見舞い品と言いながらスポーツドリンクとゼリーの入った袋を差し出した。
「いやあ、これ見てびっくりしたよ。晴くんのクラス分からないし」
結弦さんが差し出した画面には僕がクラスのグループチャットに送ったはずのメッセージが写っていた。完全に宛先を間違えている。「担任に連絡お願いします」なんて、確かに結弦さんが突然言われて驚くのも無理はない。
「す、すみません!僕、クラスメイトに送ったつもりで……」
「あ、やっぱり?そうなんじゃないかなーとは思った。でも、本当に俺を頼ってくれても良かったんだよ?」
冗談と本気の間のような口調に何となく気まずくなって下を向いてしまう。むにゃむにゃと口ごもっていると、結弦さんがこちらを覗き込んだ。
「顔赤いねえ。校医さん呼ぶ?」
「大丈夫、です。寝てれば、多分治るんで」
結弦さんのひんやりとした手が額に乗せられた。その綺麗な指に脂汗を拭わせるのが忍びない。
「しんどくなったらいつでも連絡してよ。駆けつけるから」
「……はい」
僕の返事を聞くと、結弦さんは笑った。ぽんと頭を撫でられた。すごく恥ずかしくて俯いてしまう。同時に、イケメン仕草の似合う人だな、とちょっと失礼かもしれないことを思った。
「お大事にね」
そして、結弦さんはあっさりと帰って行った。
スマホを裏返すと11:00と出た。外が明るいから午前中か。グループチャットに送ったはずのメッセージに対する返信の通知がない。誰か僕が風邪をひいてるって先生に言ってくれただろうか。無断欠席になっていたらどうしよう。
コンコン、とドアがノックされる音がした。昼間だから鍵はかかっていないはずだ。どうぞ、と返事をしたが思ったよりも声量が出なかった。案の定聞こえなかったのか中々入ってこない。もう一度声を張り上げると、ようやくドアが開いた。
「晴くん、大丈夫そ……?」
「え、結弦さん?」
一瞬、驚きでそれまで感じていた不快感が吹っ飛んだ。予想外すぎるその人物は、お見舞い品と言いながらスポーツドリンクとゼリーの入った袋を差し出した。
「いやあ、これ見てびっくりしたよ。晴くんのクラス分からないし」
結弦さんが差し出した画面には僕がクラスのグループチャットに送ったはずのメッセージが写っていた。完全に宛先を間違えている。「担任に連絡お願いします」なんて、確かに結弦さんが突然言われて驚くのも無理はない。
「す、すみません!僕、クラスメイトに送ったつもりで……」
「あ、やっぱり?そうなんじゃないかなーとは思った。でも、本当に俺を頼ってくれても良かったんだよ?」
冗談と本気の間のような口調に何となく気まずくなって下を向いてしまう。むにゃむにゃと口ごもっていると、結弦さんがこちらを覗き込んだ。
「顔赤いねえ。校医さん呼ぶ?」
「大丈夫、です。寝てれば、多分治るんで」
結弦さんのひんやりとした手が額に乗せられた。その綺麗な指に脂汗を拭わせるのが忍びない。
「しんどくなったらいつでも連絡してよ。駆けつけるから」
「……はい」
僕の返事を聞くと、結弦さんは笑った。ぽんと頭を撫でられた。すごく恥ずかしくて俯いてしまう。同時に、イケメン仕草の似合う人だな、とちょっと失礼かもしれないことを思った。
「お大事にね」
そして、結弦さんはあっさりと帰って行った。
0
あなたにおすすめの小説
ひとりのはつじょうき
綿天モグ
BL
16歳の咲夜は初めての発情期を3ヶ月前に迎えたばかり。
学校から大好きな番の伸弥の住む家に帰って来ると、待っていたのは「出張に行く」とのメモ。
2回目の発情期がもうすぐ始まっちゃう!体が火照りだしたのに、一人でどうしろっていうの?!
αの共喰いを高みの見物してきた男子校の姫だった俺(α)がイケメン番(Ω)を得るまで。
Q矢(Q.➽)
BL
αしか入学を許可されないその学園の中は、常に弱肉強食マウントの取り合いだった。
そんな 微王道学園出身者達の、卒業してからの話。
笠井 忠相 (かさい ただすけ) 25 Ω
×
弓月 斗和 (ゆづき とわ) 20 α
派生CPも出ます。
※ 1月8日完結しました。
後日談はその内書くと思います。
ご閲覧ありがとうございました!
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
政略結婚したかった
わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏
有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。
二十歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったらそのまま結婚
楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。
会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____
断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。
叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。
オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる