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シーズン1 始まりの黒い剣

第二話「逃亡生活」

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とある森林の道にて……















「ねぇ、レギュ……ちょっと休まない?」
「30分前に休憩とったばかりだろ……」
「だってこの森、蒸し暑いんだもん…!」
「そりゃそうだけどよ……」

蒸し暑さでヘロヘロなリザの文句を聞き流し、
どんどんと前へ進んでいくレギュ。



桜村から逃亡して、3日経った。

歩いては野宿、歩いては野宿の繰り返し。
行く宛も無く逃げるだけの日々。

2人はある意味、限界の瀬戸際であった。



「あーもうダメ……なにか食べたい……」
「それもさっき食っただろ…!」
「たったパン一欠片じゃん…」

リザのその一言に、レギュは呆れてため息を
吐きながら言う。

「……そればっかりはしょうがねぇよ……
急足で村から逃げて、食料集める暇なんて
なかったんだし……」
「あー………まぁ……それもそっか……」

リザは案外、すぐに理由に納得したようで、
食料どうこうの話はそれきりになった。


それからまたしばらく歩き続けて………






約5時間後……



「………ん?」

レギュは何かに気付く。

森の奥から、誰かがコチラにやってくる。

遠目で見てもわかるその武装集団は、
こちらに気付くや否や、進路を変えて
レギュ達のところへ向かってきた。


「…レギュ?…どうしたの?」

「リザ、ちょっと近くの茂みに隠れてろ」
「えっ、なんで!?」
「良いから早くしろ…!」


レギュはリザを、近くの茂みに誘導する突き飛ばすと、
やってきた武装集団……レジスタンスの
傭兵達と会話を始めた。


「お前か……"賞金首"のレギュさんとやら」
「…その言い方、やめてもらえるか?」

「俺の名は、れん。……こんなこと聞かなくてもわかるだろうが、お前を殺しにきた」
「…だろうな、なんとなくわかってた」


レギュは煉と会話を続けながら、今の状況を
脳裏で整理する。


まず、相手の人数は煉を含んで計7人。
その内4人は普通の剣を腰に装備しており、
他2人はレジスタンス製のビームライフル。
煉は背中に両手剣を背負っている。

ぱっと見は完全にレギュが不利に見えるが、
レジスタンス時代に数多の戦場を駆けてきた
レギュにとっては造作もない人数である。

それに、もし何かあっても裏でリザがこちらを
援護してくれるだろう。


「…よし、お前ら!やっちまえ!!」
「…っ!!」

その時、煉の指示で4人の傭兵がほぼ同時に
剣を抜いて、レギュに突撃してきた。

即座にハンドガンでその内2名を撃ち殺す。
残った2人には、即座に剣で立ち向かう。


まず、上から来る剣を左にかわしつつ、
そのまま相手を右脇腹から左肩にかけて
切り殺す。

その隙をついて、背後から襲ってくる
もう1人の兵士の攻撃をしゃがんで回避し
下から振り上げるように相手の腹を裂く。


こうして4人いた剣士は、あっという間に
レギュに瞬殺されてしまった。


「よし、まだ剣の腕はなまってないみたいだな」
「……流石、元レジスタンスのエリート兵。
この程度じゃやられないみたいだな……だが
銃相手ならどうだ?」


煉の横に並ぶ2人の兵士が、銃口と照準を
レギュに合わせる。


「(銃相手は確かにキツいな……でも!)」
「……撃て」


しかし。

その刹那、2人の兵士の脳天を閃光が貫く。
飛んでくる返り血が、煉の頬を掠める。


「なっ……!?」


「…ナイスだぜ、リザ!」という資産を送る
レギュの目先には、スナイパーライフルを
構えたリザの姿があった。

その銃口からは、小さく煙が立っている。



「チッ……やっぱり俺の出番か…!」

「…ッ!…レギュ、前!!」
「…!?」


兵士がやられたその瞬間、煉が両手剣を背中
から取り出して切り掛かってくる。


「(コイツ…両手剣の割には速い…!)」


両手剣は攻撃の際にかかる重量の関係で、
並の兵士が使えば動きが鈍くなってしまう。

だが、煉は重い筈のそれを軽々と振り回し、
素早い動きでレギュを翻弄する。

レギュは剣を横に傾けて攻撃を受け流すが、
煉は素早くそのまま背後へ回り、両手剣を
真上から叩き落とす。

それに対してレギュは剣を平行にして攻撃を
防ごうとするが、あまりにも強い力に押され
バランスを崩しかける。


「観念しやがれ、賞金首さんよ…!」


煉の両手剣のやいばが、レギュの顔の目の前に
迫りくる。





しかし、これはレギュの作戦の内だった。





「リザ!今だ!!」
「…っ!?」



刹那、リザのライフルから放たれた閃光弾丸
脳天を貫く。

煉は頭から血飛沫を地面に撒き散らし、
力抜けるように倒れていった。


「ふぅ……助かったぜ、リザ」
「…レギュこそ、相手の動きを止めてくれて
ありがとうね!」


もう刺客は誰もいないと判断したリザが、
物陰から出てレギュの元へ駆け寄って来る。


すると。





カシュッ…




「……ん?」

リザが兵士の死骸から何かを踏んだ拍子に、
カシュッと菓子が潰れるような音が鳴る。

レギュは他の兵士が持っていた全く同じ袋を
手に取り、中身を確認する。


「……あっ、これ携帯型の非常食だ」
「え!?」

それを聞いた瞬間、リザの顔がパッと
いきなり明るくなる。

「これで当分ご飯には困らないね!」
「……まぁ…ここの兵士の分の奴を掻き集め
れば一ヶ月くらいは持つだろうな」
「やったー!!」



















この後、雨に濡れて非常食がダメになって
しまうのだが、それはまた別の話………











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