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第38話 商徳妃に取り憑いたあやかし
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一旦屋外に出た2人は商徳妃のいる建物へと早歩きで移動していく。
「商徳妃が終われば、美人才人達だな……さて、どれくらいの数に及んでいるか」
「そうですね……」
2人は商徳妃のいる建物へと到着すると、彼女の部屋へと入室し女官達に避難するようにと指示した。
女官達が全員商徳妃のいる部屋から避難したのを確認した2人は、改めて彼女の様子を見る。
「さっきとおなじあやかしだな……だが、数が多い」
架子床の上であおむけになっている商徳妃の額には、佳賢妃と同じ文様が浮かび上がっていた。そして彼女の身体を取り巻くようにして黒い狐のあやかしがくつろいでいたり、龍環へ威嚇行動を見せたりしている。
「どれくらいいますか?」
「ふむ……ざっと数えてみた所10はいるな」
「え、そんなに……?」
「ああ、佳賢妃にいたのは1匹だけだったが……」
「数の暴力って事にならなければいいのですが……」
試しに桃玉は右手を商徳妃の右わき腹付近に伸ばしてみた。すると、近くにいた黒い狐のあやかしは桃玉の右手の甲にほおずりをし始める。
「おい、なんか懐かれているみたいだぞ。君の手の甲にほおずりしている」
「えっ……? な、なんでまた……」
「おそらくは、生まれたばっかりなんじゃあないか? このあやかし達。だから敵意をほとんど見せてこない」
「ああ、生まれてきたばかりだからまだ善悪がよくわかっていないって事でしょうか」
「多分な。だが情けは不要。商徳妃がこうなっている以上彼らが悪しきあやかしである事には変わらない。桃玉、頼む」
「そうですよね……わかりました……!」
首を縦に振り、覚悟を決めたのち両手を伸ばした桃玉。両手から放たれる浄化の光によって、黒い狐のあやかし達は続々と浄化されていく。
しかし残された1匹が全身の毛を逆立て、桃玉の元へと飛び込んできた。
「桃玉! あやかしが君に!」
桃玉はそのまま後ろ向きに倒れてしまう。が、彼女の手は黒い狐のあやかしを抱きしめるようにして捕えていた。
桃玉が起き上がるべく手を放そうとした瞬間、龍環はまった! と声をあげる。
「桃玉、その手を放すなよ。今、その中に黒い狐のあやかしがいる!」
「という事は、私が抱きしめてるって感じですか?!」
「そういう事だ! よし、今から俺が指示するからその通りに手を動かすんだ!」
「はいっ」
龍環はしゃがみこみ、じっと桃玉と黒い狐のあやかしを見つめる。
「まずは右手の肘から下を天井に向けて」
「……こうですね?」
「ああ、合ってる。でもって左手はそのまま動かさないで」
「はい」
桃玉の腕の中にいる黒い狐のあやかしは、じたばたと身体を動かし、その場から離れようとしている。
「左手はもっと力をこめるんだ! あやかしが逃げようとしている!」
「わかりました!」
「よし、浄化の力を右手から放て!」
「了解です!」
桃玉は龍環から言われた通りに右手から浄化の力を放出させる。放たれた青白い光の球は、桃玉の腕を噛もうとしていた黒い狐のあやかしの身体にまとわりつき、そのまま浄化へと至らしめた。
「よし、完全に浄化された。ほら、腕につかまって」
「よかった……よいしょっと」
龍環に引っ張られるようにして身を起こした桃玉。架子床からはん……。と商徳妃の小さな声が聞こえる。
「あ、私、は……」
「商徳妃様……!」
「あ、あなたは……李昭容。なぜ、ここに? あ、皇帝陛下も……!」
「見舞いに訪れていたのだ。そして桃玉は君を看病していたという訳だな。ああ、そうだ。佳賢妃もさっき目覚めたぞ」
架子床から上半身を起こし、ぽかんとした表情で桃玉を見る商徳妃。えへへ……とその場しのぎの作り笑いを浮かべる桃玉に対し、商徳妃は笑顔を見せた。
「ありがとう。桃玉。あなたがこんなに優しい子だったなんて知らなかったわ」
「あ、いや……その、言われた事をしたまでですので。佳賢妃様も商徳妃様もお元気になられて本当によかったです」
「そう……」
「桃玉、次へ行くぞ」
「わかりました……!」
部屋から出ようと踵を返す2人を、商徳妃が待って! と声をかけた。
「桃玉、よかったら今度みんなでお茶会しましょう。快気祝いって事で。佳賢妃も呼ぶから」
「ええ! ありがとうございます!」
部屋から早歩きで去っていく商徳妃は、2人の背中が視界から消えていくまでじっと見つめていた。
「なんだか……不思議な子ね」
「商徳妃が終われば、美人才人達だな……さて、どれくらいの数に及んでいるか」
「そうですね……」
2人は商徳妃のいる建物へと到着すると、彼女の部屋へと入室し女官達に避難するようにと指示した。
女官達が全員商徳妃のいる部屋から避難したのを確認した2人は、改めて彼女の様子を見る。
「さっきとおなじあやかしだな……だが、数が多い」
架子床の上であおむけになっている商徳妃の額には、佳賢妃と同じ文様が浮かび上がっていた。そして彼女の身体を取り巻くようにして黒い狐のあやかしがくつろいでいたり、龍環へ威嚇行動を見せたりしている。
「どれくらいいますか?」
「ふむ……ざっと数えてみた所10はいるな」
「え、そんなに……?」
「ああ、佳賢妃にいたのは1匹だけだったが……」
「数の暴力って事にならなければいいのですが……」
試しに桃玉は右手を商徳妃の右わき腹付近に伸ばしてみた。すると、近くにいた黒い狐のあやかしは桃玉の右手の甲にほおずりをし始める。
「おい、なんか懐かれているみたいだぞ。君の手の甲にほおずりしている」
「えっ……? な、なんでまた……」
「おそらくは、生まれたばっかりなんじゃあないか? このあやかし達。だから敵意をほとんど見せてこない」
「ああ、生まれてきたばかりだからまだ善悪がよくわかっていないって事でしょうか」
「多分な。だが情けは不要。商徳妃がこうなっている以上彼らが悪しきあやかしである事には変わらない。桃玉、頼む」
「そうですよね……わかりました……!」
首を縦に振り、覚悟を決めたのち両手を伸ばした桃玉。両手から放たれる浄化の光によって、黒い狐のあやかし達は続々と浄化されていく。
しかし残された1匹が全身の毛を逆立て、桃玉の元へと飛び込んできた。
「桃玉! あやかしが君に!」
桃玉はそのまま後ろ向きに倒れてしまう。が、彼女の手は黒い狐のあやかしを抱きしめるようにして捕えていた。
桃玉が起き上がるべく手を放そうとした瞬間、龍環はまった! と声をあげる。
「桃玉、その手を放すなよ。今、その中に黒い狐のあやかしがいる!」
「という事は、私が抱きしめてるって感じですか?!」
「そういう事だ! よし、今から俺が指示するからその通りに手を動かすんだ!」
「はいっ」
龍環はしゃがみこみ、じっと桃玉と黒い狐のあやかしを見つめる。
「まずは右手の肘から下を天井に向けて」
「……こうですね?」
「ああ、合ってる。でもって左手はそのまま動かさないで」
「はい」
桃玉の腕の中にいる黒い狐のあやかしは、じたばたと身体を動かし、その場から離れようとしている。
「左手はもっと力をこめるんだ! あやかしが逃げようとしている!」
「わかりました!」
「よし、浄化の力を右手から放て!」
「了解です!」
桃玉は龍環から言われた通りに右手から浄化の力を放出させる。放たれた青白い光の球は、桃玉の腕を噛もうとしていた黒い狐のあやかしの身体にまとわりつき、そのまま浄化へと至らしめた。
「よし、完全に浄化された。ほら、腕につかまって」
「よかった……よいしょっと」
龍環に引っ張られるようにして身を起こした桃玉。架子床からはん……。と商徳妃の小さな声が聞こえる。
「あ、私、は……」
「商徳妃様……!」
「あ、あなたは……李昭容。なぜ、ここに? あ、皇帝陛下も……!」
「見舞いに訪れていたのだ。そして桃玉は君を看病していたという訳だな。ああ、そうだ。佳賢妃もさっき目覚めたぞ」
架子床から上半身を起こし、ぽかんとした表情で桃玉を見る商徳妃。えへへ……とその場しのぎの作り笑いを浮かべる桃玉に対し、商徳妃は笑顔を見せた。
「ありがとう。桃玉。あなたがこんなに優しい子だったなんて知らなかったわ」
「あ、いや……その、言われた事をしたまでですので。佳賢妃様も商徳妃様もお元気になられて本当によかったです」
「そう……」
「桃玉、次へ行くぞ」
「わかりました……!」
部屋から出ようと踵を返す2人を、商徳妃が待って! と声をかけた。
「桃玉、よかったら今度みんなでお茶会しましょう。快気祝いって事で。佳賢妃も呼ぶから」
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部屋から早歩きで去っていく商徳妃は、2人の背中が視界から消えていくまでじっと見つめていた。
「なんだか……不思議な子ね」
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