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第46話 私達の出番
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轟音が収まっていくと、今度は兵士達のわあわあと言った様々な言葉が入り混じった音が耳に届いてくる。さっきの魔法炸裂弾だっけ? 命中したのかな?
「ふむ、命中したようだな」
「将軍閣下! 攻撃成功いたしましたね!」
配下の者達が早速手を取り合って喜ぶ。どうやら彼らの言葉によれば、魔法炸裂弾は新作のものらしく魔術研究所で開発が行われたものらしい。
「所長! あなた方の研究の成果が早速出ましたね!」
将軍配下の亜人達に尊敬のまなざしを持って迫られているサファイア所長は、目を細めながらにこにこと笑っていた。
「とんでもない。我らの叡智をご堪能いただければ幸いでございます。しかしまだご油断なされぬよう」
砲弾が放たれた方へと目を向けると、白い煙の中から黒い影が見え隠れしている。
「む、まだいたのか? それとも奇襲の為に待ち伏せしていた者達が砲弾により外へと出てきたのか?」
「将軍閣下のおっしゃる通りのようでございますね、悪魔に効く瘴気が籠っておりますがもう一度砲撃する必要がございます」
「ふむ……効いてはおるな。地面の中に潜んでいたものも湧いてきておるわい」
炸裂弾の中には悪魔の内臓を破壊し侵していく効能のある無味無臭の瘴気、毒ガスみたいなのが含まれている。この瘴気は人間や亜人には害はなく、悪魔にだけ反応するといった具合のようだ。
アルグレートがくれた双眼鏡には白い靄が晴れて悪魔達が前方にいるのが見て取れるのだが、悪魔達は皆呼吸が出来ずに苦しんでいるように見える。
「そろそろ破壊されるでしょう」
サファイア所長がそう告げた瞬間、悪魔達の身体がボロボロと砂城のように崩れて、空気中へと消えていった。
「おお……悪魔達が消滅していく」
将軍は目を丸くさせながら目の前で起こっている光景に釘付けになっていた。元いた世界では絶対に起こらないであろうその景色は、私の脳裏に目深く刻み込まれていく。
「全て、消えたか?」
「斥候を派遣致しましょう、将軍閣下」
「うむ、ここはイルストーンズ魔術研究所所長の提案を受け入れよう」
将軍が指をぱちんと鳴らすと、彼の両横の地面から雪に覆われた人型の物体が姿を現した。
「あ、あれは……」
「オトネ、あれは将軍が召喚した雪男だ。こちらへ襲ってくる事は無いから安心していい」
なるほど、よくアニメや漫画なんかで陰陽師キャラが使う式神みたいな感じかな?
将軍が雪男達に指示を出すと、彼らはのっしのっしと足音を鳴らしながら前へと歩き出す。そしてあちこち首を回して敵がいないのを確認すると、こちらへと親指を立ててきた。そのポーズはこの世界にも存在してるのね。
将軍は撤退させていた部隊へ再度進撃するように命じる。勢い任せに部隊が進軍していくのを双眼鏡で眺めながら、左手を振り上げて大きな声を出し、兵士を鼓舞する。
「乙音、私達は傷病者を収容する野戦病院へと向かいましょう」
「はい、アナスタシアさん……!」
「俺も行く。オトネ達だけで移動するのは危ないからな」
野戦病院へは、ここから少し離れている。ユニコーンが率いる白い簡易な馬車に乗り込むと、アルグレートが隣に座る。
「悪魔はわりと神出鬼没な所があるからな」
と、アルグレートが言った時、馬車が大きく揺れた。ユニコーンが立ち上がったようだ。
「なんだ!?」
馬車が倒れ、私達は地面の方へと叩きつけられる。
私の上にアルグレートとアナスタシアさんが覆いかぶさるような構図だ。う、重い……。
「くっ!」
アルグレートが窓を蹴破り外に出ると、何かしら魔法を使ったのだろう。ギャオォォォ!! という明らかに人のものではないエコーがかった悲鳴が耳をつんざくようにして響き渡った。
「む、う……」
今、私の顔にアナスタシアさんの胸の部分が当たっている状況である。ラッキースケベとしてよく見る構図な気がするがアナスタシアさんは大丈夫だろうか?
「む、むむむ……」
アナスタシアさん、と口にしようとしても胸の圧が口をふさいでいるせいでうまく発音できない。するとアナスタシアさんがこの体勢に気づいたのか、慌ててどいてくれた。
「あ、ああ! ごめんね乙音!」
「むぐぐ、いえいえ……!」
「ふたりとも大丈夫か!? 悪魔の奇襲だったが、何とか近くにいたやつらは全員排除したぞ!」
アルグレートが私達を外から引っ張りだし、派手に横転した馬車を押して元通りにする。ユニコーンは足元に擦り傷をしていたが、アルグレートが魔術で塞いでくれた。
「ありがとう……アルグレート……」
「礼には及ばん。今は野戦病院へ移動中だから、時間が無い。早く移動しないとまたあいつらがやってくるからな。さぁ、馬車に乗ろう」
再び馬車に乗り込み野戦病院を目指す。その後も数頭の悪魔から襲撃を受けたが、アルグレート曰く雑魚と言う事もあってか被害は受けなかった。
「ここだ、到着したぞ」
アルグレートについていくようにして馬車から降りると、そこには簡素な大きい建物が広がっていた。
「オトネ、そしてアナスタシアさん。気をつけて」
「うん、アルグレートも気をつけてね」
「ありがとうグスタフ公爵! 乙音、いよいよ私達の出番ね……!」
不敵な笑みを浮かべるアナスタシアの身体はぶるっと武者震いしている。アルグレートは去り際、私を抱き締めるとそっと唇を私の唇の上に重ねた。
「頑張れ」
彼の様々な感情が複雑に入り混じったであろう声が頭の中で反響しながら、アナスタシアさんとともに野戦病院の中に入る。
「ふむ、命中したようだな」
「将軍閣下! 攻撃成功いたしましたね!」
配下の者達が早速手を取り合って喜ぶ。どうやら彼らの言葉によれば、魔法炸裂弾は新作のものらしく魔術研究所で開発が行われたものらしい。
「所長! あなた方の研究の成果が早速出ましたね!」
将軍配下の亜人達に尊敬のまなざしを持って迫られているサファイア所長は、目を細めながらにこにこと笑っていた。
「とんでもない。我らの叡智をご堪能いただければ幸いでございます。しかしまだご油断なされぬよう」
砲弾が放たれた方へと目を向けると、白い煙の中から黒い影が見え隠れしている。
「む、まだいたのか? それとも奇襲の為に待ち伏せしていた者達が砲弾により外へと出てきたのか?」
「将軍閣下のおっしゃる通りのようでございますね、悪魔に効く瘴気が籠っておりますがもう一度砲撃する必要がございます」
「ふむ……効いてはおるな。地面の中に潜んでいたものも湧いてきておるわい」
炸裂弾の中には悪魔の内臓を破壊し侵していく効能のある無味無臭の瘴気、毒ガスみたいなのが含まれている。この瘴気は人間や亜人には害はなく、悪魔にだけ反応するといった具合のようだ。
アルグレートがくれた双眼鏡には白い靄が晴れて悪魔達が前方にいるのが見て取れるのだが、悪魔達は皆呼吸が出来ずに苦しんでいるように見える。
「そろそろ破壊されるでしょう」
サファイア所長がそう告げた瞬間、悪魔達の身体がボロボロと砂城のように崩れて、空気中へと消えていった。
「おお……悪魔達が消滅していく」
将軍は目を丸くさせながら目の前で起こっている光景に釘付けになっていた。元いた世界では絶対に起こらないであろうその景色は、私の脳裏に目深く刻み込まれていく。
「全て、消えたか?」
「斥候を派遣致しましょう、将軍閣下」
「うむ、ここはイルストーンズ魔術研究所所長の提案を受け入れよう」
将軍が指をぱちんと鳴らすと、彼の両横の地面から雪に覆われた人型の物体が姿を現した。
「あ、あれは……」
「オトネ、あれは将軍が召喚した雪男だ。こちらへ襲ってくる事は無いから安心していい」
なるほど、よくアニメや漫画なんかで陰陽師キャラが使う式神みたいな感じかな?
将軍が雪男達に指示を出すと、彼らはのっしのっしと足音を鳴らしながら前へと歩き出す。そしてあちこち首を回して敵がいないのを確認すると、こちらへと親指を立ててきた。そのポーズはこの世界にも存在してるのね。
将軍は撤退させていた部隊へ再度進撃するように命じる。勢い任せに部隊が進軍していくのを双眼鏡で眺めながら、左手を振り上げて大きな声を出し、兵士を鼓舞する。
「乙音、私達は傷病者を収容する野戦病院へと向かいましょう」
「はい、アナスタシアさん……!」
「俺も行く。オトネ達だけで移動するのは危ないからな」
野戦病院へは、ここから少し離れている。ユニコーンが率いる白い簡易な馬車に乗り込むと、アルグレートが隣に座る。
「悪魔はわりと神出鬼没な所があるからな」
と、アルグレートが言った時、馬車が大きく揺れた。ユニコーンが立ち上がったようだ。
「なんだ!?」
馬車が倒れ、私達は地面の方へと叩きつけられる。
私の上にアルグレートとアナスタシアさんが覆いかぶさるような構図だ。う、重い……。
「くっ!」
アルグレートが窓を蹴破り外に出ると、何かしら魔法を使ったのだろう。ギャオォォォ!! という明らかに人のものではないエコーがかった悲鳴が耳をつんざくようにして響き渡った。
「む、う……」
今、私の顔にアナスタシアさんの胸の部分が当たっている状況である。ラッキースケベとしてよく見る構図な気がするがアナスタシアさんは大丈夫だろうか?
「む、むむむ……」
アナスタシアさん、と口にしようとしても胸の圧が口をふさいでいるせいでうまく発音できない。するとアナスタシアさんがこの体勢に気づいたのか、慌ててどいてくれた。
「あ、ああ! ごめんね乙音!」
「むぐぐ、いえいえ……!」
「ふたりとも大丈夫か!? 悪魔の奇襲だったが、何とか近くにいたやつらは全員排除したぞ!」
アルグレートが私達を外から引っ張りだし、派手に横転した馬車を押して元通りにする。ユニコーンは足元に擦り傷をしていたが、アルグレートが魔術で塞いでくれた。
「ありがとう……アルグレート……」
「礼には及ばん。今は野戦病院へ移動中だから、時間が無い。早く移動しないとまたあいつらがやってくるからな。さぁ、馬車に乗ろう」
再び馬車に乗り込み野戦病院を目指す。その後も数頭の悪魔から襲撃を受けたが、アルグレート曰く雑魚と言う事もあってか被害は受けなかった。
「ここだ、到着したぞ」
アルグレートについていくようにして馬車から降りると、そこには簡素な大きい建物が広がっていた。
「オトネ、そしてアナスタシアさん。気をつけて」
「うん、アルグレートも気をつけてね」
「ありがとうグスタフ公爵! 乙音、いよいよ私達の出番ね……!」
不敵な笑みを浮かべるアナスタシアの身体はぶるっと武者震いしている。アルグレートは去り際、私を抱き締めるとそっと唇を私の唇の上に重ねた。
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