異世界転移した処女看護師と竜人公爵様の子作り契約婚

二位関りをん

文字の大きさ
78 / 78

最終話 真の夫婦

しおりを挟む
 次に目を開いた時、見慣れた部屋の天井とアルグレートとマリアの顔、そして産まれた双子を抱えた医者が映し出される。

「オトネ! 気が付いたか! よかった……」

 アルグレートがぎゅっと私の左手を握りしめた。そしてそこに彼の滝のような汗が滴り落ちて来る。マリアもメイド達も皆汗だくだ。マリアは化粧もすっかり落ちてしまっている。

「あ、アルグレート……それにマリアも、皆……」
「よく頑張りましたわね。そしておめでとう。元気な竜人の双子の男女ですわよ」

 姉弟の2人はすでにおくるみに巻かれて医者に抱っこされている。既に泣き止んで眠ってしまってるみたい。

「皆……ありがとうございました。皆様のお陰です」

 私はベッドの上に横たわった状態で、皆に目線を向けながら感謝の気持ちを伝える。アルグレート達のおかげで今私はここにいるのだから。

「君達もよく頑張ったね。そしてこれからよろしく」

 寝息を立てている双子の姉弟に優しく声を掛けると弟の方をアルグレートが抱く。

「……俺に似ているな」

 ぼそりと呟く彼の目は優しげで、父親の顔になっているように見えた。今更だけど召喚した頃の私にこの事を聞かせたら絶対に信じないだろうな。

「オトネ、よく頑張ってくれた。そして君が本当に回復して良かった……!」

 アルグレートの笑みがすっと胸の奥に染みていく。身体中が痛いのに、幸福で包まれているかのような充足感が胸の中を支配していた。

「あの冷酷公爵と言われたアルグレート様が父親だなんて……感慨深いですわね」

 マリアがくすりと笑うと、アルグレートは少し照れ笑いを浮かべた。

「もう冷酷公爵はここにはいないよ。ただ……オトネと俺達の子供達を害するものには以前以上の冷酷さを見せつけるがな」
「もう、あなたがオトネ様と子を溺愛しているのが早速伝わってきますわね。ねえ、オトネ様?」

 アルグレートの事だからこれからも私達を溺愛というか……独占欲を見せて来るのに変わりはないだろう。マリアへ向けてへへっと笑みを見せると、彼女は穏やかに微笑んでくれた。

◇ ◇ ◇

 生まれた子はオトレーレとアルスレイと名付けられた。オトレーレもアルスレイも金髪碧眼でアルグレートとそっくりな見た目である。オトレーレは若干髪の一部がメッシュを入れたかのように黒い部分があるので、そこは私の要素かもしれない。

「うわ、たくさんある」

 妊娠を公表した時以上の出産祝いの量には度肝を抜かされたけど、それだけお祝いしてくれている事の証左でもある。嬉しさを爆発させながらプレゼントボックス達に目を通したのだった。

『乙音おめでとう! これから大変だけど私達手伝いに行くからいつでも頼って!』

 と、アナスタシアさんとサファイア所長から手紙が届いたり、マリアからお祝いや私の体調を気遣いつつ自分も相手を召喚する事を考えているという内容が記された手紙も届いた。
 それにしてもアルグレートは育児に対して熱心に参加してくれている。執務中もミルクをあげながら書類を作成したりと、その元気は一体どこから来ているのかと気になるくらいだ。

「オトネ、君は先にシャワーを浴びると良い。ふたりの沐浴は俺がするよ」
「え、いいの? なんかミルクやおむつ替えもいつもアルグレートに任せてるから申し訳ないよ」
「君はまだ本調子じゃない。ここは俺に任せてくれないか?」

 そう。私は回復したとはいえまだ体力は落ちたままだ。医者からも無理はしないようにきつく言われている。

「ありがとう……いつも助かるよ」

 ふっと彼は微笑みながら私を抱きしめ、頭の上にキスを落としてくれた。
 そして育児に忙殺されているうちにオトレーレとアルスレイは3歳になった。魔力量はすさまじい上に難しい魔法の呪文を少しずつ覚えていっているのは予想外というか、とにかくすさまじいスピードだと思う。しかもアルグレート含めて誰も教えていないのに。

「いってきまぁす!」

 オトレーレとアルスレイは想定以上に優秀なので、アルグレートらと話し合った結果、宮廷内にある幼稚舎に通い更に家庭教師を付ける事になった。この幼稚舎にはアルグース帝国中から優秀な子達が集っているらしいのと、皇族の子供達もこの幼稚舎に通うので、もしかしたら彼らと何かしら縁が出来るかもしれない。
 今日も彼らは家庭教師達と宮廷の幼稚舎に出かけていった。彼らを見送ったあとは、執務室で仕事に励むアルグレートにコーヒーを出す。

「ありがとう。君が淹れるコーヒーは本当においしいな」
「へへ、コーヒー淹れるの好きなんだよね」

 アルグレートが私の淹れたコーヒーを一口飲むと、息をふっと吐いて美味しいと呟いてくれた。

「今度旅行に行く時、このコーヒーも持っていっていいか?」
「もちろん!」

 今度、静養もかねて家族でグスタフ公爵家所有の別荘へ旅行へ行く事になった。旅行の日程が決まってからはアルグレートの目はさらに輝きを増したように感じる。どうやら私の妊娠判明により新婚旅行が中断となったのがちょっとだけ心残りになっているそうで、私も今度はアルグレート達皆でめいっぱい楽しめたらなと思ったり。

「にしても、ふたりが幼稚舎に行って皇族の子供達と楽しくやっているてなると、少し静かになったな」

 窓の向こうの景色を寂しそうに眺めるアルグレートの頭をそっと撫でる。

「そうだ。昨日書類の整理をしていた所これを見つけてな」

 アルグレートが差し出してきたのは私の名前も記された契約書。そう、私が召喚されてすぐの時に交わした契約が記されたものだ。

「これ……あの時の……!」
「そうだ。でも君はここにいてくれると決めてくれたからもう要らないと思ってな。破棄してもいいか?」
「うん、お願い」

 指をパチンと鳴らした後、契約書は赤くて丸い光となって消えていった。

「これで俺達は真の夫婦だ。もう契約はない。真の番と言うわけだな」
「……そうだね。これからもよろしくね、……私の素敵な旦那様?」

 ちょっぴりカッコつけてみた。驚いた様子を見せるアルグレートだったけど、すぐに軽やかな微笑みを浮かべてそっと私を抱き寄せる。

「んっ……」

 優しくも甘く溺れていきそうな口づけに私はもっと欲しくなる。もしかしたら3人目もそう遠くはないのかもしれない。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

処理中です...