後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第50話 あなたも働きませんか?

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「鈴蘭さん。あなたもうちの治療院で働いてみませんか?」
「は、はあ?! えっそれってすなわち……宮廷で働くって事ですよね?!」
「はい、そうなりますね。陛下。どうですか?」

 いきなりそこで俺に振るのか。と浩明は前置きしたうえで、俺は勿論構わない。と答える。

「だが、どの枠で採用するのだ?」
「陛下、採用とは」
「美華。うちの宮廷にはただの呪術師も巫女は存在しない。必要になれば外部から連れてきていたからな」
「ああ、確かに……」

 するとそこで村長が何か思いついたのか、目を光らせながら浩明の足元で土下座した。

「お願いでございます! うちの孫娘を妃にしてやってくれませんか!」
「は、はあ?!」

 突然のお願いに浩明も鈴蘭もただ驚くより他ない。美華もほえっと口を開けて驚きを表している。

「わが龍族から妃が出れば、この上ない事でございます……!」
「待てお祖父様! いきなり後宮へ行けって言うのか?! 嫌だあんな地獄なんて!」
「地獄ではないですよ? 皆お優しいです」
「と皇后様が申されておる。じゃから心配いらん! まあ、お前は気が強いから虐めようとする妃もおらんじゃろ」

 村長はほほほ……と笑ってはいるが、それでも鈴蘭の後宮に対する悪しき心象は中々変わらないもので嫌だ! と突っぱねるばかり。これには浩明も美華も何も言える事はなかった。
 だが、敗者は勝者の言う事を聞かねばならないのが決闘の決まりでもある。

「……妃が嫌なら、私の女官になるのはどうです? いい人ばかりですし」
「ええ……皇后様の家来なんて嫌です!」
「そうなら妃になるしかないのう」
「っ……わかりました。お祖父様のおっしゃる通り、妃になります……まあ、薬については誰よりも詳しい自信はあります」

 観念したかのように両手の拳を握りしめる鈴蘭。彼女の嫌がってる態度を見ていた浩明は彼女に声をかけようとはしなかった。

「美華、本当にこれでよいのか?」
「私は……治療院で働く方が増えてくれたらそれはそれで万々歳ですので」
「だそうだ、村長」
「ほほう……鈴蘭、良い修行だと思って頑張ると良い。それに妃となれば龍族の女の最高の栄誉じゃ」

 龍族はこれまで皇帝の妃を何人か輩出してきたが先々代の頃から、それらがぴたりと止まっていたそうだ。そして龍族の女にとって後宮入り、それも妃に選ばれる事は最大級の名誉である。

「くっ……わかりました。ですが、呪術の修業は後宮入りしても続けさせていただきますので!」

 きっぱりと己を曲げない事を強調した鈴蘭に浩明はかつてお飾りとして美華を扱っていた時の事を思い出した。

「ああ、好きにするが良い。俺は何も止めぬ」
「……わかりました、陛下」

 こうして、鈴蘭の後宮入りと治療院で働く事が決まったのである。
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