無理矢理勇者として転生させられた元魔王、異世界で無双する

風の吹くまま気の向くまま

文字の大きさ
9 / 11

8話 元魔王、せいけんを配下に加える

しおりを挟む

午後の日差しの中、ローザとパリカーは、元魔王ラバスの帰りを待っていた。
二人は、神殿外の適当な大きさの岩に腰かけている。

「まおうさま、遅いですね」
「試練の間っていう位だから、何か試練に挑戦してるのかも?」

やがて、神殿奥から、誰かがこちらに近付いて来る音が響いてきた。

「まおうさま?」
「でも、何か歩調に乱れが感じられるね。まさか、怪我してる?」

訝る二人が見守る中、神殿の奥から、満身創痍のアリス=フアン=パブロ=アルフォンソ=デ=トドス=ロス=サントス=デ=ボルボン=イ=グレシアが、姿を現した。

「あれ? アリス=フアン=パブロ=アルフォンソ=デ=トドス=ロス=サントス=デ=ボルボン=イ=グレシアさん?」

神殿には、究極の防衛システムが存在して、資格のある勇者以外が侵入すれば、瞬殺されるはず。
しかし、アリス=フアン=パブロ=アルフォンソ=デ=トドス=ロス=サントス=デ=ボルボン=イ=グレシアは、満身創痍で足を引きずってはいるものの、命に別条は無さそうに見えた。

アリス=フアン=パブロ=アルフォンソ=デ=トドス=ロス=サントス=デ=ボルボン=イ=グレシアの方も、ローザとパリカーに気が付いた。

「お前達は、確か……ニセ勇者のハーレム要員」
「失礼ね、ハーレム要員って」

パリカーが、若干憤慨したように言葉を返した。

「せめて大奥と言って。で、私が正妻。この子がお妾さん」
「パリカーさん、大奥もハーレムも同じ意味ですよ。それに、パリカーさんは正妻じゃないし、私もお妾さんじゃ無いです」

ピントのずれた返答をする二人に、冷めた視線を向けた後、アリス=フアン=パブロ=アルフォンソ=デ=トドス=ロス=サントス=デ=ボルボン=イ=グレシアは、足を引きずりながら、そのままどこかへ行ってしまった。

「まおうさまより先に神殿に入ってたって事でしょうか?」
「究極の防衛システムは、どうしたのよ……」

さらに待つ事10分程で、再び、神殿の奥から近付いて来る足音が響いてきた。

「今度こそ、まおうさまでしょうか?」
「でも、足音、二人分聞こえるわね……」

やがて、元魔王ラバスが、神殿の奥から姿を現した。
二人は、腰を上げ、元魔王ラバスに駆け寄ろうとして……

「きゃーーーーー!!?」

ローザの絶叫が響き渡った。

「まおうさま、そ、そ、その方は?」

ローザの視線の先には、元魔王ラバスの背後で、しょんぼりしているニムエの姿があった。
彼女は、当然まだ全裸であった。
しかも、隠すべき場所を隠そうともしていない。
元魔王ラバスは、ニムエの方をちらりと見てから、面倒くさそうに答えた。

「ん? こやつか。こやつは凄い剣じゃ」

ローザは、混乱した。

元々、少し残念なお方だったけれど、とうとう、裸の女性を聖剣と言い張るプレイまで始めてしまったのかしら?

ローザは、ニムエにおずおずと声を掛けた。

「あの……何があったんですか?」
「このまおうさまに……」
「まおうさまに?」
「まおうさまに、私の全てを奪われてしまったの……もう、昔の私には、戻れないわ!」

ニムエは、両手で顔を覆うと、その場に泣き崩れてしまった。
元魔王ラバスは、そんな彼女に面倒くさそうな視線を向けるばかり。
ローザの顔が引きつった。

「まおうさま……」
「いかがいたした、髑髏のローザよ」
「いったい どういう ことでしょうか?」

元魔王ラバスは、ローザの顔を見て、ギクリとした。

目が怖なっとる。
しかもセリフ棒読み。
あの時と同じや……

元魔王ラバスは、努めて冷静に答えた。

「先程も申した通り、こやつは凄い剣じゃ」
「それは いいですから どうして なにも きてらっしゃらないのですか?」
「元が剣であるからして、何も着ておらぬのではないのか?」
「まおうさまに すべてを うばわれた と」
「奪ったというか、不遜な態度を取りおったので、禁呪をぶつけたら、勝手に凄い剣の力使い果たして、相殺したとか何とかで、この姿じゃ」
「むかしの わたしには もどれない っておっしゃってますよ?」
「よく分らんが、凄い剣の姿には戻れないと申しておる」
「まおうさま! ちゃんと責任を取ってあげて下さい!」

いや、だから責任って、何の?

ローザの余りの剣幕に、元魔王ラバスは、思わずたじろいだ。

悪魔大神官ローザ、激怒りやけど、なんでや?
ちゃんと説明したやん。
他にどないせえっちゅうねん。

元魔王ラバスは、再びちらりとニムエの様子を伺った。
すると、手で顔を覆ったまま、指の隙間からこちらの様子を伺う彼女と目が合った。
元魔王ラバスは、彼女に近寄り静かに告げた。

「おい」
「……」
「お前からも説明しろ」
「……さっきしたわ」
「詳細、かつ丁寧に、だ。さもなくば、ここに放置する」



「では、あなた様は、本当に聖剣の化身でいらっしゃるのですね?」

ニムエから、試練の間で起こった事の詳細を聞き、ようやく落ち着きを取り戻したローザが語り掛けた。

「そうなのよ。それで、最後の試練に死合いしよ♪って言ったら、この有様よ。いやになっちゃう」

ローザに貸してもらったローブを肩から羽織ったニムエは、嘆息した。

「あの……本当に、聖剣のお姿には戻れないのですか?」
「戻れないわ。聖剣の力って、特殊なの。一回使い果たしたら、再充填する方法は、無いわ」
「もしかして、まおうさまは、聖剣無しで大魔王エンリルに挑まれる、という事になるのでしょうか?」
「それは大丈夫! 私がついていくから」
「大丈夫……なんですか?」
「大丈夫でしょ。私、元聖剣なのよ?」

どう大丈夫なのかは、さっぱり不明であったが、ニムエは、自信満々で言い切った。
とにかく、ここに留まる理由は無くなった。
一向は、イテオロの街に戻る事にした。


イテオロの魔王城離宮宿屋で、食卓を皆で囲みながら、元魔王ラバスは悩んでいた。
ニムエの扱いについてである。

一応、連れてきてしもたけど、こいつ、能力低過ぎやろ。
レベル1固定、HP1、MP1。
下手したら、転んでも死ぬんちゃうやろか?
こんなん、配下におったら恥ずかしいだけや……

当のニムエは、よほど腹が減っていたのか、その美貌に似つかわしくない勢いで、出された料理を貪り食っていた。
ローザが、声を掛けた。

「ニムエさん、慌てなくても、料理はまだまだありますから」

勇者元魔王ラバスは、滅亡寸前のこの世界の人類にとって、最後の希望。
当然、仲間も含めて、衣食住全てが無料で提供されていた。
料理は、空になる端から、次々と補充されていく。

「ほんはほほひっへほ、はははへっへ…….」
「ええい、食べるか喋るか、どっちかにせんか!」

その時、一匹のハエが、ニムエの料理に近付いて来た。
それに気付いたニムエの目が光った。

―――ゴッ!

刹那、空気が震えた。
先程までハエがいた空間を挟んで、ニムエの真向かいにあった魔王城離宮宿屋の壁が消し飛んだ!

「えっ?」

ローザの目が点になった。

「今のはっ!?」

パリカーが、思わず腰を浮かした。

二人には見えなかったようであったが、元魔王ラバスだけは、全てを見ていた。

な、なんや、こいつ!?
人差し指の風圧だけで、ハエもろとも、壁破壊しやがった!

ニムエは、自身の料理に着地を試みたハエに対し、魔族であるパリカーの動体視力をも上回るスピードで、人差し指を突き出していた。
その間、コンマの下にゼロが2兆5千億個並んで、ようやく1がやってくる位の凄まじさ。

さすがは、元凄い剣というべきか……

「ゴホン」

元魔王ラバスは、咳ばらいをした後、ニムエに向き直った。

「ニムエよ、そなたを今日より我が魔王軍四天王の一人に任ずる。今よりそなたは、凄剣せいけんのニムエと名乗るがよい」

その言葉を聞いたニムエは、食べるのを一時中断し、口いっぱいに頬張ったまま、元魔王ラバスの顔を見た。
彼女の顔が、みるみる明るくなった。

へひへんほひふへっへ聖剣のニムエって……はひはほうありがとうほほははひその代わりひゃんほちゃんとはほっへへ守ってね

嬉しさのあまり、ニムエは、右手のフォークを取り落としてしまった。
それは、真っ直ぐ落下して、偶然そこにあった彼女の足の甲に突き刺さった。


*ニムエは死亡しました*


元魔王ラバスは、一瞬の躊躇のあと、仕方なくスキルを発動した。

【リセット】


なんと、ニムエは生きていた。

「あれ? 今、私??」

元魔王ラバスは、嘆息した。

おいおい、普通、フォーク刺さった位で死ぬか?
こいつ、攻撃力ピカ一、防御力濡れティッシュってやつやな……
四天王にしたんは、早まったか?

元魔王の悩みもどこ吹く風、ニムエは、ひたすら料理を貪り食うのであった。




因みに、破壊された宿屋の壁は、まおうさまの魔力で元通り♪

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...