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第4部 第2章「天使くんと悪魔くん」
第2話『仮想現実のトライアングル』⑴
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夏休みを間近に控えた、とある日の深夜。
某動画配信サイトにて、謎の二人組バーチャルアイドルユニットが華々しくデビューした。
「悪夢代行人・天使様と悪魔様チャンネルへようこそ! 幸せな悪夢担当、聖=エンジェルだよ!」
「皆さん、こんばんは。不幸せな悪夢担当、魅魔=デビルです。以後、お見知り置きを」
可愛らしいゴスロリの少女達はにこやかに挨拶する。名前のとおり、背中には天使と悪魔の翼が生えていた。
配信を見ていた多くのリスナーが「よくある設定のバーチャルアイドルだ」と思っていた。天使だの悪魔だのと名乗ってはいるが、本当に魔法のような力を使えるわけではない、と。
だが……この配信で彼らは思い知ることになる。二人が「本物」の天使様と悪魔様であることを。
「私達は人間に悪夢を見せる試練を科せられた、天使と悪魔の姉妹なんだー。それじゃあさっそく、記念すべき一件目の代行依頼を紹介するよ。魅魔ちゃん、よろしくぅ!」
「はぁい」
魅魔は甘ったるい毒のような声で、カンペを読み上げた。
「悪夢ネーム・レオらぶさんからの依頼です。『天使様と悪魔様、こんばんは! 私は二人のことをよく知らないんですけど、クラスの男子からオススメされたので依頼してみました。私には中学に入ってすぐから付き合っている彼氏がいます。とってもラブラブなのですが、最近同じクラスの女子が彼氏に色目を使ってきて困っています。二人きりで配信したり、彼氏の家に上がったり……勝手なことばかり! 彼氏は"ただの幼馴染だから気にすんな"って言うけど、配信を見てるリスナーは二人をカップルだと思い込んでいます。天使様と悪魔様の力で、あの女をこらしめてください!』」
「フーン。人間って大変ねぇ」
聖は気のない相づちを打つ。
実際、彼女……もとい、彼は依頼人が困っていようが、どうでも良かった。依頼を果たし、「天使様と悪魔様」の知名度が上がれば、それで良かった。
「こらしめるってことは、魅魔の仕事ね。楽できるわー」
「もう。次は聖がやってよね?」
魅魔はブツブツと呪文っぽいセリフを唱え、念じるパフォーマンスをする。
聖も画面に映ってはいないものの、依頼の相手に殺意を向けた。
「聖夜、遊魔! ほんっと、ありがと! おかげで、長内をこらしめられたよー!」
配信の翌日。日野兄弟は学校で、同じクラスの倉洲メイから礼を言われた。彼女に「天使様と悪魔様」をすすめたのは、他ならぬ兄弟だった。
「長内さん、どうなった?」
倉洲は「むふふ」とほくそ笑んだ。
「今朝の配信で、レオが彼氏じゃないって認めたの! "他人の彼氏を取ろうとしてた"って、泣きながら謝ってたわ。勝手に上げた配信も、チャンネルごと消してたし!」
「今日、学校に来てないみたいだね」
「先生に訊いたわ。ショックで、家に引きこもってるって! ざまぁみろ!」
そこへ倉洲の彼氏である柏木レオが、彼女を呼びに来た。倉洲は嬉しそうに、レオと共に教室を出て行く。
遊魔は倉洲が話している間、終始ふてくされていた聖夜をなだめた。
「聖夜、機嫌直しなよ。『天使様と悪魔様』の知名度を上げるためなんだから、こらえないと」
「……分かってるけどさぁ。納得いかねぇよ、こんなの」
兄弟は「天使様と悪魔様」の中の人だった。3Dモデルやボイスチェンジャーなどを駆使し、聖夜が聖を、遊魔が魅魔を演じている。
依頼も、二人がアクムツカイの力を使って叶えていた。配信で紹介するのが条件で、報酬などは受け取っていない。無償の方が依頼が来やすく、話題にもなると考えた。
全ては、館と接触するためだった。
館は四年前、アクムツカイ殺人事件に関して事情聴取を受けたのを最後に、消息を絶っている。もし生きていれば、同じ能力を持つ「天使様と悪魔様」を放ってはおかないだろう。
遊魔は「いいじゃないか」と教室を見回した。
「みんな、幸せそうなんだから」
倉洲はレオに階段裏まで連れて来られた。
このまま授業をサボるのかと思いきや、レオはいつになく真剣に語りかけてきた。
「あのさ。ナミコ……長内をあんなふうにしたのって、お前?」
「なんのこと?」
倉洲は知らぬフリをする。実際、手を下したのは「天使様と悪魔様」なのだから、後ろめたいことは何もない。
するとレオは「もういい」と吐き捨てるように言った。
「俺、ナミコと付き合うことにしたから。別れてくれ」
某動画配信サイトにて、謎の二人組バーチャルアイドルユニットが華々しくデビューした。
「悪夢代行人・天使様と悪魔様チャンネルへようこそ! 幸せな悪夢担当、聖=エンジェルだよ!」
「皆さん、こんばんは。不幸せな悪夢担当、魅魔=デビルです。以後、お見知り置きを」
可愛らしいゴスロリの少女達はにこやかに挨拶する。名前のとおり、背中には天使と悪魔の翼が生えていた。
配信を見ていた多くのリスナーが「よくある設定のバーチャルアイドルだ」と思っていた。天使だの悪魔だのと名乗ってはいるが、本当に魔法のような力を使えるわけではない、と。
だが……この配信で彼らは思い知ることになる。二人が「本物」の天使様と悪魔様であることを。
「私達は人間に悪夢を見せる試練を科せられた、天使と悪魔の姉妹なんだー。それじゃあさっそく、記念すべき一件目の代行依頼を紹介するよ。魅魔ちゃん、よろしくぅ!」
「はぁい」
魅魔は甘ったるい毒のような声で、カンペを読み上げた。
「悪夢ネーム・レオらぶさんからの依頼です。『天使様と悪魔様、こんばんは! 私は二人のことをよく知らないんですけど、クラスの男子からオススメされたので依頼してみました。私には中学に入ってすぐから付き合っている彼氏がいます。とってもラブラブなのですが、最近同じクラスの女子が彼氏に色目を使ってきて困っています。二人きりで配信したり、彼氏の家に上がったり……勝手なことばかり! 彼氏は"ただの幼馴染だから気にすんな"って言うけど、配信を見てるリスナーは二人をカップルだと思い込んでいます。天使様と悪魔様の力で、あの女をこらしめてください!』」
「フーン。人間って大変ねぇ」
聖は気のない相づちを打つ。
実際、彼女……もとい、彼は依頼人が困っていようが、どうでも良かった。依頼を果たし、「天使様と悪魔様」の知名度が上がれば、それで良かった。
「こらしめるってことは、魅魔の仕事ね。楽できるわー」
「もう。次は聖がやってよね?」
魅魔はブツブツと呪文っぽいセリフを唱え、念じるパフォーマンスをする。
聖も画面に映ってはいないものの、依頼の相手に殺意を向けた。
「聖夜、遊魔! ほんっと、ありがと! おかげで、長内をこらしめられたよー!」
配信の翌日。日野兄弟は学校で、同じクラスの倉洲メイから礼を言われた。彼女に「天使様と悪魔様」をすすめたのは、他ならぬ兄弟だった。
「長内さん、どうなった?」
倉洲は「むふふ」とほくそ笑んだ。
「今朝の配信で、レオが彼氏じゃないって認めたの! "他人の彼氏を取ろうとしてた"って、泣きながら謝ってたわ。勝手に上げた配信も、チャンネルごと消してたし!」
「今日、学校に来てないみたいだね」
「先生に訊いたわ。ショックで、家に引きこもってるって! ざまぁみろ!」
そこへ倉洲の彼氏である柏木レオが、彼女を呼びに来た。倉洲は嬉しそうに、レオと共に教室を出て行く。
遊魔は倉洲が話している間、終始ふてくされていた聖夜をなだめた。
「聖夜、機嫌直しなよ。『天使様と悪魔様』の知名度を上げるためなんだから、こらえないと」
「……分かってるけどさぁ。納得いかねぇよ、こんなの」
兄弟は「天使様と悪魔様」の中の人だった。3Dモデルやボイスチェンジャーなどを駆使し、聖夜が聖を、遊魔が魅魔を演じている。
依頼も、二人がアクムツカイの力を使って叶えていた。配信で紹介するのが条件で、報酬などは受け取っていない。無償の方が依頼が来やすく、話題にもなると考えた。
全ては、館と接触するためだった。
館は四年前、アクムツカイ殺人事件に関して事情聴取を受けたのを最後に、消息を絶っている。もし生きていれば、同じ能力を持つ「天使様と悪魔様」を放ってはおかないだろう。
遊魔は「いいじゃないか」と教室を見回した。
「みんな、幸せそうなんだから」
倉洲はレオに階段裏まで連れて来られた。
このまま授業をサボるのかと思いきや、レオはいつになく真剣に語りかけてきた。
「あのさ。ナミコ……長内をあんなふうにしたのって、お前?」
「なんのこと?」
倉洲は知らぬフリをする。実際、手を下したのは「天使様と悪魔様」なのだから、後ろめたいことは何もない。
するとレオは「もういい」と吐き捨てるように言った。
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