今日も聖女は拳をふるう

こう7

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巡礼と唸る拳

聖女VS珍獣な化け物

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怒りで文字通り血で真っ赤っかにしちゃった領主様とハイドンさんを治療。
身体が治っても自分の領地を掻き回された恨みはなかなか晴れる用意が無い。
ロンベルト様が男達と最後に会ったのはつい最近のこと、まだアムネスに滞在している可能性は高い。
あいつらは俺がまだ生きているとは思ってないはず呑気にしているだろう。
すぐさまハイドンさんにアムネス内を大捜索せよときびきび指示を出していた。

珍獣捕獲の指令を出した領主様はくるりと俺の方に向き直るともう表情はおだやか。
怒りは胸の内に押し込んでいるのだろうけど…。

「ふぅーこれで愚か者共は捕まえることが出来るでしょう。アリス様、長旅でお疲れでしょう。我が屋敷でゆっくりとお休みなされ。ただ明日以降でこの町の者達に治療を施して頂けないだろうか?聖女様が亡くなったと知り、治療を望んでいた人達は意気消沈となっております。色々と遭った中でお疲れだと思いますが、何卒お願い致します。」

「ちょっ!?」

自分の領地で暮らす人達を労る目の前の優しい領主様は頭を下げた。
こういう経験がほとんどない俺は思わずびっくり。
聖女だけど平民な俺に貴族が頭を下げるとは…。

「顔をお上げください、ロンベルト様。元々この町でも治療は行なうつもりでしたので…。お願いされなくたって勝手にやっちゃいます。」

俺はおどける様に笑ってみせる。
領主様はほんの少し目を見開くもやがて穏やかな笑みへと変わる。

「貴女はなるべくして聖女様なのですね…。」

俺を見つめる瞳に尊敬が若干追加されている気がする。
まあ、しっかりした人だし信者化はしないだろう。


こうして、本日は旅の疲れを癒やすため申し訳ないけどロンベルト様のお屋敷でゆっくりさせて頂きやす。
もちろんにっこりシーナさんにガッと掴まれ、ドレス姿に変身したよ。
ロンベルト様の息子さんがポケーと見つめてたけどなんだろう?
治療して欲しいなら遠慮なく言ってねと、笑って伝えたら顔を背けられた。

あれ、出会ってすぐに嫌われてる?
妹ちゃんはこんなに抱きついてくるのに。
胸にぐりぐりと顔を埋めてクンカクンカしないで娘さん。


今日はこれでお休み。
枕を持って扉前で待機していた充血気味の娘ちゃんと一緒に就寝。
明日になれば案外もう馬鹿共の居場所が分かってたりしてね。




……おはようございます!

朝が来た。
目を開けたらカッと目を開いた娘さんとシーナさんが居た。
びっくりした、いつかの姫様みたいに寝付けなかったのだろうか。

本日は治療が待っている。
なので、朝食を済ませたらさっさとローブへと衣装を変えた。


さあて、今日もいっぱい治療をしますかな。

ここでドーンのドカーン。
遠くから目覚ましにしては物騒な衝撃音が轟く。
窓から遠くを見れば煙が映る。


何かあったね、絶対に。
いざ行こう現場へ。


危険ですからまずは我々が確認をと無粋なことを言うノートンの腕を掴んで強引に牽引して行く。


そして到着。
煙は土煙のようで火事ではないみたい、少し安心。

けれど、筋肉もりもりで成人男性の何倍もの体格をした怪物みたいな男達が大暴れをしていた。

全裸で。
申し訳ない程度に腰に布が偶発的に巻かれているけど。


乙女な俺には刺激が強すぎるよぅ……なんてね。


とりあえず、殴って逮捕しますか。


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