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巡礼と唸る拳
聖女アリスの個人レッスン3
ノートンの戦力強化を開始してもう半月ほど経過した。
けれどまだまだ基礎が甘い。
こういう特訓は継続してこそ力となる。
ようやく鉄をも砕く拳の基盤への一歩を歩んだってところ。
でも、ここ最近は何度も折りながらの腕立て伏せに王都外周を4周走り込み、あと追加で拳の皮を厚くするために大木へ何度も打ち込み。
大木が折れるようになったら次は岩だね。最終的には鉄の塊を壊せるくらいになろう。
なるべく騎士のお勤めに支障が出ないよう軽めにはしているけれど、やっぱり両立は大変なのかもしれない。
全てを終えた時には死相が見えるほどに疲れ切っちゃう。
でも、ノートンも男の子。ロコルお姉ちゃんが耳元で囁く度に元気になる。ふふ、良きかな良きかな。
しかし、毎回ロコルお姉ちゃんが居てくれる訳では無い。これだといずれ心が荒んでしまうかもしれない。
ここは俺の気晴らし方法の一つである試合をしよう。
誰かと戦えればすっきりとした気持ちになるはずだ。
そして、やって来ました王城にある訓練場。
ロコルお姉ちゃんも一緒だよ。
事前にスゥ様にお願いしてみたら快く許可を貰えた。
「じゃあ、今日は目一杯俺と戦って心を癒やそう!」
「え?い、いやあの…。」
ニッコリ笑顔で拳を構える俺。
それにしどろもどろなノートン。
どうした?
さあ、剣を抜いてもいいよ。幾らでも斬りかかっておいで。
「アリス様、ノートン様は聖女様でございますアリス様に御遠慮していらっしゃるかと思われます。どういった経緯であれ守る御相手に刃を向けるのは躊躇われているかと。」
なかなか構えて来ない理由をお姉ちゃんが説明してくれた。
「そうなの、ノートン?」
「え、あ、はいそうで…。」
「ですから、私共がノートン様の御相手を致します。」
「へ?」
ノートンの間抜けな声が響く。
その声の向けた先にはロコルお姉ちゃんと何故かスゥ様とまさかまさかのミーナちゃん。
ミーナちゃんっていつの間にこんな王城に頻繁に来れる娘になったんだろう。
近付いて来てた存在には気付いていたけどまさか観戦ではなく実践とは。
「もしかして、3人でノートンの相手を?いや、流石にお姫様が…。」
「はい、ですから私はお姉様と一緒にお茶をしています。行きましょう!」
スゥ様が満面の笑みで腕を掴んで引っ張る。
でも、ノートンの訓練が…。
「アリス様、私達にお任せを。」
「お姉様、ミーナ頑張ります!そして、御相手が終わり次第すぐにお茶会ご参加します!」
「え、あ、あの…。」
女の子二人とはいえ怪我しないか心配だなぁ。
ロコルお姉ちゃんは鍛えてるから問題ないけど、ミーナちゃんは大丈夫かな。
けど、大きな大槌をぶんぶん振り回す姿を見たら大丈夫な気がした。
「だったら、お任せしようかな。でも、二人共怪我しないようにね。ノートンも相手は女の子なんだから剣は禁止ね。」
それぐらいの足枷が無いと少女のミーナちゃんが危ない。
ノートンはなんで絶望した顔になるかなぁ。
こんなちっちゃい女の子に剣を向けるなんてありえないでしょう。
「じゃあ、ノートン頑張ってね。」
「ちょ、アリス様!いや、この二人あかん…。」
俺とノートンの間に割って入るようにお姉ちゃんとミーナちゃん。
「「ふふ、お手柔らかにお願い致します。」」
この時二人がどんな表情をしていたか俺には分からない。
ただノートンが武者震いでもの凄く震えていたのは分かった。
俺はスゥ様に連れられてお茶を楽しむ。
今日は珍しく楽士が呼ばれていた。
戦闘ばかりの俺だけど音楽を聴きながらお菓子を摘むのも悪くない。
ちょっと乙女力が上がったような気がします。
何処かで叫ぶ声は音楽に酔いしれる聖女様には届かなかった。
あ、ノートンは生きてますからね。
その後、ちゃんと治療もしたからね。
どうしてあんな大怪我になったかは誰も教えてくれなかったけど…。
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