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巡礼と唸る拳
番外編 ガルム団長見守る
最近、俺の部下であり仲間達に変化が起きた。
前回の巡礼で護衛を務めた奴らだ。
元々他の兵達よりも日々の鍛錬を多く励んでいる奴らだったが、あの聖女様との巡礼の後からはより励むようになった。
しかもだ、試合を観てても戦い方や動きが面白くなっている。以前は真面目一直線な型にはまった構えや戦闘をして騎士らしいといえる。
けど、今はなんだか勝つ為なら手段を惜しまない。悪く言えば卑怯な戦い方だ。
剣を地面から上へ擦りながら振り上げ土煙をあげたり、相手に石を投げつけひるませようと姑息だ。
まぁ、戦いってのはそんなもんだ。騎士道精神なんてもんがあるが、護るべき者の為なら死にものぐるいで全てを尽くして戦わねばならない。
こいつらの歳でそういう考え方にまで至ったなら大したもんだ。
今回の巡礼で自分達の不甲斐なさを知って恥じ、苦い経験を経て一皮むけたみたいだな。
しかし、肉屋のおっちゃんや薬屋の婆ちゃんに負けていられないって…お前達は何と戦っているんだ?
理由はどうあれそれが成長に繋がっているのであれば良い。
さて悔しい経験を経て成長する部下達だが、この中で最も急成長しているのがノートンだ。
なんでも直々にあの嬢ちゃんいや聖女様から稽古をつけてもらっているらしい。
羨ましい。
あの可憐でか弱い淑女と称される聖女から少しずれた暴力的でかっこいい変わった聖女様。
見た目と違って驚かされることばかりだが、強さは本物。俺が長年掛けても到達し得なかった領域に立つ者。
武人としても尊敬してしまう。
そんな方の特訓だ、並大抵のものではない。
度々、ノートンと城で会えば怪我こそないが憔悴しきった様子で何度も遠い目で空をずっと眺めていたな。
時折、横顔から垣間見えた一筋のキラキラとした線は見逃しておこう。
あと、ポツリと人が怖いって呟いていたけどとりあえずは黙って聞き流した。
今度呑みに誘おう、俺が奢るよ。
しかし、暗い表情とは裏腹に確実に力をつけていくノートン。
嬉しそうに死んだ目で大木を拳で倒せるようになりましたと報告してきた時は泣いたよ。
訓練場での試合でも如実に動きが変わった。
5対5の団体戦では絶えず俯瞰的に周囲を把握し後方にいる仲間にすら的確に指示をしている。
前と比べ物にならないほど周りを警戒する力がついたようだ。
「この程度ではまだあの悪夢から逃れることは出来ません。知ってます?拳や包丁は避けてもまた何度でも死角から飛んでくるんですよ、はは。」
また死んだような目で乾いた笑いをする。
お酒何回でもおかわりして良いからな。
な、なにはともあれこれでまた王国を守る我らが騎士団はより一層強固になれたことだろう。
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どうかこの国を牛耳ろうとはしないでください。
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