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第七章 告白
夜更けの語らい
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夕飯を食べながら、二人は離れていたこの一週間を埋めるように、たくさん話をした。
大学のこと、将来のこと、お互いの家族のこと。今まで話せなかったような深い話題まで。恋人になった今だからこそ、自然に言葉が交わせる。直人は自分の実家の話、健は兄との関係について。お互いの過去や、将来への不安、夢について。
「俺、直人と出会えて本当によかった」
「僕もだよ。健がいなかったら、こんな気持ちになることもなかった」
食事の後も話は尽きなかった。シャワーを浴びて、二人並んでソファに腰をかける。健の髪がまだ少し湿っていて、シャンプーのいい香りがする。
「あー、まだ信じられないなぁ」
健は天井を仰いで大きなため息をついた。
「何が?」
「直人が本当に俺のこと好きだってこと。夢じゃないよね?」
直人は健の横顔を見つめる。その表情は今までに見たことがないほど穏やかだった。
「夢じゃないよ。ほら」
直人は健の手を取り、自分の胸に当てた。
「心臓の音、聞こえる? 健のことを考えると、いつもこんなふうにドキドキするんだ」
健は目を見開いて、直人の胸に手を当てたまま頷いた。
「すごい……本当にドキドキしてる」
「僕の気持ち、信じてくれる?」
「うん」
健は涙ぐんで頷いた。
「嬉しい。今まで誰にもこんなふうに想われたことがなかったから」
「だったら、毎日でも『好きだ』って伝えるよ。毎日キスもする。そして、今まで『擬似恋人』ではできなかった、『本当の恋人』しかできないことも、いっぱいする」
健が目を見開く。直人の言葉が意味することを理解したのだろう。
「どうしたの? 直人。今までこんなに積極的じゃなかったのに……」
「僕は決めたんだ。後悔しない選択をするって。だから、自分の気持ちに正直になる。それだけ健を愛しているってことだから」
真剣な眼差しで語ると、健は恥ずかしそうに俯いた。
「直人が……こんなに情熱的な人だとは思わなかった……」
「ごめん! 重いかな……」
直人は急に不安になった。付き合ってすぐにこんなことを言うなんて、引かれてしまうのではないだろうか。
「ううん、嬉しい。今までこんなに深い愛情をもらったことがないから……でも、一つだけ約束して」
「何?」
「もし俺のこと嫌いになったら、ちゃんと言って」
健は直人の両手を自分の手で包み込んだ。その手がとても温かく、心地よい。
「そ、そんなことにならないよ」
「でも、人の心って分からないものでしょ? だから、その時は正直に言ってほしい。俺も、直人の負担になりたくないから」
元恋人に裏切られた時、正直に話してもらえなかったのがつらかったのだろう。それを思うと、直人の胸がちくりと痛んだ。
「分かった。でも、健も同じだからね。僕のこと嫌いになったら、いつでも言って」
健は大きく頷いた。
「うん。お互い正直でいようね。それが一番大切だと思う」
気づけば日付が変わろうという時間になっていた。
「今日は僕の部屋で寝よう?」
直人は健の手を引き、寝室へと向かった。これからまた毎日、健と一緒に過ごすことができる――その事実が嬉しくて、足取りは自然と軽やかになった。
寝室に入ると、健は少し緊張しているようだった。一緒のベッドで寝るのは初めてではないが、恋人として眠るのは今夜が初めてだ。
「どっち側がいい?」
直人が聞くと、健は少し考えてから答えた。
「窓側がいいかな。朝日で起きるのが好きだから」
「分かった」
二人はそれぞれベッドに入る。最初は少し距離を置いていたが、健が恥ずかしそうに直人の方に寄ってきた。
「直人……」
「うん?」
「手、つないでもいい?」
直人は無言で健の手を取った。布団の中で繋がれた手が、とても温かかった。
「今日、本当にありがとう。勇気を出して呼び出してくれて」
「僕の方こそ、ありがとう。来てくれて、気持ちを聞いてくれて」
暗闇の中で、お互いの声だけが響く。
「これからも、毎日一緒にいられるんだね」
健の声に、安堵と喜びが混じっている。
「うん。毎日、おはようって言い合って、ただいまって言い合って」
「毎日、好きだって伝え合って」
「毎日、キスして」
二人は小さく笑った。未来への期待で胸がいっぱいになる。
「直人、好きだよ」
「僕も、健が好きだよ」
闇の中で、もう一度確かめ合うように言葉を交わす。
健の寝息が聞こえ始めた頃、直人はまだ眠れずにいた。隣で眠る健の寝顔を見つめながら、この一週間のことを振り返る。
一週間前、健が出て行った夜。あの時は本当に絶望的な気持ちだった。もう二度と、健と笑い合うことはないのかもしれないと思った。それが今では、こうして隣で眠っている。恋人として。
――僕は、やっと選択したんだ。
誰かを愛するということ。その人と一緒にいたいと願うこと。そして、その気持ちを勇気を持って伝えること。すべて、自分で選び取った結果だった。
健が小さく寝返りを打ち、直人の方を向いた。寝顔はとても穏やかで、幸せそうに見える。直人は健の髪を優しく撫でると、彼の額にそっとキスをした。
「おやすみ、健。明日もよろしく」
小さくそう呟いて、直人もようやく眠りについた。
翌朝、目を覚ますと健はまだ眠っていた。朝日が窓から差し込み、健の髪を金色に染めている。直人は起き上がらずに、しばらくその寝顔を見つめていた。
――これが、僕の日常になるんだ。
嬉しさと少しの不安、そして大きな期待。様々な感情が胸の中で混じり合っている。でも、一番強いのは愛おしさだった。この人を大切にしたい、守りたい、幸せにしたいという気持ち。
健がゆっくりと目を開けた。
「おはよう、直人」
「おはよう、健」
お互いに微笑み合う。何の変哲もない朝の挨拶だったが、恋人として交わす初めての「おはよう」だった。
「今日から、また一緒だね」
「うん。ずっと一緒」
健が直人に身を寄せ、その胸に顔を埋める。
「幸せ」
健の呟きが、直人の心を温かくした。
「僕も、幸せだよ」
窓の外から、新しい一日の始まりを告げる鳥の声が聞こえてくる。二人の新しい生活も、今日から始まるのだ。
「直人」
「何?」
「愛してる」
健が顔を上げ、真剣な目で直人を見つめて言った。
「僕も、愛してる」
直人も同じように、心を込めて答えた。
そして二人は、新しい朝の光の中で、深いキスを交わした。
この先、様々なことがあるだろう。喧嘩をすることもあるかもしれない。お互いに嫌な部分を発見することもあるかもしれない。でも、それでも一緒にいたいと思える相手に出会えたこと。そして、勇気を出してその気持ちを伝えられたこと。
直人は、初めて自分の人生を自分で選択できたと実感していた。
健を選んだ。この恋を選んだ。そして、二人の未来を選んだ。
河川敷の橋で交わした告白から始まった、本当の恋人としての日々。それは、直人にとって人生で最も大切な選択の結果だった。
大学のこと、将来のこと、お互いの家族のこと。今まで話せなかったような深い話題まで。恋人になった今だからこそ、自然に言葉が交わせる。直人は自分の実家の話、健は兄との関係について。お互いの過去や、将来への不安、夢について。
「俺、直人と出会えて本当によかった」
「僕もだよ。健がいなかったら、こんな気持ちになることもなかった」
食事の後も話は尽きなかった。シャワーを浴びて、二人並んでソファに腰をかける。健の髪がまだ少し湿っていて、シャンプーのいい香りがする。
「あー、まだ信じられないなぁ」
健は天井を仰いで大きなため息をついた。
「何が?」
「直人が本当に俺のこと好きだってこと。夢じゃないよね?」
直人は健の横顔を見つめる。その表情は今までに見たことがないほど穏やかだった。
「夢じゃないよ。ほら」
直人は健の手を取り、自分の胸に当てた。
「心臓の音、聞こえる? 健のことを考えると、いつもこんなふうにドキドキするんだ」
健は目を見開いて、直人の胸に手を当てたまま頷いた。
「すごい……本当にドキドキしてる」
「僕の気持ち、信じてくれる?」
「うん」
健は涙ぐんで頷いた。
「嬉しい。今まで誰にもこんなふうに想われたことがなかったから」
「だったら、毎日でも『好きだ』って伝えるよ。毎日キスもする。そして、今まで『擬似恋人』ではできなかった、『本当の恋人』しかできないことも、いっぱいする」
健が目を見開く。直人の言葉が意味することを理解したのだろう。
「どうしたの? 直人。今までこんなに積極的じゃなかったのに……」
「僕は決めたんだ。後悔しない選択をするって。だから、自分の気持ちに正直になる。それだけ健を愛しているってことだから」
真剣な眼差しで語ると、健は恥ずかしそうに俯いた。
「直人が……こんなに情熱的な人だとは思わなかった……」
「ごめん! 重いかな……」
直人は急に不安になった。付き合ってすぐにこんなことを言うなんて、引かれてしまうのではないだろうか。
「ううん、嬉しい。今までこんなに深い愛情をもらったことがないから……でも、一つだけ約束して」
「何?」
「もし俺のこと嫌いになったら、ちゃんと言って」
健は直人の両手を自分の手で包み込んだ。その手がとても温かく、心地よい。
「そ、そんなことにならないよ」
「でも、人の心って分からないものでしょ? だから、その時は正直に言ってほしい。俺も、直人の負担になりたくないから」
元恋人に裏切られた時、正直に話してもらえなかったのがつらかったのだろう。それを思うと、直人の胸がちくりと痛んだ。
「分かった。でも、健も同じだからね。僕のこと嫌いになったら、いつでも言って」
健は大きく頷いた。
「うん。お互い正直でいようね。それが一番大切だと思う」
気づけば日付が変わろうという時間になっていた。
「今日は僕の部屋で寝よう?」
直人は健の手を引き、寝室へと向かった。これからまた毎日、健と一緒に過ごすことができる――その事実が嬉しくて、足取りは自然と軽やかになった。
寝室に入ると、健は少し緊張しているようだった。一緒のベッドで寝るのは初めてではないが、恋人として眠るのは今夜が初めてだ。
「どっち側がいい?」
直人が聞くと、健は少し考えてから答えた。
「窓側がいいかな。朝日で起きるのが好きだから」
「分かった」
二人はそれぞれベッドに入る。最初は少し距離を置いていたが、健が恥ずかしそうに直人の方に寄ってきた。
「直人……」
「うん?」
「手、つないでもいい?」
直人は無言で健の手を取った。布団の中で繋がれた手が、とても温かかった。
「今日、本当にありがとう。勇気を出して呼び出してくれて」
「僕の方こそ、ありがとう。来てくれて、気持ちを聞いてくれて」
暗闇の中で、お互いの声だけが響く。
「これからも、毎日一緒にいられるんだね」
健の声に、安堵と喜びが混じっている。
「うん。毎日、おはようって言い合って、ただいまって言い合って」
「毎日、好きだって伝え合って」
「毎日、キスして」
二人は小さく笑った。未来への期待で胸がいっぱいになる。
「直人、好きだよ」
「僕も、健が好きだよ」
闇の中で、もう一度確かめ合うように言葉を交わす。
健の寝息が聞こえ始めた頃、直人はまだ眠れずにいた。隣で眠る健の寝顔を見つめながら、この一週間のことを振り返る。
一週間前、健が出て行った夜。あの時は本当に絶望的な気持ちだった。もう二度と、健と笑い合うことはないのかもしれないと思った。それが今では、こうして隣で眠っている。恋人として。
――僕は、やっと選択したんだ。
誰かを愛するということ。その人と一緒にいたいと願うこと。そして、その気持ちを勇気を持って伝えること。すべて、自分で選び取った結果だった。
健が小さく寝返りを打ち、直人の方を向いた。寝顔はとても穏やかで、幸せそうに見える。直人は健の髪を優しく撫でると、彼の額にそっとキスをした。
「おやすみ、健。明日もよろしく」
小さくそう呟いて、直人もようやく眠りについた。
翌朝、目を覚ますと健はまだ眠っていた。朝日が窓から差し込み、健の髪を金色に染めている。直人は起き上がらずに、しばらくその寝顔を見つめていた。
――これが、僕の日常になるんだ。
嬉しさと少しの不安、そして大きな期待。様々な感情が胸の中で混じり合っている。でも、一番強いのは愛おしさだった。この人を大切にしたい、守りたい、幸せにしたいという気持ち。
健がゆっくりと目を開けた。
「おはよう、直人」
「おはよう、健」
お互いに微笑み合う。何の変哲もない朝の挨拶だったが、恋人として交わす初めての「おはよう」だった。
「今日から、また一緒だね」
「うん。ずっと一緒」
健が直人に身を寄せ、その胸に顔を埋める。
「幸せ」
健の呟きが、直人の心を温かくした。
「僕も、幸せだよ」
窓の外から、新しい一日の始まりを告げる鳥の声が聞こえてくる。二人の新しい生活も、今日から始まるのだ。
「直人」
「何?」
「愛してる」
健が顔を上げ、真剣な目で直人を見つめて言った。
「僕も、愛してる」
直人も同じように、心を込めて答えた。
そして二人は、新しい朝の光の中で、深いキスを交わした。
この先、様々なことがあるだろう。喧嘩をすることもあるかもしれない。お互いに嫌な部分を発見することもあるかもしれない。でも、それでも一緒にいたいと思える相手に出会えたこと。そして、勇気を出してその気持ちを伝えられたこと。
直人は、初めて自分の人生を自分で選択できたと実感していた。
健を選んだ。この恋を選んだ。そして、二人の未来を選んだ。
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