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プロローグ
『神様との対話』
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俺が目を覚ますと、そこは明らかに地球とは違う場所だった。
床以外のところはすべて白一色。ずっと見ていると目がチカチカしてきそうだ。
ただ、白い太陽なんかが浮かんでいるのはちょっと面白いかも。
床は水のように透明で、動くと波紋が広がる。
最も、寝っ転がっても濡れたり溺れたりはしないけど。
「お目覚めになられましたか。絹川空さん」
しばらく床の波紋を見ていると、頭上から声が響いてきた。
顔を上げると、若い女性が立っていた。恐らく人間ではないが。
というのも、顔が整いすぎていて、俺から見たら逆に気持ち悪い。
所謂、左右対称というやつである。
若い女性は露骨に顔を顰めた後、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、言いたいことはいくつもありますが、今はいいでしょう。私はあなたの推測通り、人外ですね。女神というやつです。最も、地球の女神ではありませんが」
「はあ、そうなんですか」
いきなりカミングアウトをされても、反応に困るのでやめてほしい。
というかさりげなく心を読まれているのだが。
ちなみに俺はここに来てから女神に話しかけられるまで一言も喋っていない。
“あなたの推測通り”という言葉が出るためには、俺の心を読まなければいけないのだ。
「あなたは今回、特別に異世界にいける権利を獲得できたんですよ」
「・・・どうしてですか?俺、何かしましたっけ・・・」
「理由は物凄く単純。この神界に来る死者があなたで1000人目だから」
理由軽っ!それだけの理由で異世界に行ける権利を獲得出来るのか。
まあ、今はそれよりも気になるワードが出てきていた。
「今、死者って言いましたよね?やっぱり俺、死んだんですか?」
「ええ。死なないとここにはこれませんから」
女神が鷹揚に頷いた。
やっぱり死んじまったのか。まあここに来た時から感づいてはいたけど。
それにしても1000人目って言ってたっけ?意外と少ないんだな。
「神界はここだけではありませんから。この神界は出来たばかりで小さいので、来る死者も少ないんです。特にあなたのような若い人は珍しいですね」
「なるほど。1000人目記念でしかも若いから転生させてあげるよということですか?」
「ええ。あなたの人生が今までここに来た1000人の中で一番不憫だったからっていう理由もありますがね。というか、むしろそっちの方がメインかも」
バッサリと言い切りやがったぞこの女神。そんなに俺の人生は不憫だったか?
だが、お世辞にもいいとはいえない人生だったのも事実。
17年間生きてきて、楽しさを感じられたのはたったの3年間だけだったのだから。
両親は早くに交通事故が原因で亡くなり、俺は孤児院に預けられた。
賠償金で費用は賄えるとか何とか聞いた覚えがある。
そこで受けたのは、陰湿なイジメ。ハッキリ言って人生に絶望させられた。
その時はまだ3歳くらいだったのにね。
4年間、年上からのイジメに耐えた俺を褒めてほしい。
7歳の時に引き取られ、やっと地獄の生活から抜け出せたと思ったら、俺を引き取ってくれた叔父は借金に追われ、俺を残して蒸発。
もともとギャンブル好きな人だったと聞いたので、別におかしなことでもない。
再び孤児となってしまった俺は保護され、別の孤児院に入れられた。
だが、ここは上下関係が激しかった。その関係はまるで主人と奴隷のよう。
実際に主人側、奴隷側と呼んでいたしね。
9歳だった俺は十分、主人側にあたる年齢だったから、やっと希望が見えてきた。
だが、そんな甘い希望はすぐに打ち砕かれることとなる。
新人ということで奴隷側になってしまったのだ。8歳の主人側もいたのにだよ?
そしてこの奴隷生活、果てしないキツさがある。
料理、配膳、洗濯など、家事という家事は奴隷側の仕事。
主人側はそれを有難がりもせずに使うだけ、食べるだけ。俺はいつしか笑顔を忘れていた。
だが、ここで人生の絶頂期を迎える。
主人側で最年長になったばかりの悠という少年が俺を配下に加えたのだ。
普通であれば、配下に加えられるのは奴隷側にとって最も避けたい事態になる。
配下に加えられたら、外の人間には手出し無用となるのが最大の理由。
酷い扱いを受けようが、その人と主人以外は誰もそのことを知れない。
俺も加えられた当初は抜け殻のような表情をしていたことだろう。
だが、予想に反してこの悠という少年は僕にとても良くしてくれた。
まるで友達のように接してくれて、仕事も激減。
俺にとっては最高の人物であり、彼と過ごす時間は最高の時間だった。
1回、俺はそんな扱いでいいのかという疑問をぶつけたことがある。
悠は、最年長になったんだから誰にも文句は言わせないと言ってくれた。
その答えを聞いて、悠が神様に思えたよ。
そんな感じで5年間を過ごし、14歳の時に2回目の引き取りを迎える。
悠との別れは俺の人生の中で一番辛かった。悲しさと寂しさで胸が張り裂けそうだった。
そして、俺を引き取った伯母は束縛が激しい人だった。
門限から生活のルールに至るまで、厳しく管理される生活。
だが、学費は十分に出してくれるようだったので、受験をして高校に進学。
頭を何度も下げて、ようやく図書委員になることを許してもらったのは記憶に新しい。
そして、絹川空は交通事故で17年の生涯に幕を下ろしたのだ。
再開を誓った悠との永遠の別れという手土産も付けて。
――うん。回想しても悲しくなるだけだったな。
「・・・話を戻しましょう。転生するにあたり、何か所望することはありますか?」
「所望することですか・・・。俺は何を所望できるんですか?」
例えが無いと分かりにくい。美少年にしてくれとかそういうのも所望できるのだろうか。
「そうですね・・・例えば貴族になりたいとか、商人になりたいとかですね。後は、冒険者になりたいというのでしたら、どこかの次男とか三男に転生させてあげることもできますよ」
立場をいじれるといったところだろう。後はまた聞き捨てならないワードが1つ。
「冒険者?もしかしてギルドがあったり、魔物とかがいたりします?」
「ええ、バッチリと。ギルドもありますし、ドラゴンとかもいますよ」
ドラゴンは見てみたい気がする。というか、完全にライトノベルの世界やん。
前世で何回も読んだよ。剣と魔法と貴族の世界!
中世ヨーロッパくらいの時代の世界に転生しちゃうやつじゃん!
女神が目の前にいる時点で既にライトノベルの世界なのかもしれないが、冒険者とか魔物とか聞くと、よりワクワクしてくるのは何でだろう。
異世界っぽさが色濃く出るからだろうか?
「じゃあ・・・指示する人になりたいです。指示しても誰も文句を言わない、TOPの座についてみたいんです」
目の前で頬を膨らませている女神に希望を伝える。
せっかく異世界で生を受けられるのだ。また指示されるだけの人生は勘弁願いたい。
「承りました。それでは最後の質問です。剣と魔法、どちらの方をより使いたいですか?」
諦めたように女神が尋ねてきた。
おお!やっぱり魔法も使えるのか。それはもちろん・・・。
「魔法でお願いします!」
「了解です。それでは、絹川空さん。2回目の人生を存分にお楽しみください」
その言葉を最後に、俺の意識は糸が切れたようにプツンと途切れた。
だがこの時、俺は最大の失言をしていたのである。
中世ヨーロッパの世界で指示しても誰も文句を言わないとなれば、どんな立場なのか。
それを考えていなかったのだ。
「絹川空さん・・・。良い“国王”になることを願ってますよ」
女神のこの呟きは、誰にも聞こえていなかった。
床以外のところはすべて白一色。ずっと見ていると目がチカチカしてきそうだ。
ただ、白い太陽なんかが浮かんでいるのはちょっと面白いかも。
床は水のように透明で、動くと波紋が広がる。
最も、寝っ転がっても濡れたり溺れたりはしないけど。
「お目覚めになられましたか。絹川空さん」
しばらく床の波紋を見ていると、頭上から声が響いてきた。
顔を上げると、若い女性が立っていた。恐らく人間ではないが。
というのも、顔が整いすぎていて、俺から見たら逆に気持ち悪い。
所謂、左右対称というやつである。
若い女性は露骨に顔を顰めた後、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、言いたいことはいくつもありますが、今はいいでしょう。私はあなたの推測通り、人外ですね。女神というやつです。最も、地球の女神ではありませんが」
「はあ、そうなんですか」
いきなりカミングアウトをされても、反応に困るのでやめてほしい。
というかさりげなく心を読まれているのだが。
ちなみに俺はここに来てから女神に話しかけられるまで一言も喋っていない。
“あなたの推測通り”という言葉が出るためには、俺の心を読まなければいけないのだ。
「あなたは今回、特別に異世界にいける権利を獲得できたんですよ」
「・・・どうしてですか?俺、何かしましたっけ・・・」
「理由は物凄く単純。この神界に来る死者があなたで1000人目だから」
理由軽っ!それだけの理由で異世界に行ける権利を獲得出来るのか。
まあ、今はそれよりも気になるワードが出てきていた。
「今、死者って言いましたよね?やっぱり俺、死んだんですか?」
「ええ。死なないとここにはこれませんから」
女神が鷹揚に頷いた。
やっぱり死んじまったのか。まあここに来た時から感づいてはいたけど。
それにしても1000人目って言ってたっけ?意外と少ないんだな。
「神界はここだけではありませんから。この神界は出来たばかりで小さいので、来る死者も少ないんです。特にあなたのような若い人は珍しいですね」
「なるほど。1000人目記念でしかも若いから転生させてあげるよということですか?」
「ええ。あなたの人生が今までここに来た1000人の中で一番不憫だったからっていう理由もありますがね。というか、むしろそっちの方がメインかも」
バッサリと言い切りやがったぞこの女神。そんなに俺の人生は不憫だったか?
だが、お世辞にもいいとはいえない人生だったのも事実。
17年間生きてきて、楽しさを感じられたのはたったの3年間だけだったのだから。
両親は早くに交通事故が原因で亡くなり、俺は孤児院に預けられた。
賠償金で費用は賄えるとか何とか聞いた覚えがある。
そこで受けたのは、陰湿なイジメ。ハッキリ言って人生に絶望させられた。
その時はまだ3歳くらいだったのにね。
4年間、年上からのイジメに耐えた俺を褒めてほしい。
7歳の時に引き取られ、やっと地獄の生活から抜け出せたと思ったら、俺を引き取ってくれた叔父は借金に追われ、俺を残して蒸発。
もともとギャンブル好きな人だったと聞いたので、別におかしなことでもない。
再び孤児となってしまった俺は保護され、別の孤児院に入れられた。
だが、ここは上下関係が激しかった。その関係はまるで主人と奴隷のよう。
実際に主人側、奴隷側と呼んでいたしね。
9歳だった俺は十分、主人側にあたる年齢だったから、やっと希望が見えてきた。
だが、そんな甘い希望はすぐに打ち砕かれることとなる。
新人ということで奴隷側になってしまったのだ。8歳の主人側もいたのにだよ?
そしてこの奴隷生活、果てしないキツさがある。
料理、配膳、洗濯など、家事という家事は奴隷側の仕事。
主人側はそれを有難がりもせずに使うだけ、食べるだけ。俺はいつしか笑顔を忘れていた。
だが、ここで人生の絶頂期を迎える。
主人側で最年長になったばかりの悠という少年が俺を配下に加えたのだ。
普通であれば、配下に加えられるのは奴隷側にとって最も避けたい事態になる。
配下に加えられたら、外の人間には手出し無用となるのが最大の理由。
酷い扱いを受けようが、その人と主人以外は誰もそのことを知れない。
俺も加えられた当初は抜け殻のような表情をしていたことだろう。
だが、予想に反してこの悠という少年は僕にとても良くしてくれた。
まるで友達のように接してくれて、仕事も激減。
俺にとっては最高の人物であり、彼と過ごす時間は最高の時間だった。
1回、俺はそんな扱いでいいのかという疑問をぶつけたことがある。
悠は、最年長になったんだから誰にも文句は言わせないと言ってくれた。
その答えを聞いて、悠が神様に思えたよ。
そんな感じで5年間を過ごし、14歳の時に2回目の引き取りを迎える。
悠との別れは俺の人生の中で一番辛かった。悲しさと寂しさで胸が張り裂けそうだった。
そして、俺を引き取った伯母は束縛が激しい人だった。
門限から生活のルールに至るまで、厳しく管理される生活。
だが、学費は十分に出してくれるようだったので、受験をして高校に進学。
頭を何度も下げて、ようやく図書委員になることを許してもらったのは記憶に新しい。
そして、絹川空は交通事故で17年の生涯に幕を下ろしたのだ。
再開を誓った悠との永遠の別れという手土産も付けて。
――うん。回想しても悲しくなるだけだったな。
「・・・話を戻しましょう。転生するにあたり、何か所望することはありますか?」
「所望することですか・・・。俺は何を所望できるんですか?」
例えが無いと分かりにくい。美少年にしてくれとかそういうのも所望できるのだろうか。
「そうですね・・・例えば貴族になりたいとか、商人になりたいとかですね。後は、冒険者になりたいというのでしたら、どこかの次男とか三男に転生させてあげることもできますよ」
立場をいじれるといったところだろう。後はまた聞き捨てならないワードが1つ。
「冒険者?もしかしてギルドがあったり、魔物とかがいたりします?」
「ええ、バッチリと。ギルドもありますし、ドラゴンとかもいますよ」
ドラゴンは見てみたい気がする。というか、完全にライトノベルの世界やん。
前世で何回も読んだよ。剣と魔法と貴族の世界!
中世ヨーロッパくらいの時代の世界に転生しちゃうやつじゃん!
女神が目の前にいる時点で既にライトノベルの世界なのかもしれないが、冒険者とか魔物とか聞くと、よりワクワクしてくるのは何でだろう。
異世界っぽさが色濃く出るからだろうか?
「じゃあ・・・指示する人になりたいです。指示しても誰も文句を言わない、TOPの座についてみたいんです」
目の前で頬を膨らませている女神に希望を伝える。
せっかく異世界で生を受けられるのだ。また指示されるだけの人生は勘弁願いたい。
「承りました。それでは最後の質問です。剣と魔法、どちらの方をより使いたいですか?」
諦めたように女神が尋ねてきた。
おお!やっぱり魔法も使えるのか。それはもちろん・・・。
「魔法でお願いします!」
「了解です。それでは、絹川空さん。2回目の人生を存分にお楽しみください」
その言葉を最後に、俺の意識は糸が切れたようにプツンと途切れた。
だがこの時、俺は最大の失言をしていたのである。
中世ヨーロッパの世界で指示しても誰も文句を言わないとなれば、どんな立場なのか。
それを考えていなかったのだ。
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