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第1章 王子の変化と王城を襲う陰謀
『15、王都散策①~串焼き屋の友情物語~』
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「ねぇ、今日だよね!ついに来たんだよね!」
俺は朝から興奮が冷めやらない。この問いも何度口にしたことか。
「はい。今日は王都散策の日でございますよ」
カルスはそんな俺に、終始苦笑いを浮かべていた。
気づけば、パーティーが開催されるのは1週間後に迫っている。
そのため、ついに王都散策が認められたのだ。
やっと来たんだよ!転生してからずっと待ちわびていたこの一大イベントが!
何ヶ月、この日を待ちわびていたか!喜びで思わず顔がニヤケてしまう。
1週間前にアリナお姉さまが先に散策を済ませ、お土産話を聞かせてくるもんだから行きたい気持ちが募って募って・・・。
「リレン、王都楽しんできて下さいね」
優雅に微笑むアスネお姉さま。9歳になって、さらに聡明さが増した。
ちなみに彼女は4年前、王都散策を済ませている。
「リレンならきっと楽しめるはずだよ!」
散策のことを思い出しているのか、頬を紅潮させるアリナお姉さま。
ただ、その喋り方はジャネの指導対象なんじゃないかな?
「リレン様、そろそろ行きましょうか。あまり遅いと時間が短くなってしまいます」
「そうだね。出来るだけ長く楽しみたいし、そろそろ行こうか」
俺に声を掛けてきたのは、護衛隊長を担当するフェブアー騎士団長。
今回は歩きでいくため、万が一に備えて後ろの方から監視してもらうのだ。
怪しい人が近づいてくるのを防ぐ意味合いがある。
その他にも3人の騎士が護衛につくのだが、騎士団長の強さは規格外なんだとか。
アスネお姉さま曰く、2年前に起こった例の戦争では一人で30人の敵方騎士をなで斬りにし、グラッザド王国側の勝利に大きく貢献したという。
うーん・・・王子という立場上、仕方ないのかもしれないが、凄い人を護衛にしているな。
本音を言ってしまえば、護衛なんてつけなくていい気がするんだけど。
どうしても自由度が減るし、監視されているみたいでどうも落ち着かない。
みたいというか本当に監視されているんだけどね。
「リレン様、この帽子をお被りください。無いとは思いますが、万が一にも王子だと知られると面倒な事になりますので」
「そうだね。僕としても王都散策を中断させたくないし」
俺は素直に帽子を被り、近くの鏡を覗いた。
うん。なかなか似合っている。フェブアー騎士団長、センスがいいな。
「ただいま、門を解錠いたしました」
「リレン王子、是非とも楽しんできてくださいませ」
まだ見ぬ王都に心を躍らせながら門の前に着くと、衛兵2人が敬礼で迎えてくれた。
「ご苦労様。2人ともありがとう。楽しんでくるよ」
微笑むと、衛兵たちは顔を綻ばせる。
しばらく歩くと、後ろから衛兵たちの声が響いてきた。
「あれが詰所で噂になってた、王子が浮かべる天使の微笑みか!?」
「間違いないだろう。あの優しそうな笑み・・・」
「「警備兵をやっていて良かった!」」
掛け声をかけているわけでもないのに声がピッタリ合う。
おう・・・仕事のやりがいまで見つけられたか・・・。
そんなに俺の笑みって噂になっているの?何か恥ずかしいな・・・。
まあ、門の守衛ともなれば王族と顔を合わせる機会も滅多にないだろうし、一応は警備していた甲斐はあったといえるか。
そんなことを考えながら歩くこと半刻ほど。目の前に壮厳な噴水が現れる。
「わぁ・・・ここが王都の中心地かぁ!」
王都の中心部にある、噴水広場。
老若男女問わず、様々な人たちが会話を花を咲かせる穏やかな広場であり、もう少し暑くなると、噴水で遊ぶ子供たちという微笑ましい光景も見られる。
噴水の周りにはキッチリと管理が行き届いた花壇があり、綺麗な花が咲いていた。
ここからすべての地区に行くことができ、前世でいう交差点の役割も果たしている。
さて・・・どこに行こうかな。
王都は10個以上の地区があるから、全部回るのは物理的に無理。
なので、3つくらいに候補を絞っておく必要があった。
「そうだなぁ・・・とりあえずバザール地区に行くか」
バザール地区は、前世でいう商店街。
多数の店舗が連なっており、種類も豊富とあって多くの住民がここで買い物を済ませる。
ちょうど昼食時だったので、屋台が出ていることを見越しての判断でもあった。
やや細めの道を歩くと、次第に喧騒が近づいていく。
着いたバザール地区は・・・さながらバーゲン会場のような賑わいを見せていた。
道はさっきよりも広く作られているのだが、それを埋め尽くすほどの人人人・・・。
これは護衛の4人が大変そうだ・・・。絶対俺を見失うでしょ。
とはいえ昼ご飯を食べたいし、今さら他の地区に行くのも面倒だし・・・。
よし決めた。騎士団長たちには申し訳ないが、突っ込めー!
俺は帽子のツバをクイッと下げると、一つ深呼吸をしてから人込みに入った。
あれ?子供の体だからか、思ったよりサクサク進めるな。
あたりに漂っているいい匂いを辿って進んでいくと、串焼き屋の屋台が目に入る。
どうやらいい匂いの発生源はこの屋台のようだ。
見ると、何かの肉のブロックが4つ串に刺さっているザ・串焼き。
それにしても、これ何の肉なんだろうか。
「おじさん、これ何の串焼き?」
「ん?これはオークの串焼きだ。坊主、銅貨2枚だが買っていくか?」
ああ、坊主呼びが懐かしい。転生してから様付けで呼ばれることが多かったからね。
んで、オークの肉か。ラノベでは肉厚の魔物だが・・・美味しいのかなぁ?
好奇心を刺激された俺は、買ってみることにした。
「じゃあ1本下さい!はい、銅貨2枚」
「毎度あり!ほれ、熱いから気をつけろよー」
串焼きを受け取り、屋台の脇で1ブロック齧ってみる。
「うん!ジューシーで美味しい!それにスパイスと肉が合ってるね!」
食べた途端に口の中で広がる熱々の肉汁。
肉の味と完璧にマッチした適度な辛さのスパイスも、食欲をそそる。
たかが屋台と侮っていたから意表を突かれた!これは至福の一品だぞ!
思わず顔が緩んでしまう。
その様子を見ていた店主が、優しい微笑みを浮かべて屋台から出てきた。
「坊主、美味しそうに食べてくれるじゃねえか!こっちも嬉しいぜ!」
「あ、本当に美味しいです!これで銅貨2枚ですか・・・。お得な買い物をしました」
正直な感想を言うと、店主は凄い勢いで屋台にカムバック。
5本の串を手早く袋に詰めると、俺の前に突き出した。
「ほらよ。持っていけ!5本のサービスだ!」
「えぇ!?5本も頂けるんですか?いくら何でも悪いですよ!」
予想だにしなかった事態に慌てていると、店主は豪快に笑い出す。
「ガハハ、子供が遠慮するもんじゃねぇよ。その代わり、またこのバザール地区に来たらここに寄ってくれよな。安くさせてもらうぜ」
「はい。来る機会があれば寄らせていただきます」
そう言いながら串焼きの袋をありがたく受け取る。
店主はこうするのが正解とばかりに大きく頷いた。
「串焼き5本、確かに渡したぜ」
「うん、ありがとう!またね、おじさん」
「おう、また来てくれよな!毎度あり!」
串焼き屋の店主と妙な友情を築いた俺は一旦雑踏から抜け出し、花壇の縁に座った。
程なくしてフェブアー騎士団長たち4人がやってきて、俺の横に座っていく。
「皆、お疲れ様。この雑踏は大変だったでしょ」
苦笑いすると、フェブアー騎士団長が大きく頷いた。
「ええ、串焼き屋を常に視界にいれておくのに苦労しました。背が高い人が多くて・・・」
まあ、そうだろうね。獣人なんかはかなり背が高いし。
そんなお疲れの4人に、串焼きが入った袋を差し出す。
「これ、1本ずつ食べていいよ。しばらく休憩しよ?」
微笑みながら言うと、フェブアー騎士団長の表情が固まった。
他の騎士たち3人も呆気に取られたような顔をしている。
「どうしたの?ほら、遠慮しないで取って取って」
その言葉に再起動を果たした4人は、ぎこちない動きで串焼きを受け取っていくのだった。
俺は朝から興奮が冷めやらない。この問いも何度口にしたことか。
「はい。今日は王都散策の日でございますよ」
カルスはそんな俺に、終始苦笑いを浮かべていた。
気づけば、パーティーが開催されるのは1週間後に迫っている。
そのため、ついに王都散策が認められたのだ。
やっと来たんだよ!転生してからずっと待ちわびていたこの一大イベントが!
何ヶ月、この日を待ちわびていたか!喜びで思わず顔がニヤケてしまう。
1週間前にアリナお姉さまが先に散策を済ませ、お土産話を聞かせてくるもんだから行きたい気持ちが募って募って・・・。
「リレン、王都楽しんできて下さいね」
優雅に微笑むアスネお姉さま。9歳になって、さらに聡明さが増した。
ちなみに彼女は4年前、王都散策を済ませている。
「リレンならきっと楽しめるはずだよ!」
散策のことを思い出しているのか、頬を紅潮させるアリナお姉さま。
ただ、その喋り方はジャネの指導対象なんじゃないかな?
「リレン様、そろそろ行きましょうか。あまり遅いと時間が短くなってしまいます」
「そうだね。出来るだけ長く楽しみたいし、そろそろ行こうか」
俺に声を掛けてきたのは、護衛隊長を担当するフェブアー騎士団長。
今回は歩きでいくため、万が一に備えて後ろの方から監視してもらうのだ。
怪しい人が近づいてくるのを防ぐ意味合いがある。
その他にも3人の騎士が護衛につくのだが、騎士団長の強さは規格外なんだとか。
アスネお姉さま曰く、2年前に起こった例の戦争では一人で30人の敵方騎士をなで斬りにし、グラッザド王国側の勝利に大きく貢献したという。
うーん・・・王子という立場上、仕方ないのかもしれないが、凄い人を護衛にしているな。
本音を言ってしまえば、護衛なんてつけなくていい気がするんだけど。
どうしても自由度が減るし、監視されているみたいでどうも落ち着かない。
みたいというか本当に監視されているんだけどね。
「リレン様、この帽子をお被りください。無いとは思いますが、万が一にも王子だと知られると面倒な事になりますので」
「そうだね。僕としても王都散策を中断させたくないし」
俺は素直に帽子を被り、近くの鏡を覗いた。
うん。なかなか似合っている。フェブアー騎士団長、センスがいいな。
「ただいま、門を解錠いたしました」
「リレン王子、是非とも楽しんできてくださいませ」
まだ見ぬ王都に心を躍らせながら門の前に着くと、衛兵2人が敬礼で迎えてくれた。
「ご苦労様。2人ともありがとう。楽しんでくるよ」
微笑むと、衛兵たちは顔を綻ばせる。
しばらく歩くと、後ろから衛兵たちの声が響いてきた。
「あれが詰所で噂になってた、王子が浮かべる天使の微笑みか!?」
「間違いないだろう。あの優しそうな笑み・・・」
「「警備兵をやっていて良かった!」」
掛け声をかけているわけでもないのに声がピッタリ合う。
おう・・・仕事のやりがいまで見つけられたか・・・。
そんなに俺の笑みって噂になっているの?何か恥ずかしいな・・・。
まあ、門の守衛ともなれば王族と顔を合わせる機会も滅多にないだろうし、一応は警備していた甲斐はあったといえるか。
そんなことを考えながら歩くこと半刻ほど。目の前に壮厳な噴水が現れる。
「わぁ・・・ここが王都の中心地かぁ!」
王都の中心部にある、噴水広場。
老若男女問わず、様々な人たちが会話を花を咲かせる穏やかな広場であり、もう少し暑くなると、噴水で遊ぶ子供たちという微笑ましい光景も見られる。
噴水の周りにはキッチリと管理が行き届いた花壇があり、綺麗な花が咲いていた。
ここからすべての地区に行くことができ、前世でいう交差点の役割も果たしている。
さて・・・どこに行こうかな。
王都は10個以上の地区があるから、全部回るのは物理的に無理。
なので、3つくらいに候補を絞っておく必要があった。
「そうだなぁ・・・とりあえずバザール地区に行くか」
バザール地区は、前世でいう商店街。
多数の店舗が連なっており、種類も豊富とあって多くの住民がここで買い物を済ませる。
ちょうど昼食時だったので、屋台が出ていることを見越しての判断でもあった。
やや細めの道を歩くと、次第に喧騒が近づいていく。
着いたバザール地区は・・・さながらバーゲン会場のような賑わいを見せていた。
道はさっきよりも広く作られているのだが、それを埋め尽くすほどの人人人・・・。
これは護衛の4人が大変そうだ・・・。絶対俺を見失うでしょ。
とはいえ昼ご飯を食べたいし、今さら他の地区に行くのも面倒だし・・・。
よし決めた。騎士団長たちには申し訳ないが、突っ込めー!
俺は帽子のツバをクイッと下げると、一つ深呼吸をしてから人込みに入った。
あれ?子供の体だからか、思ったよりサクサク進めるな。
あたりに漂っているいい匂いを辿って進んでいくと、串焼き屋の屋台が目に入る。
どうやらいい匂いの発生源はこの屋台のようだ。
見ると、何かの肉のブロックが4つ串に刺さっているザ・串焼き。
それにしても、これ何の肉なんだろうか。
「おじさん、これ何の串焼き?」
「ん?これはオークの串焼きだ。坊主、銅貨2枚だが買っていくか?」
ああ、坊主呼びが懐かしい。転生してから様付けで呼ばれることが多かったからね。
んで、オークの肉か。ラノベでは肉厚の魔物だが・・・美味しいのかなぁ?
好奇心を刺激された俺は、買ってみることにした。
「じゃあ1本下さい!はい、銅貨2枚」
「毎度あり!ほれ、熱いから気をつけろよー」
串焼きを受け取り、屋台の脇で1ブロック齧ってみる。
「うん!ジューシーで美味しい!それにスパイスと肉が合ってるね!」
食べた途端に口の中で広がる熱々の肉汁。
肉の味と完璧にマッチした適度な辛さのスパイスも、食欲をそそる。
たかが屋台と侮っていたから意表を突かれた!これは至福の一品だぞ!
思わず顔が緩んでしまう。
その様子を見ていた店主が、優しい微笑みを浮かべて屋台から出てきた。
「坊主、美味しそうに食べてくれるじゃねえか!こっちも嬉しいぜ!」
「あ、本当に美味しいです!これで銅貨2枚ですか・・・。お得な買い物をしました」
正直な感想を言うと、店主は凄い勢いで屋台にカムバック。
5本の串を手早く袋に詰めると、俺の前に突き出した。
「ほらよ。持っていけ!5本のサービスだ!」
「えぇ!?5本も頂けるんですか?いくら何でも悪いですよ!」
予想だにしなかった事態に慌てていると、店主は豪快に笑い出す。
「ガハハ、子供が遠慮するもんじゃねぇよ。その代わり、またこのバザール地区に来たらここに寄ってくれよな。安くさせてもらうぜ」
「はい。来る機会があれば寄らせていただきます」
そう言いながら串焼きの袋をありがたく受け取る。
店主はこうするのが正解とばかりに大きく頷いた。
「串焼き5本、確かに渡したぜ」
「うん、ありがとう!またね、おじさん」
「おう、また来てくれよな!毎度あり!」
串焼き屋の店主と妙な友情を築いた俺は一旦雑踏から抜け出し、花壇の縁に座った。
程なくしてフェブアー騎士団長たち4人がやってきて、俺の横に座っていく。
「皆、お疲れ様。この雑踏は大変だったでしょ」
苦笑いすると、フェブアー騎士団長が大きく頷いた。
「ええ、串焼き屋を常に視界にいれておくのに苦労しました。背が高い人が多くて・・・」
まあ、そうだろうね。獣人なんかはかなり背が高いし。
そんなお疲れの4人に、串焼きが入った袋を差し出す。
「これ、1本ずつ食べていいよ。しばらく休憩しよ?」
微笑みながら言うと、フェブアー騎士団長の表情が固まった。
他の騎士たち3人も呆気に取られたような顔をしている。
「どうしたの?ほら、遠慮しないで取って取って」
その言葉に再起動を果たした4人は、ぎこちない動きで串焼きを受け取っていくのだった。
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