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第4章 狂気の王国と古代魔法の秘密
『122、イルマスの騎士団長』
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ベーラ=リックラントは瞠目した後、射殺さんばかりの視線で俺を睨む。
「どういうことだ?どうして俺が容疑者なのだ!」
「龍魔法は魔法をかける対象者に触れないといけないって聞いたからさ」
「それでどうして俺になる!」
「僕はともかくとして、フローリーに触った人はお前たち2人しかいないからだよ」
フローリーにも龍魔法はかけられていた。
つまり犯人は、フローリーの体に触ったことがある人物だということになる。
「さっき言った時間内で彼女に触れた人間はお前らしかいない!」
「なるほどね。確かに反論のしようがないか・・・」
ベーラは押し黙ったが、こちらはもう1つの重要なカードを保持しているのだ。
遠慮なく使わせてもらおう。
「そしてここからが重要です。龍魔法はツバーナにもかかっていました」
「まさか!」
「フローリーは分かったみたいだね。実はツバーナは戦闘そのものには参加していない」
「なのに、どうして龍魔法が?」
「ここで重要なのは、1つ目の村を攻略し終えた直後に姿を消した人物がいることです」
攻略以前まではいたはずなのに。
マーハイを連行するときには跡形もなく立ち去っていた人が1人だけいたはずだ。
「そうでしょ。ベーラ=リックラント騎士団長?」
「あ、騎士団長クラスの人が3人もいるなんて凄いって思った記憶があるわ」
「龍魔法にかかったのはフェブアーさんとエーリルさんですから・・・1人足りませんね」
フローリーとツバーナのアシストが入る。
部屋の隅にいたベーラは屈強な男たちに囲まれて体を震わせていた。
「お前が我が国の者に魔法をかけたのか?」
「いや・・・その・・・」
父上の地を這うような低温ボイスが執務室の空気を凍らせる。
ベーラは恐怖で反論の言葉さえも失い、男たちの詰問するような視線に耐えるだけ。
決して口を割ろうとはしなかった。
「闇の龍魔法っていうのを聞いたことがあるわね。残酷で冷徹な魔法っていう」
「まさか・・・喋ろうとした時点で殺される魔法か」
リアンが引き攣った顔でベーラを見つめるも、彼はひたすら俯くしか出来ない。
随分とキツイ魔法のようだ。
「私の魔導具なら鑑定できるからちょっと待っててね。――うわっ!?」
「どうしたの?」
顔を歪ませるツバーナを心配したのか、フローリーが優しく尋ねる。
決して口には出さないが、リアンや父上も心配そうな視線をこちらに送っていた。
「これを見てもらった方がいい」
「鑑定結果ってやつは随分と薄い板に書かれるんだな。――はっ!?」
俺は結果に絶句するしかなかった。
他のみんなも薄い板を覗き込んでは顔を歪ませている。
「リレン、何が書いてあったのだ」
「龍魔法について喋ったり話そうとしたりすれば命を落とす魔法です。極めて強度なね」
「正直に申し上げると、そちらのお兄さんでも耐えられない強さかと」
ツバーナが示した人は身長が190センチほどあり、筋骨隆々とした大男である。
聞けば、この国のギルドマスターなんだとか。
「我が国で一番の巨漢でも耐えられぬ強さとは・・・。彼がよく耐えているな」
「グラッザドの魔法で例えれば、身体強化系の魔法を20個ほど重ねたくらいですからね」
その言葉に全員が瞠目した。
俺なんかは3個で寝込んだのに、常時20個もかけている状態だなんて・・・。
「逆によく生きておるな」
「物理的な身体強化を施されている可能性が。リックラント家はそっちでも名門ですし」
今度はフローリーが発言する。
魔術家のボールス=リックラントは人体の強化についても研究していたはずだからな。
資料が残っていたとしても不思議ではない。
「それにしても、リックラント家という名前の貴族は複数おるのか?」
「いえ、1つだけのはずですが・・・」
今まで黙っていたホブラック宰相が首を傾げると、父上はベーラを見つめた。
「実はリックラント伯爵家、ファース公爵家、マーナス公爵家から書状が来ていてな」
「その3家って・・・」
リックラント伯爵家はベーラの家でもあるが、同時にボーランの家でもある。
ファース公爵家はカルスの実家で、マーナス公爵家はエーリル将軍の実家だ。
すべて俺たちと関わりのある貴族家じゃないか。
「ああ。全て我が王家と関係の深い貴族たちなのだがな、絶縁を申し出て来た」
「絶縁ですって!?」
カルスは俺の執事だし、ボーランは俺の友人というだけだから1万歩譲って良しとする。
しかしエーリル将軍についてはマズイのでは?
「それぞれの貴族も他国にいるってことですかね。さっきの話ではアラッサムに・・・」
「そうだ。この3家はアラッサム王国に住むことを決定させている」
何だか妙な話だな。
グラッザド王国でもイルマス教国でも、どうしてみんなアラッサムに向かおうとするんだ?
作為的な何かが働いている?
しかし龍魔法は対象者に触れなければ成立しない魔法だったはずじゃ・・・。
「そうか。アラッサムは貴族の引き抜きを狙っているんだ!」
「どういうことだ?私にも分かるように説明せい」
「龍魔法は対象に触れなければいけない魔法ですが、貴族なら簡単に触れられるんです」
「そうか、握手だ!」
リアンが頬を紅潮させながら叫ぶと執務室に納得の空気が流れた。
「どういうことだ?どうして俺が容疑者なのだ!」
「龍魔法は魔法をかける対象者に触れないといけないって聞いたからさ」
「それでどうして俺になる!」
「僕はともかくとして、フローリーに触った人はお前たち2人しかいないからだよ」
フローリーにも龍魔法はかけられていた。
つまり犯人は、フローリーの体に触ったことがある人物だということになる。
「さっき言った時間内で彼女に触れた人間はお前らしかいない!」
「なるほどね。確かに反論のしようがないか・・・」
ベーラは押し黙ったが、こちらはもう1つの重要なカードを保持しているのだ。
遠慮なく使わせてもらおう。
「そしてここからが重要です。龍魔法はツバーナにもかかっていました」
「まさか!」
「フローリーは分かったみたいだね。実はツバーナは戦闘そのものには参加していない」
「なのに、どうして龍魔法が?」
「ここで重要なのは、1つ目の村を攻略し終えた直後に姿を消した人物がいることです」
攻略以前まではいたはずなのに。
マーハイを連行するときには跡形もなく立ち去っていた人が1人だけいたはずだ。
「そうでしょ。ベーラ=リックラント騎士団長?」
「あ、騎士団長クラスの人が3人もいるなんて凄いって思った記憶があるわ」
「龍魔法にかかったのはフェブアーさんとエーリルさんですから・・・1人足りませんね」
フローリーとツバーナのアシストが入る。
部屋の隅にいたベーラは屈強な男たちに囲まれて体を震わせていた。
「お前が我が国の者に魔法をかけたのか?」
「いや・・・その・・・」
父上の地を這うような低温ボイスが執務室の空気を凍らせる。
ベーラは恐怖で反論の言葉さえも失い、男たちの詰問するような視線に耐えるだけ。
決して口を割ろうとはしなかった。
「闇の龍魔法っていうのを聞いたことがあるわね。残酷で冷徹な魔法っていう」
「まさか・・・喋ろうとした時点で殺される魔法か」
リアンが引き攣った顔でベーラを見つめるも、彼はひたすら俯くしか出来ない。
随分とキツイ魔法のようだ。
「私の魔導具なら鑑定できるからちょっと待っててね。――うわっ!?」
「どうしたの?」
顔を歪ませるツバーナを心配したのか、フローリーが優しく尋ねる。
決して口には出さないが、リアンや父上も心配そうな視線をこちらに送っていた。
「これを見てもらった方がいい」
「鑑定結果ってやつは随分と薄い板に書かれるんだな。――はっ!?」
俺は結果に絶句するしかなかった。
他のみんなも薄い板を覗き込んでは顔を歪ませている。
「リレン、何が書いてあったのだ」
「龍魔法について喋ったり話そうとしたりすれば命を落とす魔法です。極めて強度なね」
「正直に申し上げると、そちらのお兄さんでも耐えられない強さかと」
ツバーナが示した人は身長が190センチほどあり、筋骨隆々とした大男である。
聞けば、この国のギルドマスターなんだとか。
「我が国で一番の巨漢でも耐えられぬ強さとは・・・。彼がよく耐えているな」
「グラッザドの魔法で例えれば、身体強化系の魔法を20個ほど重ねたくらいですからね」
その言葉に全員が瞠目した。
俺なんかは3個で寝込んだのに、常時20個もかけている状態だなんて・・・。
「逆によく生きておるな」
「物理的な身体強化を施されている可能性が。リックラント家はそっちでも名門ですし」
今度はフローリーが発言する。
魔術家のボールス=リックラントは人体の強化についても研究していたはずだからな。
資料が残っていたとしても不思議ではない。
「それにしても、リックラント家という名前の貴族は複数おるのか?」
「いえ、1つだけのはずですが・・・」
今まで黙っていたホブラック宰相が首を傾げると、父上はベーラを見つめた。
「実はリックラント伯爵家、ファース公爵家、マーナス公爵家から書状が来ていてな」
「その3家って・・・」
リックラント伯爵家はベーラの家でもあるが、同時にボーランの家でもある。
ファース公爵家はカルスの実家で、マーナス公爵家はエーリル将軍の実家だ。
すべて俺たちと関わりのある貴族家じゃないか。
「ああ。全て我が王家と関係の深い貴族たちなのだがな、絶縁を申し出て来た」
「絶縁ですって!?」
カルスは俺の執事だし、ボーランは俺の友人というだけだから1万歩譲って良しとする。
しかしエーリル将軍についてはマズイのでは?
「それぞれの貴族も他国にいるってことですかね。さっきの話ではアラッサムに・・・」
「そうだ。この3家はアラッサム王国に住むことを決定させている」
何だか妙な話だな。
グラッザド王国でもイルマス教国でも、どうしてみんなアラッサムに向かおうとするんだ?
作為的な何かが働いている?
しかし龍魔法は対象者に触れなければ成立しない魔法だったはずじゃ・・・。
「そうか。アラッサムは貴族の引き抜きを狙っているんだ!」
「どういうことだ?私にも分かるように説明せい」
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