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第4章 狂気の王国と古代魔法の秘密
『124、親友を取り返せ!』
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俺の言葉を一笑に伏したエルフ国王は逆に揺さぶりをかけてきた。
「お主らの大事な民が大罪を犯したのだぞ。逆に処罰をしてくださいとお願いするのが道理じゃないのか?」
「そんな道理は知りません。暴論でも何でも、こちらとしてはイグルを返してもらいたい」
無駄な話に付き合っている暇はないのだ。
確かに向こうの言い分が正しいかもしれないし、俺が親友にこだわり過ぎているだけかも。
でも・・・俺は助けたい。
前世の俺にはなかった権力を使うのはこういった時じゃないのか?
それに、俺は盗んだ犯人がイグルだとは思っていないし。
「随分と自分勝手な男じゃな。とにかく罪人はこちらで裁くため、そちらには返せない」
「自分勝手で結構です。僕はイグルを助けるだけだ」
エルフ国王と俺の争いが泥沼に嵌まった時、相手が仲裁案を提案してきた。
俺としては今すぐにでもエルフ国王を叩きのめしたいんだがな。
「お前はエルフの里に入る権利を有していたな。その権利を使って我が国に来るがいい」
「入ってどうしろと?入口に門番を用意して俺を捕縛するとか?」
「つまらないことはしない。国に放った数千人の騎士団から逃げ切って王城まで来い」
うわぁ・・・俺にとってのメリットがない。
友人を助けたい俺の気持ちが本当ならば、不利な条件でも乗ってくれると踏んでいるな。
ここで乗ってもいいが、もう少し良い条件を引き出したいところである。
「俺が王城まで辿り着いたらイグルを開放してもらおうか。それなら提案に乗ろう」
「よし、条件を認めよう。制限時間はエルフの国に入ってから7日だ」
前世でいうところの1週間か。
国を横断するにはいささか足りない気もするが、王都なら国の中心部にあるはず。
1週間でも可能だろう。
「分かりました。すぐに準備をして向かいます。イグルを開放する準備をしてください!」
「抜かせ。騎士団に捕縛されるお前を裁く準備をしておくわ」
そう宣言したエルフ国王に苛立ちを覚えながらも、握っている石に魔力を込める。
他の皆も言いたいことがあるんじゃないの?
すると予想通り、父上が石に顔を近づけて普段の2倍くらいの声量で怒鳴った。
「リレンとイグルに何かあったら容赦しないぞ。こちらには切り札がいることを忘れるな!」
「好きにしたらいい。ツバーナの代わりなどいくらでもおるわ」
エルフ国王の言葉に瞠目する。
最悪の場合は殺されるかもしれない娘に対しての態度がそれか?
さらに苛立ちが増す。
アイツは自分の子供も他人の子供も政治の道具くらいにしか考えていないのだろう。
今回の事件もイグルを開放してほしければ金を寄こせとか言っていたはずだ。
そして、王太子がセットでいたほうが金をたくさん貰えると判断したって感じかな?
一方的に切れてしまった石を見つめながらツバーナが俯く。
彼女からは、執務室にいる騎士団の男たちもビビるほどの濃密な殺気が出ていた。
「リレン、私も協力するわ。2人であの爺をギャフンと言わせてやるのよ!」
「おお・・・分かっている。だから殺気を引っ込めろ」
俺に殺気が当たってるって。
幸いにして大丈夫だが、リアンとかが喰らったら腰が抜けてしまうんじゃないか?
ツバーナはハッとしたような顔になって殺気を引っ込めた。
「エルフ国王があそこまで老いていたとは・・・。我が国も付き合い方を考えなければ」
「ええ。友人を外交の道具に使うような国と付き合うのは嫌ですし」
ホブラック宰相も嫌悪感を露わにしている。
父上は嘆かわしいと言わんばかりに天井を仰ぐと、俺たちに近付いてきた。
「リレン、今回は敵地の真ん中に飛び込むようなものだぞ。覚悟は出来ているのか?」
「大丈夫です。姑息な罠には絶対に負けません」
「私も王女として国を正しく導く役割、そしてリレン様の従者という役割がありますので」
2人とも覚悟は十分なようだ。
父上が頷くと、勢いよくドアが開かれて2人の少女が姿を現した。
「ならば私もご一緒しましょう。実は友人のブルミがエルフの国に捕らえられたのです」
「お姉さまと一緒に対策を考えていたところなんですよ」
扉から入ってきたのはアスネお姉さまとアリナお姉さまだった。
ブルミさんって・・・ああ、魔導具が壊れた時にアスネお姉さまが喋っていた人か。
それにしてもエルフの国に捕らえられたって・・・。
「調べた結果、アラッサム王国に音楽魔法などの知識を与えたのはエルフの国でした」
「「何だって!?」」
父上とホブラック宰相が揃って絶叫する。
この件はアラッサム王国の独断だと思っていただけに、黒幕の出現は想定外。
加えてエルフの国だとは誰も思うまい。
「つまりアラッサム王国とエルフの国は繋がっているということか?」
「ええ。龍魔法の行き先はアラッサムと言われていますが、実際はエルフの国だそうです」
「となると目的は人間の国の崩壊か!」
ホブラック宰相の言葉を聞いた人たちが全員でため息をつく。
貴族を大量に引き抜くことでその国への収入を激減させ、国庫を破産させるってことね。
アラッサム王国はエルフの国と繋がることで破産を避けたということだろう。
「狂気の国、アラッサム王国は傀儡で、本当の狂気の国はエルフの国だったってわけね」
アスネお姉さまが憎々しげに吐き捨てた。
俺たちの中に微妙な空気が流れだしたとき、ゆっくりと扉が開かれる。
「お主らの大事な民が大罪を犯したのだぞ。逆に処罰をしてくださいとお願いするのが道理じゃないのか?」
「そんな道理は知りません。暴論でも何でも、こちらとしてはイグルを返してもらいたい」
無駄な話に付き合っている暇はないのだ。
確かに向こうの言い分が正しいかもしれないし、俺が親友にこだわり過ぎているだけかも。
でも・・・俺は助けたい。
前世の俺にはなかった権力を使うのはこういった時じゃないのか?
それに、俺は盗んだ犯人がイグルだとは思っていないし。
「随分と自分勝手な男じゃな。とにかく罪人はこちらで裁くため、そちらには返せない」
「自分勝手で結構です。僕はイグルを助けるだけだ」
エルフ国王と俺の争いが泥沼に嵌まった時、相手が仲裁案を提案してきた。
俺としては今すぐにでもエルフ国王を叩きのめしたいんだがな。
「お前はエルフの里に入る権利を有していたな。その権利を使って我が国に来るがいい」
「入ってどうしろと?入口に門番を用意して俺を捕縛するとか?」
「つまらないことはしない。国に放った数千人の騎士団から逃げ切って王城まで来い」
うわぁ・・・俺にとってのメリットがない。
友人を助けたい俺の気持ちが本当ならば、不利な条件でも乗ってくれると踏んでいるな。
ここで乗ってもいいが、もう少し良い条件を引き出したいところである。
「俺が王城まで辿り着いたらイグルを開放してもらおうか。それなら提案に乗ろう」
「よし、条件を認めよう。制限時間はエルフの国に入ってから7日だ」
前世でいうところの1週間か。
国を横断するにはいささか足りない気もするが、王都なら国の中心部にあるはず。
1週間でも可能だろう。
「分かりました。すぐに準備をして向かいます。イグルを開放する準備をしてください!」
「抜かせ。騎士団に捕縛されるお前を裁く準備をしておくわ」
そう宣言したエルフ国王に苛立ちを覚えながらも、握っている石に魔力を込める。
他の皆も言いたいことがあるんじゃないの?
すると予想通り、父上が石に顔を近づけて普段の2倍くらいの声量で怒鳴った。
「リレンとイグルに何かあったら容赦しないぞ。こちらには切り札がいることを忘れるな!」
「好きにしたらいい。ツバーナの代わりなどいくらでもおるわ」
エルフ国王の言葉に瞠目する。
最悪の場合は殺されるかもしれない娘に対しての態度がそれか?
さらに苛立ちが増す。
アイツは自分の子供も他人の子供も政治の道具くらいにしか考えていないのだろう。
今回の事件もイグルを開放してほしければ金を寄こせとか言っていたはずだ。
そして、王太子がセットでいたほうが金をたくさん貰えると判断したって感じかな?
一方的に切れてしまった石を見つめながらツバーナが俯く。
彼女からは、執務室にいる騎士団の男たちもビビるほどの濃密な殺気が出ていた。
「リレン、私も協力するわ。2人であの爺をギャフンと言わせてやるのよ!」
「おお・・・分かっている。だから殺気を引っ込めろ」
俺に殺気が当たってるって。
幸いにして大丈夫だが、リアンとかが喰らったら腰が抜けてしまうんじゃないか?
ツバーナはハッとしたような顔になって殺気を引っ込めた。
「エルフ国王があそこまで老いていたとは・・・。我が国も付き合い方を考えなければ」
「ええ。友人を外交の道具に使うような国と付き合うのは嫌ですし」
ホブラック宰相も嫌悪感を露わにしている。
父上は嘆かわしいと言わんばかりに天井を仰ぐと、俺たちに近付いてきた。
「リレン、今回は敵地の真ん中に飛び込むようなものだぞ。覚悟は出来ているのか?」
「大丈夫です。姑息な罠には絶対に負けません」
「私も王女として国を正しく導く役割、そしてリレン様の従者という役割がありますので」
2人とも覚悟は十分なようだ。
父上が頷くと、勢いよくドアが開かれて2人の少女が姿を現した。
「ならば私もご一緒しましょう。実は友人のブルミがエルフの国に捕らえられたのです」
「お姉さまと一緒に対策を考えていたところなんですよ」
扉から入ってきたのはアスネお姉さまとアリナお姉さまだった。
ブルミさんって・・・ああ、魔導具が壊れた時にアスネお姉さまが喋っていた人か。
それにしてもエルフの国に捕らえられたって・・・。
「調べた結果、アラッサム王国に音楽魔法などの知識を与えたのはエルフの国でした」
「「何だって!?」」
父上とホブラック宰相が揃って絶叫する。
この件はアラッサム王国の独断だと思っていただけに、黒幕の出現は想定外。
加えてエルフの国だとは誰も思うまい。
「つまりアラッサム王国とエルフの国は繋がっているということか?」
「ええ。龍魔法の行き先はアラッサムと言われていますが、実際はエルフの国だそうです」
「となると目的は人間の国の崩壊か!」
ホブラック宰相の言葉を聞いた人たちが全員でため息をつく。
貴族を大量に引き抜くことでその国への収入を激減させ、国庫を破産させるってことね。
アラッサム王国はエルフの国と繋がることで破産を避けたということだろう。
「狂気の国、アラッサム王国は傀儡で、本当の狂気の国はエルフの国だったってわけね」
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