転生王子の奮闘記

銀雪

文字の大きさ
141 / 152
第4章  狂気の王国と古代魔法の秘密

『139、王都に侵入して』

しおりを挟む
「さっさと行きましょう。少し風を強くするけど・・・飛ばされないように気をつけてね」
「適度にリラックスしていれば大丈夫。風に乗るんだ」

自分で言っておいてなんだが、セリフがファンタジーチックだな。
風に乗るって・・・。
前世でこの言葉を口走っていたら、完全にイタイ人である。

「リレンの言う通りね。変に固くなっていると一瞬で流されちゃうわよ」
「分かった。適度なリラックスならすぐ出来るだろうし、早く王都に入っちゃおう」

アリナお姉さまもバレないかどうか気が気ではないようだ。
チラチラと下を見て確認している。

その様子を見たアスネお姉さまが苦笑交じりに風を強くしていく。
今まで悩んでいた時間が無駄だったんじゃないかと思えるほどあっさりと門を超えられた。

ここがエルフの国の王都か。
基本的な作りはグラッザド王国やイルマス教国の王都と変わらない。

ただ、建物の色が緑を基調としている感じだ。
エルフの国の王都は自然豊かで、森に生きると言われているエルフらしい作りだな。

「あそこが目的地の王城ね。随分と遠いように思えるけど」
「このまま空中を飛んで進んだ方が早いかな?」

ログハウスのように丸太を基本として作られた王城は王都の中でも一際目立つ。
しかし、王城に辿り着くまでに相当な時間がかかりそうだ。
何しろ道が迷路のように複雑なのだから。
直線距離で行けば何でもないものを、わざわざ王都を一週してしまいそうな作りだ。

「空中からは無理。空中からの攻撃を防ぐために、あの辺から結界が張られているから」
「そこからなら歩いて2刻くらいかしら。いずれにしても遠いけど」

ツバーナが指さしたのは王都の中心部分。
中心部分から2刻って・・・どれだけ道を迷路調に改造したら気が済むのだろう。

つーか商人とかも大変だな。
王都に入るにも出るにも、毎回この長い道を歩かなきゃいけないんだから。

「でもこのまま浮かんでいてもしょうがないわ。魔力も消費するし、一旦降りるわね」
「もちろん中心部分に下ろしてよ?」

王都の中心で浮かび上がるというのはいささか現実的ではない。
むしろ黒龍騎士たちにバレる可能性が高いしね。
アスネお姉さまは頷いて風を調整しつつ、俺たちを結界ギリギリの場所に下ろしてくれた。

「ここからが勝負だ。黒龍騎士に見つからないように迷路を超える」
「分かっているわ。リレンは魔力量はどう?」

さりげなく後方を確認したアリナお姉さまが、声を潜めて問いかける。
俺は自分の魔力量を確認してみる。

「まだ大丈夫そうだけど・・・僕の魔力量が何か関係あるの?」
「透明化だと同じく透明化した黒龍騎士にバレるけど、リレンの光魔法なら・・・」
「バレないってわけね。よく考えたと思うわ!」

ツバーナが驚いたようにシャウトし、慌てて口を塞いで辺りを見回す。
俺も驚いた。

なるほど・・・俺が使っている光魔法はオーハス法だから、龍魔法には対応しない。
つまり、別の方法で透明になっているからお互いが視認できないというわけだ。

「じゃあ、光魔法はこのままかけておくね」
「ええ、頼んだわよ」
「それじゃ迷路式王都の攻略に乗り出すわよ。慎重かつ大胆に突き進め!」

「「「いざ、出立!」」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...