149 / 152
終章 王子を襲った陰謀と国家転覆
『147、協力者』
しおりを挟む
周りの敵を闇魔法で眠らせながら進むこと3刻あまり。
俺たちは最上階の一歩手前の階で休憩を取ることになった。
「ここには俺たちの協力者がいるんだ。みんな国王に反対している人たちさ」
「分かった。ちょっと顔を出していこう」
協力者がいるのなら、俺たちが知らない情報があるかもしれない。
俺が小さく頷いたところで、目の前にある茶色の扉がゆっくりと開かれる。
中は会議室のようになっていた。
テーブルが一方を向いて並んでおり、見慣れた人たちが座っているのが見える。
その先には黒板らしきものがあり、今はカンナさんが険しい顔のまま虚空を睨んでいた。
「皆さん、リレン王子をお連れしました」
「おお、ジューンはご苦労様。やっと反撃のためのラストピースが揃ったね」
そう言って立ち上がったのはホブラック宰相だ。
彼もてっきり共犯なのだと思っていたが、もしかしなくてもこちらの仲間なのか?
いや・・・油断は禁物か。
父上が派遣しているスパイかもしれないし、第三者的勢力かもしれない。
警戒しておくに越したことはないだろう。
「申し訳ないけど時間が無い。モルネを倒せそうな情報を頼める?」
「はい。今回の事件ですが、国王様の執務室から多数の機密書類が見つかりました」
一秒でも早く父上を倒したい。
グラッザド王国の主要メンバーが揃ってエルフの国に来ているんだからな。
早く帰らないとアラッサム王国とかが攻めてこないとも限らない。
気持ちだけが焦る俺に近付いてきたのは、紙の束を持ったブルート騎士団長だ。
えっと・・・彼もモルネ反対派にいるのか。
騎士団は国が直々に抱えている部隊だから、てっきり障害になると思ってたんだけど。
「それで?」
「この書類なんですが、国王様がアラッサム王国と繋がっていることが分かりました」
渡された紙にざっと目を通すと、デーガンの始末を要請すると書かれている。
デーガンはアラッサムに救われたと思っていたが、始末されていたのか。
今回で言えばブルミさんのケースか。
彼女は口を割らなかったが、何かしらの秘密を知ってしまった可能性が高い。
だから父上に殺された。
死に至るほどの拷問といつ雷が落とされるか分からない魔導具を使われて。
「それで・・・カンナさんがいるということは、エーリル将軍の捕縛に成功したんですか?」
「いや、上手く逃げられた。恐らくはモルネに報告が行っていることだろうな」
壁際に立っていたラオン公爵が吐き捨てた。
その横に心配そうな顔をするマリサさんがいたため、俺はイグルを促して会話させておく。
しばらく様子を見ていると、俺に近付いてくる影が1つ。
遠目でも女性であることは分かったが、彼女がツバーナだと分かるのに時間を要した。
何しろ、彼女はボロボロだったのだ。
髪は乱れており、最後に見た時は綺麗だった服はあちらこちらが破れている。
一番目立つのは顔か。
いくつもの痣が付けられている上に、火傷のような跡がついているところもある。
まさか・・・嬲られたか?
「酷いわね。恐らくはモルネとエルフの国王にやられたんでしょうけど」
「やっぱり倒すしかありません!」
「いきなり叫ばないでくれる?一体どうしたっていうのよ」
アスネお姉さまが眉をひそめて尋ねると、ツバーナは髪の間から1枚の石を出した。
黄色に光っているということは記録用の石か。
「これを見てください」
「私たちが持っている石みたいな文章じゃない・・・ってええ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはアリナお姉さまだ。
そこには、今まで隠されてきたモルネ政権の悪事がここぞとばかりに羅列されていた。
例えば、『他国と合同で古代魔法を復活させていた』とかいう文が書かれている。
これだけなら許容範囲だろうが、こともあろうに人体実験をしていたという記述があるのだ。
何の罪もない民衆が魔法の実験で殺されていた。
グラッザド王国の闇である。
その他にも、今回の事件は『王位継承権譲渡計画』と呼ばれていることも分かった。
ただ、解せないのは目的の項目だな。
『この作戦の目的は第1王子を次期国王にするための作戦である』と書かれているのだ。
ただ、第1王子は俺のはずで・・・。
「この文を見る限りだと、モルネには更なる隠し子がいたわけね」
「ええ。ただ、この第1王子というのは誰なのかしら。絶対にリレンではないし・・・」
お姉さま2人が揃って首を傾げた時、会議室のドアがゆっくりと開かれる。
みんなが硬直しているなか、入ってきた2人の人物は1枚の紙をテーブルに置いた。
これは・・・また機密文書?
タイトルは『優秀な第1王子について』とあり、この状況カ下では興味が湧くというものだ。
しばらく読み進めていくと、第1王子の名前が現れた。
「えっ・・・彼が第1王子?」
こう呟いたのは俺だったのか、それとも別の人だったのだろうか。
俺たちは最上階の一歩手前の階で休憩を取ることになった。
「ここには俺たちの協力者がいるんだ。みんな国王に反対している人たちさ」
「分かった。ちょっと顔を出していこう」
協力者がいるのなら、俺たちが知らない情報があるかもしれない。
俺が小さく頷いたところで、目の前にある茶色の扉がゆっくりと開かれる。
中は会議室のようになっていた。
テーブルが一方を向いて並んでおり、見慣れた人たちが座っているのが見える。
その先には黒板らしきものがあり、今はカンナさんが険しい顔のまま虚空を睨んでいた。
「皆さん、リレン王子をお連れしました」
「おお、ジューンはご苦労様。やっと反撃のためのラストピースが揃ったね」
そう言って立ち上がったのはホブラック宰相だ。
彼もてっきり共犯なのだと思っていたが、もしかしなくてもこちらの仲間なのか?
いや・・・油断は禁物か。
父上が派遣しているスパイかもしれないし、第三者的勢力かもしれない。
警戒しておくに越したことはないだろう。
「申し訳ないけど時間が無い。モルネを倒せそうな情報を頼める?」
「はい。今回の事件ですが、国王様の執務室から多数の機密書類が見つかりました」
一秒でも早く父上を倒したい。
グラッザド王国の主要メンバーが揃ってエルフの国に来ているんだからな。
早く帰らないとアラッサム王国とかが攻めてこないとも限らない。
気持ちだけが焦る俺に近付いてきたのは、紙の束を持ったブルート騎士団長だ。
えっと・・・彼もモルネ反対派にいるのか。
騎士団は国が直々に抱えている部隊だから、てっきり障害になると思ってたんだけど。
「それで?」
「この書類なんですが、国王様がアラッサム王国と繋がっていることが分かりました」
渡された紙にざっと目を通すと、デーガンの始末を要請すると書かれている。
デーガンはアラッサムに救われたと思っていたが、始末されていたのか。
今回で言えばブルミさんのケースか。
彼女は口を割らなかったが、何かしらの秘密を知ってしまった可能性が高い。
だから父上に殺された。
死に至るほどの拷問といつ雷が落とされるか分からない魔導具を使われて。
「それで・・・カンナさんがいるということは、エーリル将軍の捕縛に成功したんですか?」
「いや、上手く逃げられた。恐らくはモルネに報告が行っていることだろうな」
壁際に立っていたラオン公爵が吐き捨てた。
その横に心配そうな顔をするマリサさんがいたため、俺はイグルを促して会話させておく。
しばらく様子を見ていると、俺に近付いてくる影が1つ。
遠目でも女性であることは分かったが、彼女がツバーナだと分かるのに時間を要した。
何しろ、彼女はボロボロだったのだ。
髪は乱れており、最後に見た時は綺麗だった服はあちらこちらが破れている。
一番目立つのは顔か。
いくつもの痣が付けられている上に、火傷のような跡がついているところもある。
まさか・・・嬲られたか?
「酷いわね。恐らくはモルネとエルフの国王にやられたんでしょうけど」
「やっぱり倒すしかありません!」
「いきなり叫ばないでくれる?一体どうしたっていうのよ」
アスネお姉さまが眉をひそめて尋ねると、ツバーナは髪の間から1枚の石を出した。
黄色に光っているということは記録用の石か。
「これを見てください」
「私たちが持っている石みたいな文章じゃない・・・ってええ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはアリナお姉さまだ。
そこには、今まで隠されてきたモルネ政権の悪事がここぞとばかりに羅列されていた。
例えば、『他国と合同で古代魔法を復活させていた』とかいう文が書かれている。
これだけなら許容範囲だろうが、こともあろうに人体実験をしていたという記述があるのだ。
何の罪もない民衆が魔法の実験で殺されていた。
グラッザド王国の闇である。
その他にも、今回の事件は『王位継承権譲渡計画』と呼ばれていることも分かった。
ただ、解せないのは目的の項目だな。
『この作戦の目的は第1王子を次期国王にするための作戦である』と書かれているのだ。
ただ、第1王子は俺のはずで・・・。
「この文を見る限りだと、モルネには更なる隠し子がいたわけね」
「ええ。ただ、この第1王子というのは誰なのかしら。絶対にリレンではないし・・・」
お姉さま2人が揃って首を傾げた時、会議室のドアがゆっくりと開かれる。
みんなが硬直しているなか、入ってきた2人の人物は1枚の紙をテーブルに置いた。
これは・・・また機密文書?
タイトルは『優秀な第1王子について』とあり、この状況カ下では興味が湧くというものだ。
しばらく読み進めていくと、第1王子の名前が現れた。
「えっ・・・彼が第1王子?」
こう呟いたのは俺だったのか、それとも別の人だったのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる