通学路の秘密

南いおり

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茅野譲次

20××年7月20日8:01

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芸能人が数多く住むマンション街。
昨日の夜に同じマンションに入っていった、若手俳優と有名女優のスクープ写真を撮ろうと深夜ずっと張っていた。

なかなか外に出て来なく、車のラジオに聞き入っていると、学校から電話が来た。

「もしもし」
「茅野さんですか?」
「そうです」
「京香さんが屋上から転落しました。救急車で運ばれて、森山病院に向かっています」
「わかりました。私もすぐに向かいます」

マンションを離れ、すぐに病院に向かった。私が着いて、10分後ぐらいに京香の手術がはじまった。
待ち時間は実際の時間よりも長く感じた。その間、亡き妻のことを考えていた。

妻は7年前、事故で亡くなった。その時も仕事をしていて、最後に会ったのは亡くなる2日前だった。京香が号泣し、抱きついてきたのを思い出す。そしてその時、「私は1人で京香を守っていこう。」そう誓った。

私と京香は血がつながらなかった。12年前、京香が小学校に入学する直前に結婚した。妻は当時、私が勤めている編集社の派遣社員だった。付き合ってからは京香と三人で食事をしていたからか、すぐに仲良くなり、血の繋がった親子のようになっていた。

しばらくして手術中のランプが消え、医者がこちらを見て、頭を下げた。

「全力は尽くしましたが…」

その後、京香が手術室から出てきた。顔は血の気がなく、息をしていなかった。





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