甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

ノガケ雛

文字の大きさ
2 / 208

第2話


「何かオメガに嫌な過去でもあるの?」
「オメガには中学の頃に、一人だけ会ったことがあって、俺がアルファだったからか発情期に入ったそいつにやたらと誘惑された。それがトラウマ」
「その子、発情期は初めてだったんじゃない?」
「だとしても、知識はある筈だろ。性別だって中学生ならわかってる。抑制剤はいつでも持っておくべきだった。」
「それで、その子はどうなったの?」


 タイピングをしていた手を止め、記憶を蘇らせる。


「確か転校かな。俺の母さんがオメガが俺を襲ったとかなんかで、被害届を出すとかそんな話になって……」
「災難ね」
「だろ」
「貴方じゃなくて、そのオメガの子が。誘惑されただけなのに被害届だなんて……」
「新木さんは擁護派だもんね」
「貴方は過激派ね」


 フロア中に嫌な雰囲気が流れる。
 サッと席を立ってリュックを背負った。


「じゃあ俺、今日は外でミーティングあるから。またね新木さん。」
「ええ、また。」


 来た道を戻るようにしてビルから出る。
 初夏の爽やかな風が髪を揺らした。
 新木さんとは時々、少し言い合ったりしてしまう。それが終わったあとは別にお互い何も思っていないけど、アルファの高いプライドが自分の考えを曲げてたまるかと思ってしまうんだろう。


 ミーティングをするカフェまで移動すると、すでに相手がそこにいた。


三森みもりさん。おはようございます。」
「おはようございます。」


 定型文の挨拶をすると、お互い肩の力を抜いて椅子に座った。


「大学の頃みたいに遊びたいよなぁ。」
「本当だよ、全く。」


 砕けた調子で話すのは、三森が大学の同級生だから。
 別のところに就職したけど、お互いに担当になってはや数ヶ月。最初こそ真面目にしていたミーティングも、息抜きの場のようになっている。



「じゃあ、今回もこれでいい感じ?」
「うん。それでよろしく」


 珈琲を飲んで、落ち着いていると、三森が外を見て「あ」と声を零した。
 気になって三森の視線の先を見ると、チョーカーをした女性が道端で倒れてしまっているのが見えた。


「珍しい。オメガだな。発情期か?……っておいおい、あれまずいだろ。」
「チッ……」


 女性に男が群がっていく。
 どいつもこいつもフェロモンに充てられているみたいだ。
 立ち上がり、三森が止めるのを気にせずに店を出て女性に群がる男達を追い払う。


「抑制剤は?」
「っ、かば、ん……っ」


 女性の落とした鞄の中から抑制剤を取り出す。錠剤しかないことに苛立ちを感じながら、三森の方を見て「水!」と叫ぶと店員からそれを貰いこっちまでやってきた。


「ありがとう。離れとけ」
「わ、悪い……」


 三森はベータで、抑制剤なんて飲んでいない。だからこのフェロモンに耐性がない筈。
 女性に抑制剤を飲ませ、道の隅に移動した。


「病院行くか?」
「い、いえ、大丈夫、です……」
「……なら、あんたのフェロモンが治まるまで一緒にいる。」


 三森にリュックを持ってきてもらい、ミーティングはちょうど終わった所だったので先に帰ってもらった。
 自分の持っている抑制剤を一応の為に飲んで、女性が落ち着くのを待った。
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

αに軟禁されました

雪兎
BL
支配的なαに閉じ込められたΩ。だがそれは、愛のはじまりだった――。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!