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第32話
***
俺と凪さんの前に、テーブルを挟んで座る母さんと父さん。
父さんは仕事中に母さんから俺が帰ってくると報せがあり、早退してきたそうだ。
帰ってくることが滅多に無いので、何かがあったのではないかと気が気ではなかったらしい。
凪さんがいつの間にか買ってきていた菓子折を母さんに渡し、「突然お邪魔してすみません」と謝っていた。
「えっ、と……こちらは賀陽 凪さん。俺の働いてる会社の社長のご子息様で、今は凪さんと一緒に暮らしてる。」
「初めまして。賀陽 凪です。」
深々と頭を下げた凪さんに、母さんと父さんは戸惑いながら自己紹介をした。
「何から話せばいいのかわからないんだけど……」
焦って言葉が出てこない。ポケットに突っ込んでいた今朝書いたメモを取り出そうと思うのに、体が動いてくれない。
「私が話します。まずは……真樹さんのことです。」
固まって膝の上にあった俺の手を、優しく包んでくれる。
「真樹さんは以前、街中でオメガ性の女性が発情期で倒れていたところを介抱してあげていました。」
「介抱……」
母さんがポツリと呟き、表情を強ばらせる。
「もしかして、真樹がその女性を襲ったとか……?でもそれは真樹は悪くないです。真樹を誘惑したその女性が悪いんです。」
「いえ。真樹さんは襲ってなんかいません。女性に抑制剤を飲ませ、状態が良くなってから別れていました。それは私が確認しています。」
「なら、何ですか。」
手を握る力が少し込められる。
今から言うんだ。
「真樹さんは後天性オメガと言って、発情期中のオメガ性に接触した事で性別が変わりました。」
「は……」
母さんも父さんも目を見開いて俺を見ている。
視線が怖くて俯くと、机がバンッと大きな音を立てた。驚いて顔を上げれば、父さんが立ち上がり顔を真っ赤にしている。
「真樹が後天性オメガだと!?」
「はい。翌日に風邪と同じ様な症状が発症し、訪れた病院でそう診断されました。」
父さんが怒鳴る様に言うから、怖くて萎縮してしまう。
自分で話すべきなのに、全てを彼に任せてしまっている。
「その日に、彼は自殺しようとして、それを私が見つけました。それから彼とは一緒に暮らしています。」
ぐっと彼の手を握る。
どんな反応をされるだろう。不安は膨らむばかりでもう心が辛い。
同じ様に手を握り返してくれた彼に少し安堵した直後だった。
「真樹!!」
「っ!」
父さんがいきなり俺の胸倉を掴み、無理矢理立たせた。
驚いている内に頬を殴られて痛みが走る。
凪さんは慌てて父さんから俺を離し、俺を背中に隠した。
状況が飲み込めない中、頬に走る痛みだけがこれは夢じゃないと知らせてくる。
俺と凪さんの前に、テーブルを挟んで座る母さんと父さん。
父さんは仕事中に母さんから俺が帰ってくると報せがあり、早退してきたそうだ。
帰ってくることが滅多に無いので、何かがあったのではないかと気が気ではなかったらしい。
凪さんがいつの間にか買ってきていた菓子折を母さんに渡し、「突然お邪魔してすみません」と謝っていた。
「えっ、と……こちらは賀陽 凪さん。俺の働いてる会社の社長のご子息様で、今は凪さんと一緒に暮らしてる。」
「初めまして。賀陽 凪です。」
深々と頭を下げた凪さんに、母さんと父さんは戸惑いながら自己紹介をした。
「何から話せばいいのかわからないんだけど……」
焦って言葉が出てこない。ポケットに突っ込んでいた今朝書いたメモを取り出そうと思うのに、体が動いてくれない。
「私が話します。まずは……真樹さんのことです。」
固まって膝の上にあった俺の手を、優しく包んでくれる。
「真樹さんは以前、街中でオメガ性の女性が発情期で倒れていたところを介抱してあげていました。」
「介抱……」
母さんがポツリと呟き、表情を強ばらせる。
「もしかして、真樹がその女性を襲ったとか……?でもそれは真樹は悪くないです。真樹を誘惑したその女性が悪いんです。」
「いえ。真樹さんは襲ってなんかいません。女性に抑制剤を飲ませ、状態が良くなってから別れていました。それは私が確認しています。」
「なら、何ですか。」
手を握る力が少し込められる。
今から言うんだ。
「真樹さんは後天性オメガと言って、発情期中のオメガ性に接触した事で性別が変わりました。」
「は……」
母さんも父さんも目を見開いて俺を見ている。
視線が怖くて俯くと、机がバンッと大きな音を立てた。驚いて顔を上げれば、父さんが立ち上がり顔を真っ赤にしている。
「真樹が後天性オメガだと!?」
「はい。翌日に風邪と同じ様な症状が発症し、訪れた病院でそう診断されました。」
父さんが怒鳴る様に言うから、怖くて萎縮してしまう。
自分で話すべきなのに、全てを彼に任せてしまっている。
「その日に、彼は自殺しようとして、それを私が見つけました。それから彼とは一緒に暮らしています。」
ぐっと彼の手を握る。
どんな反応をされるだろう。不安は膨らむばかりでもう心が辛い。
同じ様に手を握り返してくれた彼に少し安堵した直後だった。
「真樹!!」
「っ!」
父さんがいきなり俺の胸倉を掴み、無理矢理立たせた。
驚いている内に頬を殴られて痛みが走る。
凪さんは慌てて父さんから俺を離し、俺を背中に隠した。
状況が飲み込めない中、頬に走る痛みだけがこれは夢じゃないと知らせてくる。
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