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第34話
「な、凪さん、帰りたい……っ」
「うん。帰ろう」
凪さんと手を繋いだまま家に帰る。
家に着くまで相変わらず涙は止まらなくて、部屋に上がると限界が来たのか、崩れるようにして床に座り込んだ。
凪さんは驚いていたけれど、それよりも殴られた頬の見た目が俺が思っていたよりも酷いのか、眉間にシワを寄せる。
「頬、冷やそうね」
手が離れ、一度リビングに行った彼は玄関に座り込んだままの俺に氷嚢を持ってきてくれる。
殴られたそこは熱を持っていて、ひんやりしたそれを当てると気持ちよかった。
そして漸く、深呼吸ができる余裕が生まれた。
「痣になるかもしれないな……」
「凪さん」
「ん?痛い?」
「俺、凪さんと番になりたい。」
氷嚢を当てたまま、間抜けな状態だけど伝えたかった。
一つ区切りがついたような気がした。
実際は全く、何も解決出来ていないけど。
「凪さんが、父さん達にああ言ってくれて嬉しかったです。俺には凪さんしかいないって、思いました。」
「……うん」
「凪さんといれば、俺は呼吸ができるんです。」
彼の言葉が酸素になって、心と体が機能してくれる。
彼がいると俺は今までより楽に生きられる。
それに何より──
「俺、凪さんが好きだから。」
「真樹……」
「好きだから、凪さんの隣で生きたい。」
死にたかった絶望の縁から、生きたいと思わせてくれた。
リタイアしなくていいように、傍で見守ってくれた。
たった数日。けれどその数日で彼は、俺自身を見つけてくれた。
「一緒に生きたいです。」
泣きすぎて鼻水が垂れてくる。
凪さんはそんな俺を見て柔らかく微笑んで、そっと包むように抱きしめてくれた。
「俺も、真樹と一緒に生きたい。」
氷嚢を落とし、彼の首に顔を埋め背中に手を回す。
俺を守ってくれる人。俺が守るべき人。
俺を愛してくれる人。俺が愛する人。
体を離して、顔を上げる。
傷んだ頬を撫でた凪さんは少し辛そうな表情をした。
「守れなかった。ごめん」
「ううん。大丈夫です。」
至近距離で見つめ合い、どちらともなく唇を重ねる。
泣いてばかりいたせいで、少し塩っぱい味がした。
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