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第98話

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「オメガに酷い偏見を持っていたから、バチが当たったんだ。アルファからベータならまだしも、オメガにまで堕落するなんて。」
「……」


 橋本に自分の恥ずかしい姿を見せてしまっていることと、目の前で起こっている出来事に泣きそうになった時、橋本が俺の肩を組んだ。


「なああんた。何か勘違いしてるんだと思うんだけど、オメガになったことが堕落って、その考え間違えてるぞ。」
「だってそうだろ。アルファからオメガだぜ」
「オメガになったから、何だ。堂山はしっかりと自分を持って生きてる。アルファだった頃の堂山の事は知らないけど、少なくともオメガに変わったきっかけは、発情したオメガをアルファだった堂山が助けた事だ。」


 肩を掴む橋本の力が強くなる。


「アルファが発情しているオメガを介抱するなんて、普通にできることじゃない。ベータですら自制できずにオメガを襲おうとするのに、堂山は助けたんだ。偏見を持っていても、同じ人間として接する。俺はそういう優しさを持ってる堂山だから、仲良くしたい。」


 彼はそう言い終えると俺の背中をポンポンと軽く叩いた。それはまるで『大丈夫』と言われているみたいだ。


「逆に、そうやってオメガになった人に対して偉そうにする人や、バチが当たったんだとか言う人間とは仲良くしたいどころか、人間性を疑うね。」


 橋本が俺の手を取って立たせる。
 荷物も持たれて、そのまま外に出る。


「は、橋本……」
「俺とご飯行こう?」
「……うん」


 橋本に連れられて違う店に行く。
 個室に通されて、酒を頼み二人きりになると、ようやくホッと息が吐けた。


「橋本、ありがとう。」
「ううん。むしろ出しゃばってごめん。あんなこと言って大丈夫だった?友達なんだろ?」
「……友達じゃない。あんなの、違う……」
「……うん。そうだな。とりあえず飲んで忘れよう。」


 酒が運ばれてきて、一気にそれを呷る。


「でも何で二人で会ってたわけ?雰囲気最悪だったのに」
「それは……」


 たまたま三森に出会した時の事を伝える。
 そうすると橋本は眉間に皺を寄せた。


「面倒な奴にバレたんだな。専務は知ってるのか?」
「バレたこと?知ってるよ。そのせいでめちゃくちゃ気まずい事になってる。」
「え?何で。」


 酒を飲みながら理由を話すと、橋本は困ったように苦笑を零した。
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