後輩の不可解な話(5/5更新)

狂言巡

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番外編 先輩の不可解な話

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 タダで二十四時間使えるノンコインロッカーがある。ただ、使う時は空にしてはいけないのが唯一の鉄壁ルールだと、教えてくれた先輩の右腕の肘から先は存在しない。





「お魚くわえたどら猫おいかけて~って歌あるだろ?」
「はい」
「うちの地元じゃ、魚が猫をくわえてるんだ」

 だからその土地にいる猫は水場に近づかない。腹の破けた魚が何匹か網にかかった時は猫が食われたと噂するという。海沿いの町で育った先輩から聞いた話だ。





「うちのマンション、出るんだよ」
「でしょうね。こんなでっかいマンションがそんな家賃だなんて。やっぱ飛び降りとか……」
「登ってくるんだよ。落ちたり降りたりする方は見た事ないし聞かねえな」





 先輩から聞いた話である。エアコンの調子が悪いので業者に状態と修理を依頼した。仕事も勤務態度も真っ当な業者だったが、不可解な事を言っていたという。

「このエアコンにも居る。最近増えたなぁ」

 エアコンは妥当な価格で、きちんと修理されたそうだ。





 先輩は封筒にトラウマがあると言う。家に届いたラブレターを好奇心に負けてこっそり開封したところ、長い黒髪がぞろっと出てきた。その後の記憶は曖昧だが、今でも気になっている事がある。

「宛名の名前、俺が生まれる前に死んだじいちゃんだった。ばあちゃん? 親父がちっこい頃に死んでるって聞いてるしなぁ」





 引っ越した先の部屋のクローゼットには何かいる。見えるのは金色の小さな目が二つだけ。其処から出てくる事はないので「猫のお化けがいる」という事にしていると先輩から聞いた。





 レジ打ちのバイトをしていた時に、先輩から聞いた話。
 その昔、売り上げ不振で精神を病んだ店長が包丁で自殺しようとしたところ、皮膚一枚切れなかった。しかし店長は諦めきれず、首を吊って死んだ。当然店は閉店。現在はホームセンターの倉庫になっているが、今でもいつの間にか糸が天井からぶら下がっているそうだ。
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