口承怪談(2/1更新)

狂言巡

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ひかる

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須磨豊一すまとよかずです。そうだなぁ……パズルの話、しよっか。実はオレの体験談なんだけど……」





 そのパズルは、高校時代の後輩から貰った誕生日プレゼントだった。今でも愛読している漫画をアニメ化した、五千ピースの結構大きなサイズだった。それだけでもすっごく嬉しかったが、パズルがちょっと変わっていたからさらに気に入った。
 そのパズルは光を吸収して暗闇で光るタイプなのだ。

「すごいだろ、真っ暗な中で、カッコイイ主人公達がピカピカ輝いてるなんて!」

 一生懸命パズルを組み立てて出来たら、額に入れて飾った。ちょうどリビングに入ったら、すぐ目に入る位置に。
 その頃は職場が異動したり、親が入院したりで、いろいろ対応しなければいけない事があったせいで、帰りは毎日深夜だった。

「夜道って朝帰りよりユーウツになるんだよね」

 それでも、家に帰ったら真っ暗な中でピカピカのキャラクター達が迎えてくれる。

「トヨカズお帰り!」
「今日も頑張ったね! お疲れ様」

 だから豊一は疲労困憊で家に帰ってきても、そう言ってねぎらってくれてるみたいに思えてまた頑張ろうという気になれた。そんなある日、偶然同じ仕事にブッキングして、直接顔を合わせた時にお礼ができた。

「あのパズルはすごいね! ありがとう、毎日あのパズルが光って出迎えてくれるから元気も出るよ」

 好物のお菓子を箱買いして渡しながら言ったら、驚いた顔して後輩が言ってきたんだ。

「すぐに其処から引っ越すことをおすすめしますよ」

 何でそんな事を急に言い出すのか理解わからなかった。パズルを褒めて、引っ越しした方がいいと言われるなんて、誰が予想できるだろうか。

「どうして引越しの必要があるのさ」

 思いっきり笑ったら、後輩はにこりともせずに肩を竦めて答えた。

「あのパズルは……明るいところから持ち込んで光り続けるのは、せいぜい数十分が限度なんですよ。先輩は、家で電気を消して迎えてくれるガールフレンドが住んでいらっしゃるんですか?」

 それから、豊一はすぐに引っ越した。パズルも後輩に申し訳ないが何だか気味が悪くなって、物置の奥にしまったまま。





「捨てたり燃やしちゃうのもなんかちょっと……ね」
「……あ、短いんだけどこれには後日談があるんだ。実は、この間ストーブを出しに物置にいったとき……後輩くんは正しかったね、パズルはぜんぜん光ってなかったよ」
「……あの家にいた時は、誰が光らせてたんだろうね?」





 ふっと語り部がライトを消しても、彼の髪は少し光を帯びている気がした。
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