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願いの話

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 文芸部の友人(以下、お清さん)から聞いた話。ほとんど一緒に遊んだ事のないクラスメイト(以下イワちゃん)から頼まれた。

「お地蔵さんのお願いするから付いてきて」

 そんな親しくない上に変なお願いをされたお清さんは面食らったが、あまりにも真面目かつ低姿勢で言われて、素直に付いて行った。
 今思えば地蔵でなく道祖神だった気がする。しかし子供だったので正確な違いに自信はないし、もしかしたら自然の経過で偶々変な形になった石だったかもしれない。自分が利用する通学路でなかったの所為もあった。石像(かもしれない)の前でイワちゃんは「妹になりますように」と何度もお願いしていた。お清さんは「何だぁ、お姉ちゃんになるから妹が生まれてほしいのかぁ」と納得した。でも別に一人で行けばいいじゃん? というお清さんの疑問を察知したのか、イワちゃんは「睨んでくるんだもん」と返す。
 睨んでくる何かにお願いしちゃっていいのか? と思ったが空気を読んで頼まれた時は付き合ってあげた。何度か通ったが、石像は顔だと言われたらそう見えなくもない溝というか凹みがあり、眠っているように見えた。そしてイワちゃん一家が引っ越した後に知ったのだが、彼女には元々妹がいて急逝してしまったらしい。とても静かな息の引き取り方で、家族は最初ただ眠っているだけだと勘違いした程に。お清さんはあのお願いは自分が想像したのと違ったのではないかと思った。
 同時期に、寺の無縁仏が良く見たら一部破損して乱暴な修繕が施されている事が発覚した。関連性はハッキリしない。お清さんは一先ず願いは叶えられたのだなと思ったそうだ。
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