Miss.エッグの事情(9/16更新)

狂言巡

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来訪/エッグとアイドル

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 平日の夜の八時。玄関にはサングラスと黒の帽子を被った少女が一人で立っていた。

「苺ちゃん?」
「う、あああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁん」

 最近知り合ったヒーロー仲間の苺花は、玄関先で真珠の顔を見た途端、泣き出した。何でこういう状況になったのか、真珠自身もよく解らない。本業アイドル(世間では未成年という事になっているので)がそのまま外で佇まれるのは気まずいので、部屋に連れて来た。二人分の飲み物が乗ったお盆を伴って自室のドアを開ける。勝手知ったる我が家とでもいわんばかりに、突然の来訪者は寛いでいた。部屋の主である真珠以上に。目を離したらすぐコレだ。

「……寛ぐのはいいよ、緊張されるよりは。でもどうして部屋を物色しているのか、是非とも聞いてみたいところだね」
「えーそりゃあパールちゃん大人なんやしー、ウチと違って本ぎょーさん持っちゃーるし」

 先程の涙は何処へやら、初めて彼氏の部屋へ遊びに行った彼女のようなご様子だ。初めてではないクセに。

「そんな場所に読まれちゃマズい本なんて置いてないよ」

 ……そういうのは、先日の休みに片付けておいてよかった。目許が赤いので、これより前の光景が現実という事だ。黙ってカップを差し出すと、小さく礼を言って受け取る。だがすぐ飲もうとせず、ただ揺らぐ紅茶を眺める。

「言っとくけど、毒なんか入ってないよ」
「残念やわぁ。楽に成れると思ったんに」

 いつもより多めに砂糖を入れてあげたそれをグビグビ飲み干す。その仕草は味わいも何もない。今の自分達の間に会話は一切なかった。冗談も茶化しも冷やかしも嫌味も何もない。エアコンの稼働音と、時を刻む時計の秒針だけが進んでいく。その沈黙に耐えられなかったのか、やっぱり苺花が口を開いた。

「なんかあったか聞かへんの?」
「言いたくなった時に話してくれればいいよ」

 また家族とヒーローに関係ない仕事でストレスが溜まったのだろう。そんなに自分の発言が予想外のものだったのか。問い掛けた本人は大きな目を更に大きく開いて「きひひ」と小さく笑った。自虐なのか虚勢なのか、それとも単に嬉しかったのか。そういえばヒーローを始めた頃の自分もこうだったかもしれないと懐かしく思った。

「今夜はゆっくり休むといいよ」
「添い寝してくれるん?」
「マフィン君貸してあげるよ。涎つけないでね」
「あいそないわぁ(つまらない)」

 苦虫を噛み潰したような顔の次に見せてくれたのは、いつもの笑顔だった。
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