Miss.エッグの事情(9/16更新)

狂言巡

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救助/エッグと怪人達

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 陸地からかなり離れた海原で、船が炎上し、轟音と共に海に沈もうとしている。流石のオニキスも顔色を変え、車から出る事になった。そして、猛烈に既視感デジャヴを感じて一歩下がった。海面が波打ったと思えば、真っ白な塊が何かを抱えて這い上がってきたからである。オニキスでなければ小さく悲鳴を上げていた事だろう。
 咄嗟に武器を構えなかったのは、直感とでもいうべき感覚が走ったからであり、二度目だという事もある。脇に抱えられて地面に降ろされ、激しく咳き込んでいるのはマスクを外した自分の部下スモーキーである。一般人に擬態できる特殊スーツとマスクを装着し、更に凝った礼服姿で夜の海で寒中水泳という災難に遭っていた。平然とした様子で背中をさすってやっている、全身ガチガチのパワードスーツのヒーローは居なければ高確率で溺死していただろう。
 いくらオニキスであっても大柄で骨太の体格の男を抱えて泳ぎ切り、岸壁を片手で這い上がる自信はない。というか、不可能だ。

「すみませんボス……」

 部下が説明するところによると、詐欺師リシアが仕込んだ犯人が仇敵だけでなくそれに追従する人間にも地獄も手温いような憎悪を抱いており、惨殺した後は船を爆発物で吹き飛ばしたそうだ。避難用ボートやその他避難設備は念入りに破壊されていた為、冬の海に投げ出された。偶然爆破の瞬間を見かけたキラーエッグに声を掛けられ、場所を告げたところ、シャチと張れるスピードの寒中水泳に付き合わされる事になったらしい。

「帰って着替えたらハンバーグ、いや作る余裕ないし一人で焼き肉かな……」

 ヒーローの義務と個人的な善意からの行動の後で、夕飯の事を考えるのは自由だ。しかし未だ炎上しつつ海に沈もうとする船と漂流する何かの一部を眺めながらなのはちょっと引いた。

「――車に乗れ、送っていってやる」
「全身、海水でずぶ濡れ。大切な車、汚れちゃう」

 友人に別れを告げるかのように、ヒラヒラ手を振って姿を消した。功績に対して賞賛も感謝も求めないその姿勢は、捻くれたオニキスもヒーローだと認めざるを得なかった。
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