カゾクカイダン(11/17更新)

狂言巡

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 アジア旅行に行った友人がSNSで「お土産何がいい?」と聞いたのでアジアっぽいインテリアでと返信した。

「魔除けのお面だぜ!」
「まじでwww部屋に飾るわwww」

 家に帰って封を開けると、遺品整理の時にこっそり処分したはずの母のデスマスクが現れた。





 一獲千金を夢見る男は全国各地を土を掘り続ける。現れたのは複数の弁当箱。開けると、懐かしいおかずが詰め込まれていた。

「頂きます」

 男は泣きながら手を合わせ、手づかみでそれを食べ始める。土と石の枯葉の味。それでも男は手を口を休めない。ごめんよ母ちゃん、六年間悪ぶって校庭の隅に捨てて。





 きっと、覚えていないのよ。娘さんが何歳で亡くなって、どんな顔だったのかも。じゃなきゃ、どう見ても成人してる私の前には現れなかったはずだし。大事な我が子を目の前で失ったショックで、手元に遺った靴だけを記憶に刻んでしまったのかな。だとしたら……あの母親にとって靴の存在だけが、娘の思い出という事になる。何だか、悲しい話だよね。





 今日も言われた。

「坊や一人?」

 そんなに似てないかなぁ、僕と母さん。





 時折、母が午前二時頃に何処かへ出かけようとする。声をかければ既に閉店して久しいデパートへ薬を買いに行くと言う。代わりに車を運転すると言って数分待たせると母は寝室に戻って眠る。そそっかしいが、呆けてはいない。





 肉食を異常なまでに嫌う母は、自分で仕入れてくる肉は例外だった。食卓に肉料理が置かれる前後日は、行方不明事件がトップニュースとして流れる。





 入院した母に「居間に飾ってあるオルゴールを持ってきてほしい」と頼まれた。持ち上げた時に底に張り付いていた紙は捨てた。
 母の病室に入ると皆「あーちゃんのなのにね」と小さな女の子の声を聞いている。





 よく「祓いませんか」と言われるけれど、母の手なのです。仮令たとえ、打たれても抓られても掴まれても引っかかれても。





 久しぶりに帰省したら、母がマシュマロを焼いていた。チョコペンで器用に文字を書いてる。今まで自分が付き合ってきた女の子と同じ名前。





 部室から借りてきたDVDの存在をすっかり忘れていた。「私のお母さんを探して下さい」というテロップの後に体育館らしき屋内に沢山の女の人が犇めいている映像が流れる。自分の母によく似た人と目が合った。嫌な予感がして母に連絡を取るが、繋がらない。





 再び同居を始めた老母が骨折したので病院に連れて行った。何とも形容しがたい表情の医者が重々しく口を開く。

「……その……本当に、あるがままの事実なんですが……」

 貴方のお母様の骨が全て、樹木の根っこになってますね。





 毎週金曜日に「あんたなんかうまなきゃよかった」と泣きながら小一時間愚痴る中年女が現れるんだが、毎回顔立ちはバラバラで、誰が本当に俺を生んだのか未だ不明だ。





「夜にね、ごめんなさいって聞こえるの」

 年老いた母からそんな相談を数回受け、兄弟でローテーションを組んで泊まり込む事にした。弟が泊まっていた時、蜂に刺されてしばらく入院生活へ。

「兄貴、施設に入ってもらおうよ」

 謝罪じゃなかった、「ごめんください」って言ってたんだ。お袋は耳が遠いから……。
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