惑溺アゴーギク(1/28更新)

朝寝(監禁中)

　遮光カーテンの隙間から陽が射しこんできた。それでも、まだまだ寒くて冷える。特に自分の脚にある鎖と足枷とか。隣に眠る逞しい胸板に顔を埋めて、暖を奪うために足を彼の硬い脹脛に擦り付ける。ぬくいぬくいとホクホクした気分で目を閉じれば、頭上から押し殺した笑い声。何に対して笑い声を立てているのかなど明白だ。

「寒いの？」
「寒くないですよ、今は」

　立てる声は止む事なく続いている。そして腰に回された腕にぎゅうと抱き寄せられた。密着していた二人の體が更に隙間なく重なる。動き難いが無理やり胸元に手を添えて耳を傾ける。
　とくん、とくん……。
　心臓は彼も同じ音を刻んでいる。

「ちょっと早いですね？」
「アンタがくっついてきた所為だわ」
「ごめんなさい」

　他愛無い言葉遊びさえ、甘い酒を舐めているかのような陶酔感を感じてしまう。

「あったかい……」
「アタシは熱いくらいだけど」
「そうですか？」
「まあ、悪くないわ」

　頬に滑る唇。だんだんと移動して、唇と唇が触れ合う。柔らかく重なり啄むように吸われ深くなる。朝に似つかわしくない濃厚な接吻くちづけけ。互いの舌を擦りつけて重ねて、くちゅくちゅと唾液の音が耳に届く。途端かっと羞恥に熱くなる体温。淫らな声が喉を震わせる。
　閉ざした眼をゆっくり開き、口付ける相手の近さに震える。鼻先を合わせ、離れた唇から熱い吐息。躰に籠った熱を空気に溶かす。この熱で滑りこんでくる外の空気が温まればいいのに。

「ふぁ、リンドウさん、朝からえっち」