後輩のラブ事情(4/7更新)

狂言巡

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体温

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 彼女の手を握ったら、暖かくて何だか泣きたくなった。ねぇ、好きだと言ったら、君はどんな反応をしてくれるだろうか。

「寒い……」

 ブルッと小木野は体を震わせる。秋と言っても、最近は朝晩一気に寒くなった。

「さむー……」

 もっと厚手の上着を出しておけばよかったの後悔しながら、一人でトボトボ学校までの道を歩く。

「あー……うー……」

 誰も居ないので、ついつい変な声を出しながら登校中、前に見慣れた小さな背中が見えてきた。

「あ、」
「小木野先輩?」
「おはよ、淡島ちゃん」

 小走りで後輩の隣に並んだ。

「おはよごうざいます。今日は寒いですね」

 朝から元気な後輩の挨拶にこくりと首を縦に振って応える。自分はともかく、彼女が一人でいるのは珍しい。

「一緒に行っていい?」
「はい」
「先輩、ほんま寒そうですね」
「うん」

 もう一度身震いすると、それに気づいた後輩が顔を覗きこんできた。
 うわ、ちっか。無自覚なんだろうな、彼女のその人懐っこい仔犬みたいで動作は、不快に感じない。

「……っ、ちょ!」
「あれぇ、お肉少ない。そら余計に寒いですわ」

 小さく驚きながら、淡島は小木野の手を握った。

「手ぇヒンヤリしてますね」

 ニコニコ笑う彼女の手は、暖かかった。

「あ、淡島ちゃんは、あったかいね」

 ちゃんと意味のある言葉を紡げているだろうか。不安になるくらい、ドキドキが、とまらない。

「結良ちゃんには結構ドライやからて言われてまいましたわ。先輩は、手が冷たいから心あったかいんですね」

 嗚呼もう、なんて愛おしいんだ。抱き締めたい衝動に、駆られた。
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