とある高台夫婦の事情(5/25更新)

プロポーズ／漣の花嫁

「いつ如何なる時も、貴女の傍で、貴女と共に在り、貴女を支え続けると誓います」
「……それではまるでプロポーズのようですね」

　パンケーキを食べ終えた沙々波は笑った。

「ええ仰る通りで、プロポーズですよ」

　龍興は死ぬまで、いや死して尚、彼女を愛する。それに、死ぬ時は一緒だ。

「死ぬ時も一緒……」

　眉を寄せた沙々波は切なげに笑う。しかし直ぐさまその愛らしい顔には、あまり見る事のない意地悪な笑みが形作られる。

「私は早死にするつもりは毛頭ありませんので」
「はい」

　龍興は沙々波の為ならいつ死のうとも構わない。そう伝えれば「あっぽたん」と鼻で笑われた。

「一緒に死ぬ気なら、うちが死ぬまで、タツさんも死ぬ事は許しませんよ」

　龍興にとって沙々波が紡ぐ一字一句は神託に等しい。沙々波の手が、龍興の手を掴む。細く、しなやかな指だ。

「うちの寿命に合わせなさい」
「うちより先に死んだらあきませんよ」

　愛しい人が紡ぐ言ノ葉を、その声をもっと聞いていたい。ならば龍興は沙々波に従うまでだ。そして彼女の為に生きて、死んでいく。どんな世界でも、いつ如何なる時も、彼女を愛しながら――。