3 / 16
予定は未定
しおりを挟む
「……旭さん、ロクな死に方しないだろうね」
夜空とレイモンド、日光と日和の行き当たりばったりな珍道中、屍者を倒した後のランチタイムの何だかんだと話が飛んだり戻ったりして、ふと途切れたその時。日和が呆れたように冒頭の言葉を口に出した。話の流れでたまたま出た言葉だとは思うけれど、日光もあながち、それはハズレじゃないような気がした。レイモンドと日和を交互に見やった。言われた当の本人は驚いたのか少しだけ目を瞠り、隣の恋人を見る。
「……別に俺は構わないけど」
「む?」
口の中で転がすようにして言葉を紡ぐレイモンドは、いつもの笑顔。何も考えてはいないはずがないだろうが、何を考えているのか判らないアレ。
レイモンドという人間は、とても警戒心が強い。初対面に馴れ馴れしいのは相手の懐に潜り込む策で、自分の本心を曝さない為の常套手段。柔和な雰囲気で臆病性を隠し、ふざけた態度で警戒心を掻き濁し、奔放な振る舞いで他人を選別する。誰にでも懐きやすそうなフリをして、実際に本当に胸襟を開くのは五指にも満たない人にだけ。
その中の一人が、隣にペンギンのぬいぐるみ(廃デパートからの戦利品)を膝に乗せた夜空だ。チャラけていながら平静なまま、彼女を見つめていたレイモンドはくつりと笑う。そして自分の横に座っていた夜空の髪に手を差し入れ、くしゃりと撫でた。
「人間はいつか死ぬんだからしょうがないでしょう? ただ、それまでの年月をどう過ごすか、それが問題なだけで」
「だから私は言ったんだけどなぁ?」
「……まぁ。浦風さんと仰る通り、職業上も俺の性格からして人に恨まれないとは言い切れません」
「でも、旭さんやったら人に恨まれるような事したとしても、相手に気づかれるようなヘマはせぇへんとうち思うけど?」
「「……ああ」」
日和とレイモンドの会話に、ふと夜空も混ざる。彼女の口から出た言葉に、日和も日光も思わず納得してしまう。そうだろう、変態だが頭が回る人間が他者にアッサリ腹を見せるわけがない事を。当然の如く、一応恋人である夜空の言い様(だって微妙にフォローになってない)に頷くレイモンドもどうなんだだろうと、ちょっとだけ呆れた気持ちで腹黒ハーフと変人変人ホイホイを見る。
「……まぁ、死ぬ時に隣に夜空さんがいれば、俺はそれで十分だというの話で」
夜空の髪をもう一度撫でながら、レイモンドがニヤリと笑う。そう言われて幽かにうつむいた夜空もひどく幸せそうな顔をするから。日光と日和は二人して溜め息を重ねただけだった。それなら悪くないかな。そう思ったのは、日光だけではないはずだ。上は青空、下は犬や鴉も食いつかない屍者の残骸。束の間の陽気な昼下がり、幸せな秘密を手に入れた日光は、胸焼けした躰に冷めたレモンティーを流し込んだ。
夜空とレイモンド、日光と日和の行き当たりばったりな珍道中、屍者を倒した後のランチタイムの何だかんだと話が飛んだり戻ったりして、ふと途切れたその時。日和が呆れたように冒頭の言葉を口に出した。話の流れでたまたま出た言葉だとは思うけれど、日光もあながち、それはハズレじゃないような気がした。レイモンドと日和を交互に見やった。言われた当の本人は驚いたのか少しだけ目を瞠り、隣の恋人を見る。
「……別に俺は構わないけど」
「む?」
口の中で転がすようにして言葉を紡ぐレイモンドは、いつもの笑顔。何も考えてはいないはずがないだろうが、何を考えているのか判らないアレ。
レイモンドという人間は、とても警戒心が強い。初対面に馴れ馴れしいのは相手の懐に潜り込む策で、自分の本心を曝さない為の常套手段。柔和な雰囲気で臆病性を隠し、ふざけた態度で警戒心を掻き濁し、奔放な振る舞いで他人を選別する。誰にでも懐きやすそうなフリをして、実際に本当に胸襟を開くのは五指にも満たない人にだけ。
その中の一人が、隣にペンギンのぬいぐるみ(廃デパートからの戦利品)を膝に乗せた夜空だ。チャラけていながら平静なまま、彼女を見つめていたレイモンドはくつりと笑う。そして自分の横に座っていた夜空の髪に手を差し入れ、くしゃりと撫でた。
「人間はいつか死ぬんだからしょうがないでしょう? ただ、それまでの年月をどう過ごすか、それが問題なだけで」
「だから私は言ったんだけどなぁ?」
「……まぁ。浦風さんと仰る通り、職業上も俺の性格からして人に恨まれないとは言い切れません」
「でも、旭さんやったら人に恨まれるような事したとしても、相手に気づかれるようなヘマはせぇへんとうち思うけど?」
「「……ああ」」
日和とレイモンドの会話に、ふと夜空も混ざる。彼女の口から出た言葉に、日和も日光も思わず納得してしまう。そうだろう、変態だが頭が回る人間が他者にアッサリ腹を見せるわけがない事を。当然の如く、一応恋人である夜空の言い様(だって微妙にフォローになってない)に頷くレイモンドもどうなんだだろうと、ちょっとだけ呆れた気持ちで腹黒ハーフと変人変人ホイホイを見る。
「……まぁ、死ぬ時に隣に夜空さんがいれば、俺はそれで十分だというの話で」
夜空の髪をもう一度撫でながら、レイモンドがニヤリと笑う。そう言われて幽かにうつむいた夜空もひどく幸せそうな顔をするから。日光と日和は二人して溜め息を重ねただけだった。それなら悪くないかな。そう思ったのは、日光だけではないはずだ。上は青空、下は犬や鴉も食いつかない屍者の残骸。束の間の陽気な昼下がり、幸せな秘密を手に入れた日光は、胸焼けした躰に冷めたレモンティーを流し込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる