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唯我独尊の果て
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チアキは小説家だ。普段はミステリーを書いているが、いつか実話を基にしたサスペンス物を書きたいと思っていた彼の許に、一人の同窓生が訪れた。同じ塾にも通っていたノマは親から会社を継いだと数年前の同窓会で聞いたが、チアキはそれ以上の情報は知らない。経営不振で借金の申し込み位しか心当たりがなかったチアキは思いも寄らない相談を持ち掛けられた。
娘の家出計画に協力してほしい。両親が協力する時点で最早家出ではないという軽口さえ叩けない程にモガリは切羽詰まった雰囲気を纏っていた。
モガリ夫婦の愛娘であるリンネは本来、モガリ夫人の従妹夫婦の間に生まれた。モガリ夫人の従妹は国から自治を黙認されている特殊地区の中で、絶対的な権力を持つ一族当主の三番目だか四番目だかの妻だった。従妹は産褥期に風邪を拗らせて亡くなり、後ろ盾のない赤子は一先ず亡母の実家に引き取られた。当時妊娠中の事故で流産してしまって精神不安定だったモガリ夫人はベビーベッドのリンネを見るなり私の子だと言って離さなくなり、今から乳児を育てるには年を取りすぎている伯母夫婦から手切れ金は全て渡すから育ててくれと懇願された。
そんな複雑な経緯でモガリ夫婦の娘として養育された彼女は今、青春を自転車競技に注ぎ込んでいる。父の生家の跡継ぎ候補は何人か居たが、病死や突発的な事故、跡目争いの渦中で次々と鬼籍に入り、先代の血を引いた子供は一人だけになった。モガリ夫婦はリンネを血で血を洗うような家とは無縁の生活を送らせてきたし、今更戻す気はなかった。
神妙な顔で同窓生の話を聞いているチアキは胸中では小躍りしていた。昔から書きたかった題材が金銭付きでやってきたのだ。今は離婚しているが、俺も一児の父親だとモガリの話に乗った男は今、過酷な労働を課せられる施設で働いている。クチナシ区が罪人の骨までしゃぶって捨てる為の墓場だ。自分が体のいい撒き餌だと気付いたのは、明らかにその筋の男達に自宅を襲撃されて地下室に連れてこられた時だ。
モガリは、まるで山に不法投棄されたマネキンのような無残な状態で天井から逆さに吊るされていた。子煩悩夫婦には詳細を語られていなかったのか、聞いていても本気にしていなかったのかはもう確認しようがないが、末娘は本来本家に引き取られる予定だった。獅子身中の虫の駆除に思いの外時間がとられ、大事な跡取り娘は島の外。直系の血が絶えたも当然な事態に、あの暴力と金で支配された陸の孤島のパワーバランスは崩れた。
リンネの生家は出奔を手助けした男達を許さず、クチナシ区と日夜地権を巡って火花を散らしている警察には見限られた。薄暗い朝から働き続け、夜になれば半端に頭と顔がいい所為で他の囚人達の憂さ晴らしの的になる。才能という名の翼を羽ばたかせて少女は前へと進んでいき、自ら墓穴を掘り進めた男は地の底で藻掻き苦しんでいる。
娘の家出計画に協力してほしい。両親が協力する時点で最早家出ではないという軽口さえ叩けない程にモガリは切羽詰まった雰囲気を纏っていた。
モガリ夫婦の愛娘であるリンネは本来、モガリ夫人の従妹夫婦の間に生まれた。モガリ夫人の従妹は国から自治を黙認されている特殊地区の中で、絶対的な権力を持つ一族当主の三番目だか四番目だかの妻だった。従妹は産褥期に風邪を拗らせて亡くなり、後ろ盾のない赤子は一先ず亡母の実家に引き取られた。当時妊娠中の事故で流産してしまって精神不安定だったモガリ夫人はベビーベッドのリンネを見るなり私の子だと言って離さなくなり、今から乳児を育てるには年を取りすぎている伯母夫婦から手切れ金は全て渡すから育ててくれと懇願された。
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