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朝チュン

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 酒の勢いで知己だろうと初対面だろうと相手の部屋で一夜過ごすのは、宴にとっては珍しい事は出なかった。夜が明けはじめ、カーテンから僅かに光が差し込む頃に宴が感じたのは、甘く柔らかい香りと生物ならではの温かさだった。目の前には胸が呼吸と一緒に僅かに上下している。ぶつかる太腿の柔らかさに、やっぱ抱くなら程よく脂肪のついた肉が付いていなければと現実逃避。
 目覚まし時計には日曜と表示されており、大体の人間はまだ寝ていても問題ない。視線を巡らせ、もう一度眠ろうとした宴は、部屋の本棚に『異常快楽殺人』『呪いの世界』『輪廻転生』『異常心理学』という題名の本で埋め尽くされているのを見て黙り込んだ。触っちゃいけない女と出会ってしまったと少し後悔した。
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