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帰ってきた男
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村の入り口にある社が壊れた話が駅舎では物々しく語られていた。村唯一の駅舎には、暇を持て余した婆さん達がこぞって集まり井戸端会議を催している。五年前にも同じ光景を見た気がする、ただその時の話題は僕のことだっただろう。
白髪混じりの駅員に切符を渡し、駅舎の出口を出る。駅前と言うにはおこがましく、自販機とバス停と民家があるだけだ。電車が来た方向に道路を進めば噂の社があるはずだ。
さて今重要なのは予定の時間なのに迎えの車が来ていないことだ。村へ帰ってくる前に兄へ連絡を取って置いた。この日の電車に乗ってくると伝えたのだが、あの兄のことだから忘れているのかもしれない。
もう一度電話をしてみることにする。
村を出る前に兄は携帯の番号を渡してくれた。
兄は働き者だったが、怠け者でもあった。頼まれれば動き、自分から家業や仕事を進んでやっていたがそれ以上のことは絶対にしなかった。そんな楽天家の兄は約束など忘れることが多く、良くメモ用紙に予定を書きなぐっていたものだ。五つ離れた兄は幼い僕にとってよき遊び相手であり、尊敬すべき人物でもあった。
兄への電話はすぐに繋がった。電話口からは僕が声を出す前に、聞きなれない声が聞こえてきた。
「もしもし」
それは聞き覚えのない女性の声だった。咄嗟に電話を切ってしまった。着信履歴を確認してみるが、間違いなく兄の名前が乗っている。
白髪混じりの駅員に切符を渡し、駅舎の出口を出る。駅前と言うにはおこがましく、自販機とバス停と民家があるだけだ。電車が来た方向に道路を進めば噂の社があるはずだ。
さて今重要なのは予定の時間なのに迎えの車が来ていないことだ。村へ帰ってくる前に兄へ連絡を取って置いた。この日の電車に乗ってくると伝えたのだが、あの兄のことだから忘れているのかもしれない。
もう一度電話をしてみることにする。
村を出る前に兄は携帯の番号を渡してくれた。
兄は働き者だったが、怠け者でもあった。頼まれれば動き、自分から家業や仕事を進んでやっていたがそれ以上のことは絶対にしなかった。そんな楽天家の兄は約束など忘れることが多く、良くメモ用紙に予定を書きなぐっていたものだ。五つ離れた兄は幼い僕にとってよき遊び相手であり、尊敬すべき人物でもあった。
兄への電話はすぐに繋がった。電話口からは僕が声を出す前に、聞きなれない声が聞こえてきた。
「もしもし」
それは聞き覚えのない女性の声だった。咄嗟に電話を切ってしまった。着信履歴を確認してみるが、間違いなく兄の名前が乗っている。
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