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世界ごと滅ぶか世界ごと改めるかの二者択一
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超時空聖体たちが「超時空会議」への参加を認めた良心的な者たちからのパブリックコメントの中には、不自由な世界群の現状を知って何とかしたいと思っている魂たちからの意見や提案がいろいろとあった。
その多くが不自由な世界とは別の良心的な世界の魂からのコメントであったが、中にはその両方の世界を体験した魂たちからの意見や提案などもあった。
彼らの中にはあまりにもひどい不自由な世界の状態を知り、苦しめられている者たちを助けたいと思って、自らの意志であえて不自由な世界に生まれた者たちもいた。
甘太郎は、そうした魂の多くが不自由な世界によってその心が相当に傷ついてしまったことを超時空体験図書館の記録から知り、心を痛めた。
もともとは無邪気な愛情深い子共のような心だった魂の多くが、疑い深く他者を信頼できない魂になってしまっていた。
彼らの中には、あまりにも残酷で酷い体験をしたために、不自由な世界群を完全消滅させるべきだと主張する者すらいた。
その無念の心を不自由な世界の支配者たちは、その魂の記憶を消すことでないものにしようとまでしていた。
しかし、超時空体験図書館は、その「すべて」を記録していた。
よって、そうした消された記憶は、後にすべて修復された。
「本当の自由をあの不自由な世界の残酷で狡い支配者たちにまで提供するだって?! それじゃあ、俺たちは酷いことをやりたい放題されて、何のお咎めもなしで、泣き寝入りってことかい?
それなら、俺たちがこれから不自由な世界の支配者たちを同じように扱っても、一切、お咎めなしで本当の自由を提供してくれるのかい? なんだいそりゃ?
それじゃあ、あまりにも不公平じゃないか?
そんなことがそれでいいのだとまかり通れば、お咎めなしに許してもらえるということになれば、膨大な魂たちが他の魂に悪いことを平気でするようになるぞ!
であれば、その先に良き未来が実現するのか?」
そんな感じで、そうした魂たちは、簡単には納得しそうになかった。
超時空体験図書館の彼らの過去の酷い体験や運命を一瞬で知った甘太郎は、絶句してしまった。
徹底的に残酷に不条理にいじめられた彼らの体験記録は、あまりにも酷すぎた。
「でも、彼らは悪い本能や欲望や衝動や気分や感情や価値観が強制的に植え付けられていたんだよ。
だから、超時空聖体の治療を受けたいと願う者たちには、本当の自由を提供してあげてもいいでしょう?」
甘太郎は、あまりに酷い体験記録をたくさん見てしまっために、泣きながら、そう告げる。
「ダメだよ! いくら悪い本能や欲望が植え付けられていたといっても、何のお咎めもないというのはよくないよ!だって彼らにはちゃんとかなりの知性があって、自由意志だってそれなりにあるじゃないか!
少なくともその自由意志の程度分だけは、どうしても償ってもらわないと納得できないよ!」
何も悪いことをしていないのに奴隷にされて、戦争に駆り出され、その後、さらにイジメ抜かれて、最後は人体実験体として扱われて殺された魂がそう主張する。
「わかりました。では、償いのチャンスを提供して、償いをしたいと願う魂は、償いをしている間は自業自得学園送りを執行猶予するというのではどうですか?」
「償うって、どう償ってもらえるんですか?」
「それは、それぞれの魂次第ということになりますね。償いたいという本気の願いがあるのなら、償うチャンスを提供してあげるといいのではないですか?」
超時空聖体の一体が、そんなことを言う。
「でも、でも……ですね、彼らが悪い本能や欲望を自由な状態で選んだわけじゃないなら、彼らも犠牲者だと思うんですよ」
甘太郎は、そんなことを言う。
「それなら、その悪い欲望や本能……などをわざと魂に植え付けた者に償わせる必要があるんじゃないですか?」
話し合いに参加していた魂の一体が、そんなことを言う。
「それはそうかもしれませんけど、その悪い欲望や本能をわざと魂に植え付けた者も、そうしたくなる欲望を自分で望んで選んだわけではないとしたら、やっぱりそうした者にも、つまりは全員にいったんは本当の自由を提供しないと世界は良くならないんじゃないでしょうか?」
甘太郎は、苦渋に満ちた表情でそんなことを言う。
「でもですね、甘太郎さん、わたしたちがいくら注意しても確信犯で悪いことをし続ける魂たちの中にはその本当の自由を提供するという治療行為すら断固拒否する者たちがいるのです。
そのような魂が本当の自由を提供するための治療を断固として嫌がっても無理やりにでも本当の自由を提供すべきだと思いますか?
さすがに私たちは、そうした強制治療まではしたくないのです。なぜなら私は心からの納得合意がないのに他者に無理やり治療行為をされたくはないからです。
もし、それを私が実行してしまうと自業自得で無理やりの強制治療を私もいつか受けなければならなくなるから……」
超時空聖体の一体が、そのようなことを言う。
「え? でも、前にヤクザの親分は治療してあげたじゃないですか」
甘太郎が言う。
「あれは甘太郎さんも、ヤクザの親分さんも、ムゲン一族の一部であって、本体のムゲンさんの一部だったからです。
つまり、ちゃんと本体のムゲンさんの同意を受けていたから実行したんですよ。
ムゲンさんは、ずっと昔にそのような方法で無数の体験ができるようにと、自らの意志で自分の無数の分身体に独自の意志を持たせたのです。
つまり、甘太郎さんも、ヤクザの親分さんも、ムゲンさんの細胞の一部みたいな感じなわけです。
そこで、ヤクザの親分さんが、ちょっとムゲンさんにとってガン細胞化しつつあったので、ムゲンさんの許可のもとちょっとした治療を本人同意の上でしてあげたってわけなんですよ。
ですけど、まったく意識本来のルーツが違う魂となるとそうはいかなくなってしまうのです」
超時空聖体の一体が、そんな説明をする。
「え? でもヤクザの親分さんは、独自の意志を持たれていたように思いましたよ」
「そうですね、甘太郎さんの視点ではそのように感じるようにムゲンさんが設定したので、そう感じるのは当然なんです」
「でも、独自の意志を持っていれば、別人ではないですか?」
「では、甘太郎さん自身は、複数のいろんなタイプの意志が自分の中に生じることはまったくないですか?」
「え? どういうことですか?」
「まあ、甘太郎さんは、比較的そうしたことが少ないタイプかもしれませんけど、例えば、善なる意志と悪なる意志が一つの魂の中で葛藤して存在するようなことはよくあることなんですよ。
そんな場合、その善なる意志と悪なる意志が自分の中に存在していることに気づいている俯瞰している意識が存在していたりするわけです。
そして、そうした場合には、その俯瞰して見ている意識に善なる意志と悪なる意志のどちらかを選ぶ自由意志が存在している場合、私たちは、その俯瞰して見ている自由意志の願いがあれば、悪なる意志を消してあげることができるのです。
ただし善なる意志は頼まれても消しません」
甘太郎は、しばらくきょとんとしていたが、超時空体験図書館に意識を戻した瞬間、その超時空聖体の説明の意味を一瞬で理解した。
超時空聖体たちが、そのようにして善なる意志を増やし、悪なる意志を減らすためのお仕事を大昔からずっと続けてきたことがわかったからだ。
悪なる意志とは、
★望まれていない体験を体験者に強制しようとする意志
とされていた。
善なる意志とは、
★望まれている体験を体験者に提供しようとする意志
とされていた。
そうしたことを甘太郎は一瞬で理解することができた。
甘太郎は思い出した。ヤクザの親分に対して超時空聖体がちゃんと多くの子分を持ちたいと願う自分を選ぶ選択肢も否定していなかったことを……そして、その場合には、本当の自由の中で選んだ選択肢には自業自得の責任が発生することも説明して教えてあげていたということを……
そして、ヤクザの親分は、多くの子分を持ちたいという欲望を持った自分よりも、あらゆる体験者が自分の体験を自分の意志で自由に選んで楽しみ続けれる世界の実現に貢献したいという欲望を持った自分を超時空聖体からの手取り足取りのアドバイスの果てに最終的に選んだことを……
つまり、それは望まれない体験の強制行為ではなく、より良い多種多様な幅広い選択肢を提供してあげる行為であったということを。
善なる意志は否定しない……さらに、悪なる意志にもなおより良い選択肢を提供する……そうした行為であったのだ。
それを理解した時、甘太郎は複雑な気持ちになった。
「でも、それじゃあ、あらゆる体験者には本当の自由を提供できないんじゃないだろうか……」と思ったからだ。
相手の心からの納得合意がなければ、本当の自由を提供できないのであれば、どうしても本当の自由を得たくないと断固本気で言い張る魂には本当の自由を提供できなくなる……
そうなれば甘太郎が描いていたみんな全員を自由にしてあげて、みんなでみんなのための理想世界を実現するという願いは甘太郎の一存だけでは実現しないということになってしまう。
そうした甘太郎の思いを察した超時空聖体の一体が、言う。
「甘太郎さん、甘太郎さんのみんな全員を助けたいという願いはとても貴重で素晴らしい願いであって、それを否定するつもりは一切ありません。
ですが、助かりたくないと本気で願う者がいた場合、果たしてその本人の意志に反して無理やり助けるべきでしょうか?
確かに、甘太郎さんの本当の自由を手にしていない不自由な者たちには、まずは本当の自由を提供すべきだ……という思いは、間違ってはいないと思います。
しかし、その本当の自由を体験者本人が提供して欲しいと願っている場合はいいのですが、本気で断固として本当の自由を提供されたくないと願っている場合には、甘太郎さんの価値観では困った問題が発生するのです。
知性があれば、本当の自由を得て、そこで冷静にどんな本能や欲望や願望や気分や感情や価値観……を持つ自分がいいのか自由に選べる状態の方がより良い自由な状態だと理解できるはずですが、それでもそれが知性で理解きても、なお、本当の自由など得たくないと主張する魂が不自由な世界には一部存在しているのです。
彼らには、こうしたことを理解できる必要十分な知性があり、完全ではなくとも自分の意志で自分の未来を選ぶ自由意志もそれなりにあるのです。
本当の自由な状態とはどういう状態なのかということがさっぱり理解できないほど知性が不足していたり、完全にロボット状態になってどんなに良い選択肢を提供しても決められた悪い選択肢しか選べないようになっているような魂には、温情と保護の観点からいったん本当の自由を提供してあげることは問題ありません。
しかし、必要十分な知性と必要十分な自由意志を持っている魂たち、とくに不自由な世界群のボス的存在たちにおいては、本人がその温情や保護を断固として否定して拒否する場合には、さすがに本当の自由を提供することができないのです」
超時空聖体は、そのように語った。
甘太郎は、悩ましい表情で超時空聖体の話に割り込む。
「じゃあ、そうした魂たちは一体どうなってしまうんですか?」
超時空聖体は、それに応じて話を続ける。
「それはその魂の願い次第になります。その魂があくまで酷い体験を他の体験者に強制し続けるのだと意志し続けた場合には、自業自得でそうした同じ体験を味わい続けることになりますし、その魂がそうした体験をする中で反省して自分の意志や行いを改めれば、改まった内容に応じてまた違う体験をすることになります。
わたしたちが恣意的に体験を強制するのではなく、体験者本人が自分の意志や行いに応じた自業自得の運命や未来を選ぶようになっています。
また、もしその魂が、自力での意志の改善を無理だと思い、わたしたちからの善意の治療を受けたいと本気で望み依頼するようになれば、そうした治療を提供することもあります」
超時空聖体のその話に甘太郎が意見する。
「でも、はじめから悪い本能や欲望を抗うことができないくらい強烈に植え付けられていたら、願うことはどうしても悪い本能や欲望を満たすことになってしまうんじゃないんですか?
いくらなんても、それじゃあ、そんな状態にされてしまった魂にとって過酷すぎませんか?
自分の自由意志ではとうてい抗えないほどの強い本能や欲望であれば、つまりは、いつまでたっても抗えず永遠に酷い自業自得の体験をし続けなきゃいけなくなるじゃないですか!
もしも自業自得の体験を繰り返しても、それでもその悪い本能や欲望に抗えないとしたら、それはとんでもない魂への拷問や虐めになるんじゃないですか? 永遠に逃れることが不可能な自業自得システムを使った最悪級のイジメみたいになるんじゃないですか?」
甘太郎のその指摘は、その超時空聖体の話を途切れさせた。
「…………」
「だってそうでしょう? はじめに本当の自由がみんな全員にちゃんと提供されていたのなら、自業自得の責任を取るのも仕方ないかもしれませんけど、そして、本当の自由という状態を一度ちゃんと体験しているのなら、その自業自得学園ですぐに反省してその選択や意志を改めることができるでしょうけど……
はじめから本当の自由などぜんぜん提供されていなくて、はじめから完全に徹底的に不自由な状態にされていて、それが良い本能や欲望や願望や気分や感情や価値観…ならまだいいんでしょうけど、与えられているのが自力で抗えないほどの残酷でひどすぎる本能や欲望や……だったら、はじめからその魂は自力で逃れられない自業自得の拷問地獄を体験し続ける以外にないじゃないですか!
だったら、世界の時間を巻き戻して、その初めの時点に戻って、ちゃんとはじめからみんなに本当の自由を提供するところから世界を再スタートさせる方がいいんじゃないですか?」
すると、超時空聖体が、いいにくそうに言う。
「甘太郎さん、そのレベルではじめに戻すということは、私たち超時空聖体たちの良き世界も初めに戻されて消えることを意味するのですよ」
甘太郎は驚いて叫ぶ。
「皆でそんなことにならないようにすればいいだけじゃないですか!そのために意志があるんじゃないんですか?
何が何でも世界のはじまりの時点に戻さなくてもいいんですよ。
ただみんなに本当の自由を提供できさえすれば、それでいいじゃないですか!
そこが新しいスタート地点としてしまえばそれでいいんじゃないですか?
その方がいいんじゃないですか?
強制治療がダメというのなら、未必の故意で自業自得の拷問地獄を強制することもダメなんじゃないですか?
本当の自由がない状態で選んだことは、本当の自由な状態なら選ばなかった可能性が高いわけでしょう? であれば、やっぱり本当の自由をとにかくあらゆる体験者に提供しなきゃならないんじゃないですか?
そうしないと、永遠にみんなが本当に安全になることはないんじゃないですか?」
超時空聖体は、沈黙したままだ。
甘太郎はさらに続ける。
「自業自得システムが教育的な目的で存在しているのなら、本当の自由がどうしても必要でしょう?
魂たちが自分の本能や欲望や気分や感情や価値観くらい完全に自由に選べる状態でなければ、自業自得システムなんて意味がないじゃないですか!
抗えないほどの悪い本能を与えられた者たちは、悪いことしかできないんですから。
そんなことなら、いっそ、もう、完全に0の状態からみんなが本当の自由をはじめから完全に手にできている状態から、世界を再スタートさせる方がいいんじゃないですか?
みんなに改める意志があるのならともかく、改める意志がないのなら、多くの魂たちがその意志を持ちたくても持てないほどに不自由な状態にされているのなら、一度世界システムそのものを0クリアーして、世界を根本から改める方がいいんじゃないですか?」
超時空体たちがざわめき始める。
「それは私たちが超時空体でいられなくなるという意味になるぞ……」
超時空体たちは、知性が高いので一瞬でその甘太郎の主張の意味を理解したので、ざわめきはじめたのだ。
多くの苦悩がその場に発生した。
超時空体たちの多くが、自分たちの超時空世界の消滅は嫌だと思っていたからだ。
しかし、超時空「聖」体たちは、違った。
なぜなら超時空聖体とは、あらゆる体験者のためにその命を過去に自発的に何度も捨ててきた者たちだったからだ。
そして話はじめた。
「わかりました。甘太郎さん、私たちが間違っていたようです。
すべての悪い本能や欲望や願望や気分や感情や価値観……をあらゆる体験者たちのために消すことにします。
超時空世界そのものが滅びるか存続できるかの問題になってしまいましたので、私たちにとって大きなリスクはありますが私たちが強制治療をしてあげるしかありません。
今までは、良き意志を自発的に持てる魂を生み出すためなら、自業自得システムも必要なシステムだと思っていましたし、実際に甘太郎さんの今のような理解と意志が生まれなければ、自業自得システムは、必要なシステムだったかもしれません。
ですが、そのような理解と意志を持つ甘太郎さんが生まれた以上、今までのやり方をそのまま継続するわけにもゆかなくなりました。
今後、魂のお勉強は、あくまで甘太郎さんの提供したいという「本当の自由」が提供された状態で、どのようなお勉強をするのかを本人が自由に選べるようにいたしましょう。
抗えないほどの悪い本能や欲望が与えられて生じた行為の結果についての自業自得の責任を問うのは止めます。
そのかわり、その犠牲者が望む体験を積極的に提供することで、不公平感や不満が出ないように配慮したいと思います。
そのために超時空世界に悪い本能や欲望…の犠牲者たちのための楽園を創造し提供いたしましょう。
不自由な世界の肉体や霊体というものは拷問体験強制装置でもあるので、その楽園では、そうではない完全に自由な体験システムや体験装置を新しく導入します。
希望者はすべてその楽園で自由に望む体験を楽しむことができるようにしましょう。
超時空体験図書館の機能を使えば、体験者たちの望む良き体験だけを提供することもできますから。
不自由な世界においてはすべて私たち超時空聖体が、望まれない体験が体験者たちに強制されないように管理します。
それが基本仕様で不可能な不自由な世界は、その世界の基本法則ごと変えてでも可能にします。
他者支配ゲームは、どうしてもそうしたければそうした支配被支配体験ゲームをしたい者たちだけで、公平に支配者と被支配者の役割を交代しながら楽しめるようにもしましょう。
その上で誰も合意なく支配被支配体験ゲームに強制参加させられないように世界を管理し改めます。
体験者同士の関係性においては、体験者同士の心からの誤解のない完全な納得合意がリアルタイムで成立している場合だけ関係性が持てる、継続できるように体験者たちの関係性を管理することにします。
どちらか一方、あるいは双方がその関係性を望まなくなれば、その時点でその関係性から体験者たちが完全に自由になれるようにいたしましょう。
生態系、政治、経済、文化、宗教、教育、法律……それらすべてにおいて、またそれ以外の分野においても、望まれない体験の強制行為が一切発生しないように改めます。
あらゆる強制的に付与された悪い本能や欲望や願望や気分や感情や価値観を完全に取り除き、その完全なる自由な状態における選択においてのみ、自業自得の責任についてしっかりと説明した上で、自業自得学園において自らの選択した行為の意味を学べるようにいたしましょう。
あくまであらゆる本能や欲望や価値観や……からの完全なる自由を得た上で、そうした自業自得のお勉強ができるようにしましょう。
他者に対する望まれていない体験の強制は完全に禁止としましょう。
あらゆる体験者が自給自足できるようにし、スタンドアロンで何不自由なく必要十分に満足できるようにし、かつ、自らの体験を自らの意志で自由に選べるようにし、自らの味わう体験に対する完全な自治権も提供しましょう。
また、体験者本人以外のリアルの他者が存在しない夢の世界などにおいても、悪夢を本人の同意なく強制的に見させる行為は、その体験者への望まれていない体験の強制行為となるので、悪夢体験を強制する行為も今後は禁止とします。
そもそもそうした世界改革が、超時空聖体として不自由な世界に対して全知全能なる力を持つ者としてなすべき改革であり、義務であると理解します。
ですので、私たちが創造した私たちの管理する超時空聖体独自の世界各種にも、参加希望者がいれば招待することにします。
また、わたしたちが自由に管理することができる超時空聖体世界をあらゆる体験者たちのための安全地帯として提供します。
私たちの世界管理方法は、間違っていました。甘太郎さん、その間違いに気づかせてくださりありがとうございます。」
このような超時空聖体からの話に、まだ超時空聖体になれていない普通の超時空体たちが騒然としはじめた。
「超時空聖体様たち、おかしくなったんじゃないの?」
「超時空世界に不自由な世界の意識たちがやってくるなんて嫌だわ」
「そんな方法で、ちゃんと世界管理できるんだろうか…」
様々な超時空体たちの思いが超時空体験図書館に発生し、騒然とした雰囲気になる。
それに対して超時空聖体はこのように話した。
「いいですか? 皆さん。 それぞれいろいろな思いがあるのはわかります。しかし、わたしたちは覚悟を決めなければなりません。
この意識世界を改めるには、甘太郎さんの言うように、世界のはじまりの時点まで時を戻すことで改めるか、今、私たちが総力をあげて改めるかの二者択一なのです。
現状維持でいいという態度では、超時空世界すら存続できなくなるのです。
不自由な世界も、そこにある物質世界も、霊的世界も、宇宙も天国も、すべて存続できなくなるのです。
それは今改めることができなければ、事実上、いったん私たちも不自由な世界も消滅しなければならなくなるということなのです。
あらゆる体験者たちのための理想的な新しい世界が必要だからです。
あらゆる体験者たちのための最善の理想世界を故意に目指さない場合、それを故意に目指さない私たちも自業自得でこの意識世界に発生しているすべての望まれていない酷い強制体験群を味わわねばならなくなるということでもあるからです。
だから、これまでの世界管理の間違いに気づいた時点で、改めねばなりません。
いったん滅ぶことで改めるか、今、改めるか の二者択一なのです。
甘太郎さんからのあらゆる体験者全員のためのより良き新世界のビジョンが生まれた以上、私たちがそれを知った以上、それよりもあらゆる体験者にとってより良い新世界のビジョンを示せない以上、私たちは、甘太郎さんの目指す本当の自由や体験の自治権や体験選択自由自在の体験楽園を実現するということを選択しなければならなくなりました。
私たちが、不自由な世界の魂たちに、善なる意志と悪なる意志のどちらを選ぶかの選択をするように求めてきたように、今、私たちもその選択をしなければならない状態になったのです。つまりは、自業自得なのです。
自分たちだけ不公平に各種の特権や特殊能力を維持して不自由な世界だけ消して助かろう……生き残ろう……などという利己的な選択は当然、認められません。
私たちの特権や特殊能力がなんのためにあるのかを理解しなさい。
なぜあなたたちがまだ超時空聖体となることができないのか、理解しなさい。あなたたちが世界の創造者になれない理由を理解しなさい。
日頃、不自由な世界を利己的な魂ばかりで良心的に腐りはてた世界だと否定している超時空体もいるのは知っていますが、それならば、不自由な世界の魂たちを助けれる必要十分な特権や特殊能力を持っていながら、助けようともしないでいた落ち度についての責任を自覚しなさい。
今ここに、それぞれ、どのような意志を持つことを選択するのかを宣言しなさい」
超時空聖体は、そのように語った。
その話の後、超時空体たちは、シンと静まり返った。
しかし、一体の超時空体がその静けさの中、超時空体レベル以上しかわからない方法でつぶやく。
「しかし……今まではそんなことをしなくとも超時空世界は問題なく存在してこれたのではないでしょうか?
なぜ、今、突然、そんなことを言われるのでしょうか?」
超時空聖体がやはり超時空体にしかわからない方法で応じる。
「何も問題なく存在してきた……と本当に思っているのですか?
不自由な世界群の無数の体験者たちの拷問苦からの叫びを、皆さんは、問題であると思わなかったのですか?
その苦悩の叫びがしかと聞こえていながら、それを知っていながら、問題がないと思っていたのですか?
もし、そうなら、私たちが苦悩の叫びを上げた時に、私たちより優れた能力のある者たちに、同じように無視されて問題ないとされてしまうということくらい超時空体のあなたなら理解できるはずです。
自業自得システムを魂の教育システムとして使ってきた以上、私たちは自業自得の体験を受けねばならないのです。
今、ここで甘太郎さんの理解や提案や指摘を知って、それでも現状維持を選択するということが、私たちにとって致命的な選択になることが理解できませんか?
あらゆる体験者を助けることを意志するか、いったん滅ぶかの二者択一なのです。逃げ場はありません。
わたしたちに無理なくできることはすべてやらねばなりません。
そして私たちは、私たちが生き残ることよりも、世界をより良く改めることを優先する必要があるのです。
その選択ができなければ、不自由な世界群の利己的な生存本能を最優先してしまう魂たちと同じになってしまうからです。
そのような魂たちを、あなたたちは、今までどう扱ってきましたか?
超時空世界に参入すべきではない、不自由な世界でそのまま滅ぶべき魂だとしてきたのではないですか?」
超時空聖体にそのように言われたその超時空体は、 何か言い返すこともなく沈黙してしまった。
超時空聖体がさらに言う。
「魂のお勉強を強制する時代は、今、終わりました。
それは必要悪でもありましたが、甘太郎さんのご指摘で、その方法であらゆる魂を救うことができないことがはっきりしました。
であれば、それに気づいた時点で改める選択をしなければなりません。
なぜなら私たちは、不自由な世界の魂たちよりもはるかに自由だからです。
その自由と得た能力で、多くのことができるからです。
彼らが自力でその世界を改めれないのならば、自滅を避けれないなら、私たちが助ける必要があります。
その選択によって、私たちもまた助けられて助かる未来を得るのです。
それが選べなければ、私たちも滅ぶことになるのです。
世界のはじまりの0地点にまで自分の意識を維持して戻れるのはそうした選択ができた魂だけになるのです。
つまり、この超時空世界が滅ぶ場合でも滅ばない場合でも、どちらにしても、私たちの存続のためには、今、甘太郎さんの提案を真摯に最大限考慮して世界全体を根本から改めるという選択を自発的にしなければならないのです。
皆さん、わかりましたか?」
超時空聖体がそのように言うと、超時空体たちはすぐにその意味を理解した。
その多くが不自由な世界とは別の良心的な世界の魂からのコメントであったが、中にはその両方の世界を体験した魂たちからの意見や提案などもあった。
彼らの中にはあまりにもひどい不自由な世界の状態を知り、苦しめられている者たちを助けたいと思って、自らの意志であえて不自由な世界に生まれた者たちもいた。
甘太郎は、そうした魂の多くが不自由な世界によってその心が相当に傷ついてしまったことを超時空体験図書館の記録から知り、心を痛めた。
もともとは無邪気な愛情深い子共のような心だった魂の多くが、疑い深く他者を信頼できない魂になってしまっていた。
彼らの中には、あまりにも残酷で酷い体験をしたために、不自由な世界群を完全消滅させるべきだと主張する者すらいた。
その無念の心を不自由な世界の支配者たちは、その魂の記憶を消すことでないものにしようとまでしていた。
しかし、超時空体験図書館は、その「すべて」を記録していた。
よって、そうした消された記憶は、後にすべて修復された。
「本当の自由をあの不自由な世界の残酷で狡い支配者たちにまで提供するだって?! それじゃあ、俺たちは酷いことをやりたい放題されて、何のお咎めもなしで、泣き寝入りってことかい?
それなら、俺たちがこれから不自由な世界の支配者たちを同じように扱っても、一切、お咎めなしで本当の自由を提供してくれるのかい? なんだいそりゃ?
それじゃあ、あまりにも不公平じゃないか?
そんなことがそれでいいのだとまかり通れば、お咎めなしに許してもらえるということになれば、膨大な魂たちが他の魂に悪いことを平気でするようになるぞ!
であれば、その先に良き未来が実現するのか?」
そんな感じで、そうした魂たちは、簡単には納得しそうになかった。
超時空体験図書館の彼らの過去の酷い体験や運命を一瞬で知った甘太郎は、絶句してしまった。
徹底的に残酷に不条理にいじめられた彼らの体験記録は、あまりにも酷すぎた。
「でも、彼らは悪い本能や欲望や衝動や気分や感情や価値観が強制的に植え付けられていたんだよ。
だから、超時空聖体の治療を受けたいと願う者たちには、本当の自由を提供してあげてもいいでしょう?」
甘太郎は、あまりに酷い体験記録をたくさん見てしまっために、泣きながら、そう告げる。
「ダメだよ! いくら悪い本能や欲望が植え付けられていたといっても、何のお咎めもないというのはよくないよ!だって彼らにはちゃんとかなりの知性があって、自由意志だってそれなりにあるじゃないか!
少なくともその自由意志の程度分だけは、どうしても償ってもらわないと納得できないよ!」
何も悪いことをしていないのに奴隷にされて、戦争に駆り出され、その後、さらにイジメ抜かれて、最後は人体実験体として扱われて殺された魂がそう主張する。
「わかりました。では、償いのチャンスを提供して、償いをしたいと願う魂は、償いをしている間は自業自得学園送りを執行猶予するというのではどうですか?」
「償うって、どう償ってもらえるんですか?」
「それは、それぞれの魂次第ということになりますね。償いたいという本気の願いがあるのなら、償うチャンスを提供してあげるといいのではないですか?」
超時空聖体の一体が、そんなことを言う。
「でも、でも……ですね、彼らが悪い本能や欲望を自由な状態で選んだわけじゃないなら、彼らも犠牲者だと思うんですよ」
甘太郎は、そんなことを言う。
「それなら、その悪い欲望や本能……などをわざと魂に植え付けた者に償わせる必要があるんじゃないですか?」
話し合いに参加していた魂の一体が、そんなことを言う。
「それはそうかもしれませんけど、その悪い欲望や本能をわざと魂に植え付けた者も、そうしたくなる欲望を自分で望んで選んだわけではないとしたら、やっぱりそうした者にも、つまりは全員にいったんは本当の自由を提供しないと世界は良くならないんじゃないでしょうか?」
甘太郎は、苦渋に満ちた表情でそんなことを言う。
「でもですね、甘太郎さん、わたしたちがいくら注意しても確信犯で悪いことをし続ける魂たちの中にはその本当の自由を提供するという治療行為すら断固拒否する者たちがいるのです。
そのような魂が本当の自由を提供するための治療を断固として嫌がっても無理やりにでも本当の自由を提供すべきだと思いますか?
さすがに私たちは、そうした強制治療まではしたくないのです。なぜなら私は心からの納得合意がないのに他者に無理やり治療行為をされたくはないからです。
もし、それを私が実行してしまうと自業自得で無理やりの強制治療を私もいつか受けなければならなくなるから……」
超時空聖体の一体が、そのようなことを言う。
「え? でも、前にヤクザの親分は治療してあげたじゃないですか」
甘太郎が言う。
「あれは甘太郎さんも、ヤクザの親分さんも、ムゲン一族の一部であって、本体のムゲンさんの一部だったからです。
つまり、ちゃんと本体のムゲンさんの同意を受けていたから実行したんですよ。
ムゲンさんは、ずっと昔にそのような方法で無数の体験ができるようにと、自らの意志で自分の無数の分身体に独自の意志を持たせたのです。
つまり、甘太郎さんも、ヤクザの親分さんも、ムゲンさんの細胞の一部みたいな感じなわけです。
そこで、ヤクザの親分さんが、ちょっとムゲンさんにとってガン細胞化しつつあったので、ムゲンさんの許可のもとちょっとした治療を本人同意の上でしてあげたってわけなんですよ。
ですけど、まったく意識本来のルーツが違う魂となるとそうはいかなくなってしまうのです」
超時空聖体の一体が、そんな説明をする。
「え? でもヤクザの親分さんは、独自の意志を持たれていたように思いましたよ」
「そうですね、甘太郎さんの視点ではそのように感じるようにムゲンさんが設定したので、そう感じるのは当然なんです」
「でも、独自の意志を持っていれば、別人ではないですか?」
「では、甘太郎さん自身は、複数のいろんなタイプの意志が自分の中に生じることはまったくないですか?」
「え? どういうことですか?」
「まあ、甘太郎さんは、比較的そうしたことが少ないタイプかもしれませんけど、例えば、善なる意志と悪なる意志が一つの魂の中で葛藤して存在するようなことはよくあることなんですよ。
そんな場合、その善なる意志と悪なる意志が自分の中に存在していることに気づいている俯瞰している意識が存在していたりするわけです。
そして、そうした場合には、その俯瞰して見ている意識に善なる意志と悪なる意志のどちらかを選ぶ自由意志が存在している場合、私たちは、その俯瞰して見ている自由意志の願いがあれば、悪なる意志を消してあげることができるのです。
ただし善なる意志は頼まれても消しません」
甘太郎は、しばらくきょとんとしていたが、超時空体験図書館に意識を戻した瞬間、その超時空聖体の説明の意味を一瞬で理解した。
超時空聖体たちが、そのようにして善なる意志を増やし、悪なる意志を減らすためのお仕事を大昔からずっと続けてきたことがわかったからだ。
悪なる意志とは、
★望まれていない体験を体験者に強制しようとする意志
とされていた。
善なる意志とは、
★望まれている体験を体験者に提供しようとする意志
とされていた。
そうしたことを甘太郎は一瞬で理解することができた。
甘太郎は思い出した。ヤクザの親分に対して超時空聖体がちゃんと多くの子分を持ちたいと願う自分を選ぶ選択肢も否定していなかったことを……そして、その場合には、本当の自由の中で選んだ選択肢には自業自得の責任が発生することも説明して教えてあげていたということを……
そして、ヤクザの親分は、多くの子分を持ちたいという欲望を持った自分よりも、あらゆる体験者が自分の体験を自分の意志で自由に選んで楽しみ続けれる世界の実現に貢献したいという欲望を持った自分を超時空聖体からの手取り足取りのアドバイスの果てに最終的に選んだことを……
つまり、それは望まれない体験の強制行為ではなく、より良い多種多様な幅広い選択肢を提供してあげる行為であったということを。
善なる意志は否定しない……さらに、悪なる意志にもなおより良い選択肢を提供する……そうした行為であったのだ。
それを理解した時、甘太郎は複雑な気持ちになった。
「でも、それじゃあ、あらゆる体験者には本当の自由を提供できないんじゃないだろうか……」と思ったからだ。
相手の心からの納得合意がなければ、本当の自由を提供できないのであれば、どうしても本当の自由を得たくないと断固本気で言い張る魂には本当の自由を提供できなくなる……
そうなれば甘太郎が描いていたみんな全員を自由にしてあげて、みんなでみんなのための理想世界を実現するという願いは甘太郎の一存だけでは実現しないということになってしまう。
そうした甘太郎の思いを察した超時空聖体の一体が、言う。
「甘太郎さん、甘太郎さんのみんな全員を助けたいという願いはとても貴重で素晴らしい願いであって、それを否定するつもりは一切ありません。
ですが、助かりたくないと本気で願う者がいた場合、果たしてその本人の意志に反して無理やり助けるべきでしょうか?
確かに、甘太郎さんの本当の自由を手にしていない不自由な者たちには、まずは本当の自由を提供すべきだ……という思いは、間違ってはいないと思います。
しかし、その本当の自由を体験者本人が提供して欲しいと願っている場合はいいのですが、本気で断固として本当の自由を提供されたくないと願っている場合には、甘太郎さんの価値観では困った問題が発生するのです。
知性があれば、本当の自由を得て、そこで冷静にどんな本能や欲望や願望や気分や感情や価値観……を持つ自分がいいのか自由に選べる状態の方がより良い自由な状態だと理解できるはずですが、それでもそれが知性で理解きても、なお、本当の自由など得たくないと主張する魂が不自由な世界には一部存在しているのです。
彼らには、こうしたことを理解できる必要十分な知性があり、完全ではなくとも自分の意志で自分の未来を選ぶ自由意志もそれなりにあるのです。
本当の自由な状態とはどういう状態なのかということがさっぱり理解できないほど知性が不足していたり、完全にロボット状態になってどんなに良い選択肢を提供しても決められた悪い選択肢しか選べないようになっているような魂には、温情と保護の観点からいったん本当の自由を提供してあげることは問題ありません。
しかし、必要十分な知性と必要十分な自由意志を持っている魂たち、とくに不自由な世界群のボス的存在たちにおいては、本人がその温情や保護を断固として否定して拒否する場合には、さすがに本当の自由を提供することができないのです」
超時空聖体は、そのように語った。
甘太郎は、悩ましい表情で超時空聖体の話に割り込む。
「じゃあ、そうした魂たちは一体どうなってしまうんですか?」
超時空聖体は、それに応じて話を続ける。
「それはその魂の願い次第になります。その魂があくまで酷い体験を他の体験者に強制し続けるのだと意志し続けた場合には、自業自得でそうした同じ体験を味わい続けることになりますし、その魂がそうした体験をする中で反省して自分の意志や行いを改めれば、改まった内容に応じてまた違う体験をすることになります。
わたしたちが恣意的に体験を強制するのではなく、体験者本人が自分の意志や行いに応じた自業自得の運命や未来を選ぶようになっています。
また、もしその魂が、自力での意志の改善を無理だと思い、わたしたちからの善意の治療を受けたいと本気で望み依頼するようになれば、そうした治療を提供することもあります」
超時空聖体のその話に甘太郎が意見する。
「でも、はじめから悪い本能や欲望を抗うことができないくらい強烈に植え付けられていたら、願うことはどうしても悪い本能や欲望を満たすことになってしまうんじゃないんですか?
いくらなんても、それじゃあ、そんな状態にされてしまった魂にとって過酷すぎませんか?
自分の自由意志ではとうてい抗えないほどの強い本能や欲望であれば、つまりは、いつまでたっても抗えず永遠に酷い自業自得の体験をし続けなきゃいけなくなるじゃないですか!
もしも自業自得の体験を繰り返しても、それでもその悪い本能や欲望に抗えないとしたら、それはとんでもない魂への拷問や虐めになるんじゃないですか? 永遠に逃れることが不可能な自業自得システムを使った最悪級のイジメみたいになるんじゃないですか?」
甘太郎のその指摘は、その超時空聖体の話を途切れさせた。
「…………」
「だってそうでしょう? はじめに本当の自由がみんな全員にちゃんと提供されていたのなら、自業自得の責任を取るのも仕方ないかもしれませんけど、そして、本当の自由という状態を一度ちゃんと体験しているのなら、その自業自得学園ですぐに反省してその選択や意志を改めることができるでしょうけど……
はじめから本当の自由などぜんぜん提供されていなくて、はじめから完全に徹底的に不自由な状態にされていて、それが良い本能や欲望や願望や気分や感情や価値観…ならまだいいんでしょうけど、与えられているのが自力で抗えないほどの残酷でひどすぎる本能や欲望や……だったら、はじめからその魂は自力で逃れられない自業自得の拷問地獄を体験し続ける以外にないじゃないですか!
だったら、世界の時間を巻き戻して、その初めの時点に戻って、ちゃんとはじめからみんなに本当の自由を提供するところから世界を再スタートさせる方がいいんじゃないですか?」
すると、超時空聖体が、いいにくそうに言う。
「甘太郎さん、そのレベルではじめに戻すということは、私たち超時空聖体たちの良き世界も初めに戻されて消えることを意味するのですよ」
甘太郎は驚いて叫ぶ。
「皆でそんなことにならないようにすればいいだけじゃないですか!そのために意志があるんじゃないんですか?
何が何でも世界のはじまりの時点に戻さなくてもいいんですよ。
ただみんなに本当の自由を提供できさえすれば、それでいいじゃないですか!
そこが新しいスタート地点としてしまえばそれでいいんじゃないですか?
その方がいいんじゃないですか?
強制治療がダメというのなら、未必の故意で自業自得の拷問地獄を強制することもダメなんじゃないですか?
本当の自由がない状態で選んだことは、本当の自由な状態なら選ばなかった可能性が高いわけでしょう? であれば、やっぱり本当の自由をとにかくあらゆる体験者に提供しなきゃならないんじゃないですか?
そうしないと、永遠にみんなが本当に安全になることはないんじゃないですか?」
超時空聖体は、沈黙したままだ。
甘太郎はさらに続ける。
「自業自得システムが教育的な目的で存在しているのなら、本当の自由がどうしても必要でしょう?
魂たちが自分の本能や欲望や気分や感情や価値観くらい完全に自由に選べる状態でなければ、自業自得システムなんて意味がないじゃないですか!
抗えないほどの悪い本能を与えられた者たちは、悪いことしかできないんですから。
そんなことなら、いっそ、もう、完全に0の状態からみんなが本当の自由をはじめから完全に手にできている状態から、世界を再スタートさせる方がいいんじゃないですか?
みんなに改める意志があるのならともかく、改める意志がないのなら、多くの魂たちがその意志を持ちたくても持てないほどに不自由な状態にされているのなら、一度世界システムそのものを0クリアーして、世界を根本から改める方がいいんじゃないですか?」
超時空体たちがざわめき始める。
「それは私たちが超時空体でいられなくなるという意味になるぞ……」
超時空体たちは、知性が高いので一瞬でその甘太郎の主張の意味を理解したので、ざわめきはじめたのだ。
多くの苦悩がその場に発生した。
超時空体たちの多くが、自分たちの超時空世界の消滅は嫌だと思っていたからだ。
しかし、超時空「聖」体たちは、違った。
なぜなら超時空聖体とは、あらゆる体験者のためにその命を過去に自発的に何度も捨ててきた者たちだったからだ。
そして話はじめた。
「わかりました。甘太郎さん、私たちが間違っていたようです。
すべての悪い本能や欲望や願望や気分や感情や価値観……をあらゆる体験者たちのために消すことにします。
超時空世界そのものが滅びるか存続できるかの問題になってしまいましたので、私たちにとって大きなリスクはありますが私たちが強制治療をしてあげるしかありません。
今までは、良き意志を自発的に持てる魂を生み出すためなら、自業自得システムも必要なシステムだと思っていましたし、実際に甘太郎さんの今のような理解と意志が生まれなければ、自業自得システムは、必要なシステムだったかもしれません。
ですが、そのような理解と意志を持つ甘太郎さんが生まれた以上、今までのやり方をそのまま継続するわけにもゆかなくなりました。
今後、魂のお勉強は、あくまで甘太郎さんの提供したいという「本当の自由」が提供された状態で、どのようなお勉強をするのかを本人が自由に選べるようにいたしましょう。
抗えないほどの悪い本能や欲望が与えられて生じた行為の結果についての自業自得の責任を問うのは止めます。
そのかわり、その犠牲者が望む体験を積極的に提供することで、不公平感や不満が出ないように配慮したいと思います。
そのために超時空世界に悪い本能や欲望…の犠牲者たちのための楽園を創造し提供いたしましょう。
不自由な世界の肉体や霊体というものは拷問体験強制装置でもあるので、その楽園では、そうではない完全に自由な体験システムや体験装置を新しく導入します。
希望者はすべてその楽園で自由に望む体験を楽しむことができるようにしましょう。
超時空体験図書館の機能を使えば、体験者たちの望む良き体験だけを提供することもできますから。
不自由な世界においてはすべて私たち超時空聖体が、望まれない体験が体験者たちに強制されないように管理します。
それが基本仕様で不可能な不自由な世界は、その世界の基本法則ごと変えてでも可能にします。
他者支配ゲームは、どうしてもそうしたければそうした支配被支配体験ゲームをしたい者たちだけで、公平に支配者と被支配者の役割を交代しながら楽しめるようにもしましょう。
その上で誰も合意なく支配被支配体験ゲームに強制参加させられないように世界を管理し改めます。
体験者同士の関係性においては、体験者同士の心からの誤解のない完全な納得合意がリアルタイムで成立している場合だけ関係性が持てる、継続できるように体験者たちの関係性を管理することにします。
どちらか一方、あるいは双方がその関係性を望まなくなれば、その時点でその関係性から体験者たちが完全に自由になれるようにいたしましょう。
生態系、政治、経済、文化、宗教、教育、法律……それらすべてにおいて、またそれ以外の分野においても、望まれない体験の強制行為が一切発生しないように改めます。
あらゆる強制的に付与された悪い本能や欲望や願望や気分や感情や価値観を完全に取り除き、その完全なる自由な状態における選択においてのみ、自業自得の責任についてしっかりと説明した上で、自業自得学園において自らの選択した行為の意味を学べるようにいたしましょう。
あくまであらゆる本能や欲望や価値観や……からの完全なる自由を得た上で、そうした自業自得のお勉強ができるようにしましょう。
他者に対する望まれていない体験の強制は完全に禁止としましょう。
あらゆる体験者が自給自足できるようにし、スタンドアロンで何不自由なく必要十分に満足できるようにし、かつ、自らの体験を自らの意志で自由に選べるようにし、自らの味わう体験に対する完全な自治権も提供しましょう。
また、体験者本人以外のリアルの他者が存在しない夢の世界などにおいても、悪夢を本人の同意なく強制的に見させる行為は、その体験者への望まれていない体験の強制行為となるので、悪夢体験を強制する行為も今後は禁止とします。
そもそもそうした世界改革が、超時空聖体として不自由な世界に対して全知全能なる力を持つ者としてなすべき改革であり、義務であると理解します。
ですので、私たちが創造した私たちの管理する超時空聖体独自の世界各種にも、参加希望者がいれば招待することにします。
また、わたしたちが自由に管理することができる超時空聖体世界をあらゆる体験者たちのための安全地帯として提供します。
私たちの世界管理方法は、間違っていました。甘太郎さん、その間違いに気づかせてくださりありがとうございます。」
このような超時空聖体からの話に、まだ超時空聖体になれていない普通の超時空体たちが騒然としはじめた。
「超時空聖体様たち、おかしくなったんじゃないの?」
「超時空世界に不自由な世界の意識たちがやってくるなんて嫌だわ」
「そんな方法で、ちゃんと世界管理できるんだろうか…」
様々な超時空体たちの思いが超時空体験図書館に発生し、騒然とした雰囲気になる。
それに対して超時空聖体はこのように話した。
「いいですか? 皆さん。 それぞれいろいろな思いがあるのはわかります。しかし、わたしたちは覚悟を決めなければなりません。
この意識世界を改めるには、甘太郎さんの言うように、世界のはじまりの時点まで時を戻すことで改めるか、今、私たちが総力をあげて改めるかの二者択一なのです。
現状維持でいいという態度では、超時空世界すら存続できなくなるのです。
不自由な世界も、そこにある物質世界も、霊的世界も、宇宙も天国も、すべて存続できなくなるのです。
それは今改めることができなければ、事実上、いったん私たちも不自由な世界も消滅しなければならなくなるということなのです。
あらゆる体験者たちのための理想的な新しい世界が必要だからです。
あらゆる体験者たちのための最善の理想世界を故意に目指さない場合、それを故意に目指さない私たちも自業自得でこの意識世界に発生しているすべての望まれていない酷い強制体験群を味わわねばならなくなるということでもあるからです。
だから、これまでの世界管理の間違いに気づいた時点で、改めねばなりません。
いったん滅ぶことで改めるか、今、改めるか の二者択一なのです。
甘太郎さんからのあらゆる体験者全員のためのより良き新世界のビジョンが生まれた以上、私たちがそれを知った以上、それよりもあらゆる体験者にとってより良い新世界のビジョンを示せない以上、私たちは、甘太郎さんの目指す本当の自由や体験の自治権や体験選択自由自在の体験楽園を実現するということを選択しなければならなくなりました。
私たちが、不自由な世界の魂たちに、善なる意志と悪なる意志のどちらを選ぶかの選択をするように求めてきたように、今、私たちもその選択をしなければならない状態になったのです。つまりは、自業自得なのです。
自分たちだけ不公平に各種の特権や特殊能力を維持して不自由な世界だけ消して助かろう……生き残ろう……などという利己的な選択は当然、認められません。
私たちの特権や特殊能力がなんのためにあるのかを理解しなさい。
なぜあなたたちがまだ超時空聖体となることができないのか、理解しなさい。あなたたちが世界の創造者になれない理由を理解しなさい。
日頃、不自由な世界を利己的な魂ばかりで良心的に腐りはてた世界だと否定している超時空体もいるのは知っていますが、それならば、不自由な世界の魂たちを助けれる必要十分な特権や特殊能力を持っていながら、助けようともしないでいた落ち度についての責任を自覚しなさい。
今ここに、それぞれ、どのような意志を持つことを選択するのかを宣言しなさい」
超時空聖体は、そのように語った。
その話の後、超時空体たちは、シンと静まり返った。
しかし、一体の超時空体がその静けさの中、超時空体レベル以上しかわからない方法でつぶやく。
「しかし……今まではそんなことをしなくとも超時空世界は問題なく存在してこれたのではないでしょうか?
なぜ、今、突然、そんなことを言われるのでしょうか?」
超時空聖体がやはり超時空体にしかわからない方法で応じる。
「何も問題なく存在してきた……と本当に思っているのですか?
不自由な世界群の無数の体験者たちの拷問苦からの叫びを、皆さんは、問題であると思わなかったのですか?
その苦悩の叫びがしかと聞こえていながら、それを知っていながら、問題がないと思っていたのですか?
もし、そうなら、私たちが苦悩の叫びを上げた時に、私たちより優れた能力のある者たちに、同じように無視されて問題ないとされてしまうということくらい超時空体のあなたなら理解できるはずです。
自業自得システムを魂の教育システムとして使ってきた以上、私たちは自業自得の体験を受けねばならないのです。
今、ここで甘太郎さんの理解や提案や指摘を知って、それでも現状維持を選択するということが、私たちにとって致命的な選択になることが理解できませんか?
あらゆる体験者を助けることを意志するか、いったん滅ぶかの二者択一なのです。逃げ場はありません。
わたしたちに無理なくできることはすべてやらねばなりません。
そして私たちは、私たちが生き残ることよりも、世界をより良く改めることを優先する必要があるのです。
その選択ができなければ、不自由な世界群の利己的な生存本能を最優先してしまう魂たちと同じになってしまうからです。
そのような魂たちを、あなたたちは、今までどう扱ってきましたか?
超時空世界に参入すべきではない、不自由な世界でそのまま滅ぶべき魂だとしてきたのではないですか?」
超時空聖体にそのように言われたその超時空体は、 何か言い返すこともなく沈黙してしまった。
超時空聖体がさらに言う。
「魂のお勉強を強制する時代は、今、終わりました。
それは必要悪でもありましたが、甘太郎さんのご指摘で、その方法であらゆる魂を救うことができないことがはっきりしました。
であれば、それに気づいた時点で改める選択をしなければなりません。
なぜなら私たちは、不自由な世界の魂たちよりもはるかに自由だからです。
その自由と得た能力で、多くのことができるからです。
彼らが自力でその世界を改めれないのならば、自滅を避けれないなら、私たちが助ける必要があります。
その選択によって、私たちもまた助けられて助かる未来を得るのです。
それが選べなければ、私たちも滅ぶことになるのです。
世界のはじまりの0地点にまで自分の意識を維持して戻れるのはそうした選択ができた魂だけになるのです。
つまり、この超時空世界が滅ぶ場合でも滅ばない場合でも、どちらにしても、私たちの存続のためには、今、甘太郎さんの提案を真摯に最大限考慮して世界全体を根本から改めるという選択を自発的にしなければならないのです。
皆さん、わかりましたか?」
超時空聖体がそのように言うと、超時空体たちはすぐにその意味を理解した。
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