ただ書きたくて書いた小説集

みつきりほ

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クリスマスの話

11回目のクリスマス

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12月24日。夜。
家に帰ると、パジャマ姿の娘がイライラしながら手紙を書いていた。

「ただいま。」
「あ、おかえりお父さん!ちょっと聞いてよ!」
「何?またお母さんと喧嘩したのか?」
「違う!他のこと!」

娘はそう言った。

「クラスで色々あったらしくて。」

妻はそう言った。

「え、色々?何があったんだ?」

不安になり、俺は娘にそう言った。

「今日、学校に行ったらさ、まなと君が『サンタとか信じてるやついんの?』って言っててさ。」

娘はそう話始めた。ああ、なんとなくわかってきた。

「私が『何言ってんの?サンタさんいるに決まってるじゃん。』って言ったの。そしたら、『お前こそ何言ってんだよ。いないよ。』ってまなと君とその周りにいた男子が笑いながら言ってて。私完全に頭にきてさ。」
「それで、クラスの中でサンタさんいる派といない派に別れて喧嘩したらしいの。夕方、担任の先生から電話かかってきてびっくりしたわ。」

妻はそう言った。

「それ、お前もクラスの人も怪我とかしてないよな?大丈夫なのか?」

俺がそう言うと、

「言い合っただけだから大丈夫だよ。ここちゃん先生の授業ができなかったってだけだから。」

と娘は言った。おいおい、怪我してなかったのはいいとして、授業できてないのは問題だぞ。大丈夫の範囲じゃないぞ。

「何が大丈夫よ。授業できなくて、担任の先生困ってるに決まってるでしょ。」

妻はそう言った。

「あ、先生からなんて電話きたんだ?」
「『すみません、私の力不足で口論を止められなくて、授業進めることができず…。』みたいなこと。クラスの子の家庭全員に電話してるらしくて。先生すごく謝っていたけど、謝るべきなのは、あんたたちなんだからね。」

妻はそう言った。すると、娘は

「サンタさんはいるの!いないって言ってるまなと君たちが悪い!」

と言った。

「ちょっと、あんたからも何か言ってよ。」

妻は俺にそう言った。

「お父さんもまなと君が悪いと思うよね!」

娘は俺にそう言った。俺は少し考え、娘に言う。

「うーん。お父さんはもうプレゼント貰わなくなったから、いるとかいないとか考えなくなっちゃったなあ。」
「じゃあ今考えてよ!」
「そうだなあ。明日、ひーちゃんがプレゼントちゃんと貰ってたらサンタさんいるのかもね。」
「大丈夫!絶対貰うから!ねえ見て!サンタさんに欲しいプレゼントとお手紙書いてもらうように頼んでるんだ!よっちゃんがね、昔サンタさんからお手紙貰ったことあるんだって!英語で書かれてたから本物確定って言ってた!それとね…」
「ひーちゃん。」

娘が言うことを止めて俺の話を聞いてくれるように、そう呼びかける。しかし、娘は聞こえなかったのか、話を続ける。

「今、ビデオカメラを私の部屋に隠してるんだ。それでサンタさんの姿撮れれば、いるってわかるでしょ?あと、私が姿見たらいるって言えるから、今日サンタさん来るまで起きとこうと思って!ね、お父さんいいと思わない?」

娘がやっと言い終わったのを聞いて、俺は娘の頭を撫でながらこう言う。

「ひーちゃん。サンタさんはどんな子にプレゼントを渡すんだっけ?」
「えっと…いい子にしていた子。」
「そうだよね。クラスの子と喧嘩して、先生の授業の邪魔をしていた子はいい子だと思う?」
「…でもあれは!」
「喧嘩の原因はどっちが悪いかわからないけど、先生の授業の邪魔をしていたのはみんな悪いよね。」
「…うん。」
「それと、こんな夜遅くまで起きてる子はいい子だと思う?」
「…思わない。」
「そうだよね。」
「サンタさん今年来ないのかな?」

娘は涙目でそう言った。

「きっと、明後日学校に行った時、先生に謝ること約束してくれたら来るかもしれないよ?」
「本当!?」
「うん。それと、今から寝たら来るかもね。」
「わかった!寝る!」

娘はそう言った。

「ちゃんと歯磨いたか?」
「磨いた!夜ご飯食べたし、ケーキも食べたし、お風呂も入ったよ!これ全部してないのはお父さんだけ!」
「そっか。じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい!」

娘はそう言って、自分の部屋へと言った。

「はあ、やっと寝てくれた。ありがとう。」

妻はそう言って、お茶を持ってきてくれた。

「『今から帰る』って連絡した時、『ひーちゃんが寝てくれない』という返信きてびっくりしたよ。お茶、ありがとう。」

俺はそう言った。俺と妻はリビングの椅子に座り、お茶を飲んだ。

「そう言う年になったのか。」

俺はそう呟いた。

「もう小学4年生だよ。私もあのぐらいの年齢で親がプレゼント置いてるって知ったよ。」
「俺は小6の時だったかなあ。…なんか、成長したのかなと感じると共に寂しさも少しある気がして。」
「大きくなったんだね、ひーちゃん。」

妻はそう言ってお茶を飲んだ。

「そうだなあ。長かったようで短かったような気がするよ。」
「楽しかったこともあったけど、大変なこともいっぱいあったね。」
「明日からもきっと、色々あるよな。」
「うん。これからも、家事協力して下さい。」
「当たり前だろ。これからも、よろしくな。」

俺はそう言った。

「あ、夜ご飯食べてきたんだっけ?」
「うん。大丈夫。」
「なら良かった。」
「仕事の同僚と夜食して、銭湯も一緒に入ったよ。」
「あ、そうなの。」

そんな話をしていたら、ふと妻が

「きっとまだあの子はサンタさん信じてると思うけど、いないと知ったらどうなっちゃうんだろう。」

と呟いた。

「…いないって訳ではないのかな。」

俺はそう言った。

「どういうこと?もしかして、フィンランドにいるとかボランティアであるとかそういう話?」

妻はそう言った。

「それもあるけど。きっと、ひーちゃんが想像してるサンタさんではないと思うけど、俺は…というか12月24日の夜に子どものためにプレゼントをあげている人たちはみんなサンタさんだって言ってもいいのかも、と思って。俺が仕事場に行ったら、『そこで働いてる人』であって、俺がここに帰ると『お父さん』である、みたいな感じで。」

俺はそう言った。

「なるほどね。…なんか昔、そんな歌聞いたことがある気がする。」

妻はそう言った。

「ということで、今から『サンタクロース』としてプレゼント置きに行くよ。」
「今回大変よ。きっとあの子、サンタさんからの手紙期待しているし、隠しカメラもあるわよ。」
「大丈夫。手紙は英語調べながら書くとして、部屋に入る時はサンタクロースの衣装で入るよ。たまたま仕事で貰ってて良かった。」
「たまたますぎてびっくりしたわ。」

妻はそう言った。




次の日、娘はプレゼントと手紙を貰ったことにすごい喜んでて、「カメラに映ってるか確認したら?」と俺が聞いたら、「カメラ撮るの、盗撮だと思って、いい子じゃないと思って辞めた。」と娘は言い、あの格好意味は全くなかったんだなとサンタクロースである俺は思ったのだった。


終わり。
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