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第三話 聖剣エクスカリバー
しおりを挟む冒険者として職業とスキルが与えられてからもう二年がたった。
俺は十七歳になった。
結局、憧れだった冒険者にはなれなかった。
冒険をするにはパーティーを組む必要がある。
職業とスキルを授かってから、しばらくはパーティー探しに明けくれた。
でも、『職業はボディビルダー、スキルは無限プロテインです!』というとみんな拒否した。
聞いた瞬間に笑いだす奴や聞きかえす奴。
冗談だと思われて絶対に信じない奴とか反応はいろいろだったけど、最期は必ず拒否された。
でも、しょうがないんだ。
俺だって逆の立場だったら同じことをするだろう。
冒険者は遊びじゃない。命懸けの仕事だ。
ひとりのミスが原因でパーティーが全滅することもある。
だからこそ、メンバー選びは生死を分ける重要なものだ。
誰だって、わけのわからないボディビルダーをパーティーに加えたくない。
その気持ちは俺にも理解できる。
でも今はけっこう満足している。
憧れだった冒険者にはなれなかった。
けれど、職業・ボディビルダーとスキル・無限プロテインのおかげで、たった二年間の筋トレで王国一のボディビルダーになれた。
コンテストでは向かうところ敵なしの二連覇中だ。
今はコールマンさんと一緒にシルバージムを経営してる。
王国一のボディビルダーがいるジムということでけっこう繁盛している。
今日はいい天気だ。
減量期も終わったし、最近できた評判のバームクーヘン屋さんに行ってみることにした。
◇◆◇◆◇◆◇
バームクーヘン屋さんへ向かう途中、人だかりを発見した。
なんだろう?
闘技場にみんな集まっている。
屈強な冒険者がたくさんいる。
A級冒険者の証である黄金プレートを首にかけているパーティーが目に入る。
勇者ガレリウスのパーティーだ。全員が黄金プレートだ。
二十年前に魔王ベルゼブブを倒した英雄オーディンのパーティーがS級冒険者、つまり白金プレートだが彼らはすでに引退している。
現役ではガレリウスのパーティーが最強だと言われている。
すべてを一刀両断できる勇者ガレリウス、すべてを焼き尽くす火魔法使いミエル、死者をも復活させる光魔法使いエリーヌ、王国一の怪力と言われているゴーレムのサガンだ。
すこし悔しかった。
現状には満足している。
でも、彼らを見ていると冒険者に憧れていた気持ちを思いだしてしまう。
彼らほどにはなれなくても、B級冒険者にはなれたかもしれないと。
しかし何やら様子がおかしい。
「落ち込むことないよ、ガレリウス。まだ時が訪れていないだけだよ」
ミエルがガレリウスを慰めている。
「ワシもその意見に賛成だ。ガレリウス、お主より強い男をワシは知らん」
サガンもあとに続いて言った。
ガレリウスは下を向いて言葉を発しない。
一体何が起きているんだ?
このレベルのパーティーがここにいること自体、普通じゃない。
最高峰の冒険者たちはギルドからではなく、国王から命令うけ、業務を遂行する。
そんなパーティーがこんな市内地にいること自体、ただごとではないのだ。
現状を把握するために奥に進んでみる。
人混みの中に見知った顔を発見した。
「アレックス! ヤン! 久しぶり。ここで何してるんだ?」
ふたりに会うのは十五歳で学校を卒業してから二年ぶりだ。
ヤンの髪型がパーマになってて驚いた。
サラサラツヤツヤヘアーだったのに……。
ヤンのキューティクルが台無しだ。
俺は胸がチクっとした。
「久しぶり! お前、すげえでかくなったな! ジムで働いてるんだっけ?」
アレックスの声は相変わらずでかい。
「本当に久しぶりですね。大きくなりましたね。オリバさんがここまで大きくなっているとは思ってなかったですよ」
ヤンもアレックスに続く。
「まあね。これでも王国一のボディビルダーになったんだぜ。職業・ボディビルダーとスキル・無限プロテインは俺に合ってたみたいでさ」
俺は卒業してからの経緯を語った。
ふたりも今までのことを話してくれた。
ふたりは勇者とパーティーを組んで、三人組で頑張っているらしい。
やっとC級冒険者になったと言っていた。
ふたりの首にかかっている銅色プレートがすこしだけ羨ましい。
「ボクたちは聖剣と聖なる鎧を授かる資格があるか挑戦するためにここに来たんです」
冒険者たちが闘技場に集まっている理由をヤンが説明してくれた。
魔石に突き刺さった聖剣エクスカリバーが闘技場の中央に安置されている。
この聖剣を引き抜いたものに、聖剣エクスカリバーと聖なる鎧オリハルコンが与えられる。
どちらも神器と呼ばれ、二十年前に英雄オーディンが魔王ベルゼブブを倒したときに使用したものだ。
すべてを切り裂く聖剣エクスカリバー、最高の硬度を誇る鎧オリハルコン。
このふたつを装備できたものには神の力が宿ると言われる。
「俺たちにエクスカリバーは抜けなかったけどな!」
アレックスが明るく言った。
「でもまさか、現役最強パーティーのリーダー・ガレリウスが抜けなかったのは意外でしたね。王国一の怪力でゴーレムのサガンでさえも聖剣は抜けませんでした。エクスカリバーは絶対に力では抜けない。聖剣に選ばれたものにしか抜けないっていうのは本当のようですね」
ヤンが声を落とし、ガレリウスのパーティーへ目を向ける。
「お前も試して来いよ! あの神器がお前のものになったら、どっかの貴族に売りつければ一生遊んで暮らせるぜ!」
冗談まじりにアレックスが勧めてくる。
たしかに宝くじだと思って挑戦するのはアリだ。
みんなあの剣を抜けていないから、失敗しても恥ずかしくない。
それに、伝説の聖剣エクスカリバーを握れる機会なんてこれが最初で最後だろう。
「だな! 王国一のボディビルダーの実力みせてやるよ!」
オリバは無駄にボディビルのポーズを決める。
真正面を向き、胸を張って腹を凹ませる。
両腕は降ろし、肘を少し曲げて、広背筋を大きく広げる。
そう、ボディビルの基本姿勢『リラックス・ポーズ』だ。
『リラックス』という名前だが全然リラックスできない。
全身に力を入れっぱなしの謎ネーミングのポーズだ。
「キレてる! キレてる!」
アレックスが笑いながら掛け声をかけてくれた。
◇◆◇◆◇◆◇
目の前では屈強な武闘家がエクスカリバーを引き抜こうと顔を真っ赤にしている。
武闘家は力が一番強い職業だ。
シルバープレートだからB級冒険者。
冒険者の上位5パーセントに入る猛者だ。
それでもエクスカリバーは魔石に突き刺さったままビクともしない。
ヤンが言ってたとおり力では抜けないんだろう。
「次の挑戦者、どうぞ!」
司会に促されて前にでる。
目の前には聖剣エクスカリバーがある。
伝説の聖剣を握れると思うと緊張してくる。
俺は心臓の鼓動を感じながら、わざとゆっくりとエクスカリバーに手を伸ばした。
ここで余裕をみせておかないと緊張しているのが周りにバレて恥ずかしい。
冒険したこともない俺にこの剣を抜ける可能性はない。
すこしでも期待していたように思われたくないのだ。
エクスカリバーの柄を握る。
硬いけど、鉄のような冷たい感じはしない不思議な硬さだ。
この場に立っている以上、可能性がなくても剣を抜くしぐさをしないといけない。
俺は柄を強く握りしめ、力いっぱい引き上げた。
黒板を爪でひっかいた音を百倍不快にした音が闘技場全体に響き渡った。
その音はまるで、鉄の爪をもつ魔女が黒板に命と意識を与え、その黒板を右端から左端までその鉄の爪で切り裂いたときに聞こえる黒板の断末魔の叫びのようであった。
闘技場にいる全員がこっちを向いた。
高々と上げた俺の右腕にはエクスカリバーが握られていた。
うそだろ、俺……。
俺は冒険にでたこともないし、戦闘用の職業でもない、ただのボディビルダーだ。
ってか、エクスカリバーを抜くときすんごい音がした。
ほんとにこれでいいのか?
エクスカリバーが刺さっていた魔石は粉々に砕け、エクスカリバーにも魔石の一部が付着している。
もっとスルッと魔石から抜けるものだと思っていたけど……。
周りの冒険者たちも大きく目を見開いている。
「……えー……はい……エクスカリバーを抜いた者が現れました……王命により、聖剣エクスカリバーと聖なる鎧オリハルコンをこの者に授けます……」
司会も戸惑っている。
でも俺のほうがもっと戸惑ってる。
俺が神器をもらっても何もできない。
ただ重い責任を負わされるだけだ。面倒ごとはごめんだ。
「俺に神器は必要ありません」
そう言おうとした瞬間、アレックスの言葉が思い浮かぶ。
神器を貴族に売り飛ばせば一生遊んで暮らせる――
ああ……人間とはなんて業の深い生き物なんだろう。
「ありがたきお言葉! このオリバ・ラインハルト、謹んで神器を受け賜ります!」
俺は司会に向かって膝をついて答えていた。
「それはならん!」
鋭い声が闘技場に響き渡る。
短髪白髪の男が立っていた。
歳は四十頃だろう。
大柄ではないが引き締まった筋肉質な体は鎧の上からでも分かる。
百戦錬磨の猛者だけが放つオーラを全身から放っている。
俺はこの男を知っている。国民全員が知っている。
この男の銅像はどこにでもある。学校でも歴史の時間に彼らについて習う。
首にはS級冒険者の証・白金プレートが輝いている。
彼の名は英雄オーディン。
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