humanics

黒遠

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『お待たせしました、お客様……ええと、お持ち帰りになられてもですね、そちらは食用のヒューマニクスでありますので、寿命が安定しておりません。また、返品等はお受けいたしかねますので、処分の際はお近くの生肉店等にご連絡ください。えー……ヒューマニクスが死亡した場合、人間と間違えられる可能性がありますので、遺棄は禁止となっております。ヒューマニクスのタグを同梱の上、動物用の焼却場にて処理してください。また、ですね、その……先ほども申し上げましたとおり、当店はあくまで食材を選べるレストランですので、食材の持ち帰りは例外でございます。他言無用の上、ご自宅に持ち帰られた後も、当店からの持ち出し品であることは伏せていただくようお願いいたします』 
「帰ろうか」 
 俺は彼の白い体に上着をかけた。31号は首をかしげて俺を見た。「食べないの?」 
「うん。一緒に暮らそう」 
「くらそう?くらそうってどういうこと」 
「肉にならないで、気持ちいいことや楽しいことをいっぱいするっていうことだよ」 
 まずは名前を考えなければならない。服も用意しないと。 
 サービスマンがタグを持ってやって来たので、多目のチップを代わりに渡してやった。
「本日は、ご利用ありがとうございました」 
「あの3人にはいいように言っておいて。領収証は会社へ」 
「かしこまりました。またのご利用をお待ちしております」 

 もう俺はこないと思うけど。 
 俺は柔らかい白い手を引いて、タクシーを拾った。 
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