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Vol.6.店長とのやりとり
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「――ミサミサ。もしかして、彼氏出来た?」
新作の商品を黙々と開封していると、不意に、隣で一緒に作業する店長がそんなことを言ってきた。――いや。
「バレてます……?」
「こないだ本社行った辺りかなぁ。ストッキングもパンプスも、ちょっと汚れてんのに、妙に、お肌がつやつやしちゃって。汚れ云々は、須賀ちゃんがしっかり突っ込んでいたからぼくは黙秘したんだけど。……ってごめんこれ、セクハラ発言?」
笑うほかあるまい。
「や。いいです。……見た目の変化とかは、正直に、言って頂いたほうが……。こういう仕事をしている以上、外見にも気を遣うべきですし……」
「それで。そんなに好きなのに、なにを悩んでいるの?」
黒髪で。40歳前後。パーマをかけて、前髪をセンター分けした店長は正直に格好いい。無精ひげがまた似合うんだわ。今日なんかアロハのシャツ着てるもん。アロハ。アロハーアロエードンキー。600円ジェルは神。
頬杖をついて、色めいた眼差しを向ける効果がどれほどアラサー女の心臓を直撃するのか。すこしは、ご考慮願いたい。
「や。なんか。知り合ったばかりで……すぐ付き合うってのも……相手のこと、まだ、よく、わっかんないし……変なひとだったらやだなー、って……」
「ミサミサは観察眼があるから自信持っていいと思うけど」店長は、どん、と胸を叩き、「そんならうちの店に連れておいでよ。彼、何系? うちの店の服とか好きそう?」
「あ……そんな、公私混同は……」
ずい、と顔を寄せ、店長は真顔で言う。「おれが接客するならモウマンタイ。決まり。よし。すぐ、彼に連絡しな」
「え……そんな急な」
「善は急げって言うでしょう」
にっこり笑う店長に、「……急がば回れって言うじゃないですか……」
「石橋を叩いて渡るのもいいけど」ふ、と店長は天井を見上げ、「ミサミサは、接客は大胆なのに、プラベだと奥ゆかしいところがあるよねえ。……自分ひとりで解決出来ないんだったら、誰かの手を借りるの手だよ。……っておれ」
手、って何回言ってんのさ。
と、自嘲的に笑う仕草も密かにツボではある。残念。店長は独身。モテる。が、絶対に仕事関係者に手を出さないのがポリシー。ガッ……デム!!
なんでも、GACKTさまを見習って、時々、表参道とかで、50人ナンパをするのだそうだ。メンタルを鍛えるため。専門用語でいうと、エリスの行動療法、だそうな。
ナンパ相手がうちの店を訪れることもあるが、笑顔で応対して、上川隆也ばりに見えないトントンバリアーを張る店長。なかなかそのストイックさは見習うべき……ではないか? すごいな、と思うところではある。十代にもきゃーきゃー言われてるもん。うちの店長。
あたしがポケットからスマホを取り出してメッセを打っていると、椅子を寄せてずずい、と店長が画面を覗き込んでくる。「ふーん。篠田……たいじゅ、って言うの? だいき?」
店長。距離感、距離感! 三宅健ばりの詰め方止めてください! 心臓に毒……っ!!
平静を装い、あたしは静かに答えた。「……だいき、って言います。……あたしはまだ、篠田さんって呼んでますけど……」
「へーへー面白いな最近の若者の恋愛事情は」楽し気ににたにた笑う店長。無駄にセクシー。「それさー。逆に、焦らしまくったほうが面白いかもねー。変な話、下心あるんだったらそこでさー。分かるじゃん。『待てる』男なのか、はたまたそうじゃないのか」
彼のビジュアルやファッションを思い返す。……二回ともスーツだったな。萌え。アパレルやってると、スーツの男性なんて、滅多に見ないので。残念ながら本部のスーツのひとが来てもそこまで萌え萌えせん。管理部門って意外とファッションに気を遣わないひとが……お口チャック。
白地に淡い水色の、ピンストライプ。二回目はダークグレーのワイシャツで。シャツに合わせてスーツも着こなしてるって印象だった。前髪が、やや長めで、サイドがシュッとしてて。手足なんかモデルみたいに長くって……最の高。
まくりあげた袖の下から見える筋肉質な腕を思い返すだけできゅんきゅん。あのたくましい腕で、あたしのことを姫抱きにしたと思うと……もうね。
ロマンスがありあまーる。
ひとまず、彼にメッセを打つと、すぐに返事が来た。「……はやっ」
「……おっ。彼、すげえ、ミサミサのこと、ちゃんと好きなんだよ」
彼からのメッセージ。
『次の土曜日、空いてます』
『究極に、楽しみにしています』
『職場の美紗を見れるのが楽しみ』
「……ストレートすぎるっつの」
ちょん、と指先でスマホをつつくも、その指先が妙に、熱かった。
*
新作の商品を黙々と開封していると、不意に、隣で一緒に作業する店長がそんなことを言ってきた。――いや。
「バレてます……?」
「こないだ本社行った辺りかなぁ。ストッキングもパンプスも、ちょっと汚れてんのに、妙に、お肌がつやつやしちゃって。汚れ云々は、須賀ちゃんがしっかり突っ込んでいたからぼくは黙秘したんだけど。……ってごめんこれ、セクハラ発言?」
笑うほかあるまい。
「や。いいです。……見た目の変化とかは、正直に、言って頂いたほうが……。こういう仕事をしている以上、外見にも気を遣うべきですし……」
「それで。そんなに好きなのに、なにを悩んでいるの?」
黒髪で。40歳前後。パーマをかけて、前髪をセンター分けした店長は正直に格好いい。無精ひげがまた似合うんだわ。今日なんかアロハのシャツ着てるもん。アロハ。アロハーアロエードンキー。600円ジェルは神。
頬杖をついて、色めいた眼差しを向ける効果がどれほどアラサー女の心臓を直撃するのか。すこしは、ご考慮願いたい。
「や。なんか。知り合ったばかりで……すぐ付き合うってのも……相手のこと、まだ、よく、わっかんないし……変なひとだったらやだなー、って……」
「ミサミサは観察眼があるから自信持っていいと思うけど」店長は、どん、と胸を叩き、「そんならうちの店に連れておいでよ。彼、何系? うちの店の服とか好きそう?」
「あ……そんな、公私混同は……」
ずい、と顔を寄せ、店長は真顔で言う。「おれが接客するならモウマンタイ。決まり。よし。すぐ、彼に連絡しな」
「え……そんな急な」
「善は急げって言うでしょう」
にっこり笑う店長に、「……急がば回れって言うじゃないですか……」
「石橋を叩いて渡るのもいいけど」ふ、と店長は天井を見上げ、「ミサミサは、接客は大胆なのに、プラベだと奥ゆかしいところがあるよねえ。……自分ひとりで解決出来ないんだったら、誰かの手を借りるの手だよ。……っておれ」
手、って何回言ってんのさ。
と、自嘲的に笑う仕草も密かにツボではある。残念。店長は独身。モテる。が、絶対に仕事関係者に手を出さないのがポリシー。ガッ……デム!!
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ナンパ相手がうちの店を訪れることもあるが、笑顔で応対して、上川隆也ばりに見えないトントンバリアーを張る店長。なかなかそのストイックさは見習うべき……ではないか? すごいな、と思うところではある。十代にもきゃーきゃー言われてるもん。うちの店長。
あたしがポケットからスマホを取り出してメッセを打っていると、椅子を寄せてずずい、と店長が画面を覗き込んでくる。「ふーん。篠田……たいじゅ、って言うの? だいき?」
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平静を装い、あたしは静かに答えた。「……だいき、って言います。……あたしはまだ、篠田さんって呼んでますけど……」
「へーへー面白いな最近の若者の恋愛事情は」楽し気ににたにた笑う店長。無駄にセクシー。「それさー。逆に、焦らしまくったほうが面白いかもねー。変な話、下心あるんだったらそこでさー。分かるじゃん。『待てる』男なのか、はたまたそうじゃないのか」
彼のビジュアルやファッションを思い返す。……二回ともスーツだったな。萌え。アパレルやってると、スーツの男性なんて、滅多に見ないので。残念ながら本部のスーツのひとが来てもそこまで萌え萌えせん。管理部門って意外とファッションに気を遣わないひとが……お口チャック。
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ひとまず、彼にメッセを打つと、すぐに返事が来た。「……はやっ」
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