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三話

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「?」
 浮遊感がなくなり、芽衣が目を開けると星空が見えた。芽衣はのそのそ立ち上がる。体が動くし、動かしてもどこも痛くないからそうなのだろう。今まで眠っていたため、芽衣は体の動かし方がわからず、手をにぎにぎと握ってみたりしたが、ちゃんと動く。
 それだけでも、驚くのにセーラー服のようなドレスを着ていた。保育園以来の制服である。生涯、一度も袖を通すことのなかった服にわくわくする。
(ああ……私の体、生まれ変わったんだ。リガトという世界に、それだけはわかる)
 周りを見回すと、天から月の光が差し、地面には白い花が咲きほこり、芽衣囲んでいる。土と吹き付ける風の生々しい匂いが懐かしい。
 さっきから体がぐらぐらする。石の上でも落ちてしまったんだろうかと芽衣が下を見ると、成人くらいの男性がいた。絵本で見たような金髪の青い目の王子様の姿をした男性だった。
「すまないが、降りてもらえないだろうか?」
 そこでようやく、芽衣は人を下敷きにしてたことに気づいた。感覚が鈍ってしまったのだろうか。人がいるなら、感触で気づくはずだった。
「あっ、えっ、ご、め…なさい……」
 掠れた声で謝罪をして、急いで男の上から退いたが、芽衣はうまく立てず、べたっと地面に尻餅をつくように倒れる。
「?」
「どうしたんだ?」
 男は不思議そうに地面に座り込んでいる芽衣を見た。芽衣は困った顔をして、体が上手く動かないことを伝えた。
「たてな……」
「ああ、顕現したてなのか……」
 起き上がった男が地面に座り込んでいる芽衣を持ち上げて、支えてくれた。ようやく立てた芽衣を倒れないように男が支えてくれる。
「ありがと…ござ…ます」
 さっきよりもだんだん声が出てきた。
「どういたしまして。淑女を助けるのも、騎士の役目だ」
 男は芽衣に向かって微笑みかける。少しだけ変な違和感を感じながら、芽衣は手を貸してもらいながら、円柱に倒れた石の上に座った。
「君はどうしてここに? 近くに契約者はいないみたいだし。はぐれたのかい?」
 エルネストは契約の陣から位置がずれたと思い、召喚のことを聞いてみる。
「わか…らな……? 気づい…たら…いた」
「そうか……」
 今、どんな状況かわからない芽衣は困惑した。いく場所がないし、何をすればいいのかわからない。全部、本家が用意してくれるものだったから、お金の使い方すら初めてになるかもしれないのだ。
 芽衣が悩んでいると男はとりあえず、自己紹介を始めた。
「私は精霊を守護する教会に所属している騎士、エルネストだ。君に名前はあるのかい?」
「わた…しは……めい…」
「メイ……。名前があるのか」
 芽衣の返答にエルネストは考え込んでいる。一瞬、目元が歪んだような気がした。だが、何もなかったようにやはり契約者のいないはぐれ精霊かと言った。
(今…嘘ついた…精霊は名前をつけることで契約は成立するのに)
「ねぇ……なんで、いま……」
 わおーんと遠吠えが聞こえて、木々が揺れる。久しぶりの犬の遠吠えにびくりと肩を揺らすと、エルネストは眉をひそめた。
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